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July 31, 2003

ハーヴィー・ミルク高校

ニューヨークが、市としてLGBTの市立高校を設立して、それを現在あるヘトリック・マーティン・インスティテュートの特設カリキュラムであるハーヴィー・ミルク高校(これは学校そのものが存在するのではなくて、そこで受けた授業を正式単位として認めるという制度だったのだね)に取って代わらせる、という計画を発表した。

ふむ。
さて、これは難しい問題だね。いや、保守派のバカどもが反対する、というのとはぜんぜん別の理由で、こういうことにつねにつきまとう問題。つまり、これって、隔離政策じゃないか、という問題があるわけだ。隔離政策、これは英語ではセグリゲーションっていってさ、アメリカでは60年代まで続いた白人と有色人種(colored)の分離政策をつよく連想させちゃうのね。

ヘトリック・マーティンのカリキュラムは、いわば緊急避難的に設置された、いじめられ、はみ出されたLGBTの生徒たちのための教育制度なわけ。本来はね、おんなじ学校でストレートもゲイもクイアもいっしょに勉強するってのがこの世のあり方にいちばん近いわけでしょ。だからそれがいいのさ。ところがだ、それが分けて教育を受ける。これが示すことは、つまりいまもまだ、LGBTが疎外され、いじめられ、つまはじきにされる現状があるということだ。そっちの現状をどうにかして、クイアがきちんと受け入れられる状態をこそ造らねばならない、これこそがまず第一の課題なわけよ。ちがう?

だからね、これをあくまで緊急避難的なものとして位置づけることが肝要なのだ。つまりね、「そうはいってもいま現実問題として、普通校に通えないほどにとんでもなく傷ついた少年少女がいる。その子たちのための学校が必要なのよ。なんだかんだ手を打っているうちにもその子たちの修学年は過ぎてしまうのだ」というものに対する、いまでなくてはだめだ、という、そのための対策。だから、LGBTはみんなこっちに来ればいいというのとはぜんぜん違うのだ。そんなの、自然じゃないだろ?

LGBTの解放とはね、ストレートの連中を真っ当な人間に治してやるための運動なのよ。わかりますか? そういう発想を徹底しないとダメね。

まだ、この高校構想に関してゲイメディアの反応はあまり出てないけど、さて、どういう反応なんだろうね。という間に、これって新学期、つまりは夏休み明けの新学年度9月から始められるわけで、そんときにはわたしもぜひ取材してみようと思ってる。

July 29, 2003

間が空きましたですね

なんか、東京、寒いんだってね。梅雨明け、まだだっけ?
これってひょっとしたら冷夏? 冷害でまた日本経済打撃かなあ。

冷害といえば93年の大冷害がありました。おぼえてらっしゃいます? 日本中、お米が足りないとか、そんなパニックになった時でなかったでしたっけ?

わたしはすでにニューヨークにおりまして、タイのジャスミン米やらインドのバスマティやら、イタリアのアルボリオやらといろんな米がそれこそとんでもない安さで、日本米だってあなた、美味しいカリフォルニアのコシヒカリみたいな米が三分の一の値段でしてね、えらく感動していたところに、日本で米が足りない、でしょ。そんで緊急輸入したタイ米を、おいおいちょっと、「くさい」はないんでないかい、と思いましたですよ。

あれはアロマティックライス、いわゆる香り米といってさ、ああいうもんなんだ。おまけに政府は、一級品のカリフォルニア米は輸入しなかった。あんなうまいものをアメリカではこんな値段で売ってると民たちに知れたらまずいという判断でした。これ、ほんと。で、カリフォルニア米は三級米だけの輸入。これって、ブッシュのイラク戦情報操作に匹敵するほどの民心に対する詐欺行為ですよい。

やっぱり日本の米はうまいよね、ってあんたねえそりゃちょっとちがうんでないかい?

なんとまあ失礼な国民になりはててしまったものだとわたしゃ当時、コラムに書きました記憶があります。思えば、あのころから日本は壊れてきたのかもね。情報処理能力の無さ。だから情報が頭の中で氾濫してとつぜんキレちゃうんだかも。

情報処理能力ってさ、結局はコミュニケーションなのよ。
ふだんからいろんなひとと話をして鍛えられていくもんなの。
それをしないと、情報が偏るだけでなく処理方法もバラエティに欠けるんだ。
で、あるときにっちもさっちもどうにもブルドッグになるのよ。んでキレる。
キレやすい子供たちって、けっきょくはひととまともにコミュニケートできない社会の中で必然的に再生産される存在なわけ。
黙っていることをよしとする教育を、いますぐやめなきゃね。

