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カミングアウト

 いま、ニューヨークでも金曜の夜に放送している日本のお笑いバラエティ番組で、タレント同士で恥ずかしい秘密を打ち明けて笑い合うコーナーに「カミングアウト」というタイトルが付いているんだよね。ココリコがやっている番組。日本じゃ終わった番組なのかなあ。放送時期がずれるからよくわからないけど、まあしかし、その番組の中ではゲストのタレントが自分の秘密を「さあ、カミングアウトして!」とやんやとはやし立てられるわけ。
 「カミングアウト」が日本では流行語みたいに扱われている。それが「ゲイ」関連用語だということはもういまじゃほとんどの人が知っているはずだよね。にもかかわらず、あるいは、だからこそ、こうしておチャラけた使い方をされてしまうんだなあって、見てて思いました、わたし。
 でもこの言葉はほんとうはそういう言葉じゃないのだよ。ゲイであることは「恥ずかしい秘密」でも「笑い合う」エピソードでもないでしょ? その証拠に、カムアウトという動詞は目的語なんかとらないのですね。つまり「秘密を」カムアウトする、とは言わない。じゃあ、主語が「秘密」かというとそうでもない。「カムアウト」の主語は「秘密」ではなく、これまでクローゼットに閉じ込められていた一個丸ごとの人間なのね。カムアウトというのは、だからいっしゅの人間宣言なわけよ、“オカマ”という“人非人”の。
 「カムアウト」というとても政治的なメッセージを含んだ言葉が、日本のテレビであっというまに無化されてしまうのを目の当たりにすると、日本のゲイの人たちがここニューヨークですらもカミングアウトしにくい理由がわかるような気がしますね。
 憲法9条といいこのカムアウトの問題といい、日本では重要なメッセージがきちんと力を持つ前になんとなく腐らせられてしまう。有事法制やイラク新法を通した政治家と、そしてこのココリコの番組プロデューサーは、その意味で似てるんだわなあ。
 まあ、なんと平和な国だろうことよ……。

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