July 19, 2003

市中引き回し

朝日のオンライン
http://www.asahi.com/column/aic/Fri/d_forum/20030718.html
に「市中引き回し」に賛同する投書が7割もあったということが載っていました。けっこう鴻池のおっちゃんのあの発言、人気なんですな。

何なんでしょうかね、こりゃ。ブッシュ化は日本でも進行中なのか。
というより、そういうおバカなことを堂々と披瀝して得意顔でいるのを許す、あるいは面倒なのでただ言わせておく、そのうちに大したことでなくなるのを待つ、といった風潮が蔓延してるんでしょうかね。
わたしゃ悲しいわ。同時に、けっこう恐いわ。

話をするということは面倒なことを考えるということなんです。
しかし、この人たちは面倒なことを考えないで話をする。勢いで語る。だもんで陶然となる。引っ込みが付かなくなる。そんでもって、面倒なこと考えてる間にも人は殺されるんだ、とか言うんでしょうな、そん中の弁の回る小賢しいのは。面倒なこと考えないから人殺しなんかしちゃうんですよ。

リンチについてとか、考えたことがないんでしょう。
集団暴行を加えて人を殺す連中と、自分が同じだということに気づいていない。
そんな大人たちあれば、あんな子供たちあり、ですな、まったく。
そうして、そういう連中は常に自分が多数派に属しているという妄想を、自分の思いは絶対的に善だという虚妄を信じて疑わない。
こういう連中が、ナチスを支持し、天皇にひれ伏し、ブッシュに快哉を叫び、イラクや北朝鮮に核を落とせと言うのです。

「市中引き回しのうえ打ち首」というのは、そういう論理です。
何様だと思ってるんでしょね。
わたしなんぞ、そういう連中には第一に引き回されちゃうでしょう。
対して、私はそういう連中がいても引き回したりしない、というのが絶対的な不公平ですが、この絶対的な不公平を引き受けねば私の論理を完遂できないというのが、こりゃまた絶対的な不公平で、つらいところだがしょうがない。

July 13, 2003

同性愛

まあ、なんと直接的なタイトルだこと。

ついに腹まわりも剥けてきて、へたにむりやり剥くと皮膚がまだ未成熟でヒリヒリしたりするんだよね。

ということで今日の話題は、例の長崎の駿ちゃん殺害事件です。

ストリーミングでリアルプレイヤーで見られる日本のニュースはTBSとフジなんだけど、問題のコメントはどっちでだったか忘れた。おまけにだれが言ったのか、その犯罪心理学者だか精神科医だからの名前も見逃した。だって、まさかそんなこと言うなんて思ってなかったからさ。くそ。

で、なんて言ったかっていうと、あの12歳の少年ね、この異常さの背景に「幼児愛、サディズム、同性愛がありますね」って言いやがったのよ。これが少女に対する性的傷害事件だったら、この“専門家”は「幼児愛、サディズム、異性愛があります」って言うのでしょうか?

はい、同性愛にはストレスがつきものです。それによって引き金が引かれる可能性もある。しかしそれは同性愛の「困った問題」ではなくて、同性愛を抑圧している社会の「困った問題」なのですね。

それ以前に、この“専門家”は、おそらく同性愛をいままだ異常性愛のカテゴリーとして捉えているのでしょう。それがまず第一のこの人物の怠慢と無知。そういう人物はテレビで専門家としてコメントをすべきではないし、また、ニュースのディレクター氏もこういう人物を選んではいけない。さらに、選んでしまったにしてもコメントのチェックをゆめ忘れてはいけないのです。

ですから、このコメントは「いま現在、表に出てきた報道内容から推測するに、少年の今回の行動には幼児性愛、サディズム、さらに同性愛を閉塞させてしまっている社会環境が背景にあると思われます」とならなければなりません。

そういうことです。

終わり。

July 11, 2003

エイズになって死んでしまえ

皮がむけむけです。いま一番ひどいのが胸。次にほっぺた。不思議なことに腹まわりがいちばん真っ赤だったのに、いまも真っ赤なままでぜんぜん剥けてない。死んでるのかも。

ところで。
やってくれますねえ。米国社会ぜんぶがブッシュのばかに感染したみたいに、なんだか最近、とっても粗雑な物言いをする連中が多いような気がするんですけど、実際のところはどうなんでしょう。で、今回のやり玉はマイケル・サヴェージというトークショーのホスト。それもMSNBCという、マイクロソフトと三大ネットのNBCが作った24時間ニュース局ね、ここで土曜の夕方5時からのトークショーを持ってる男がさ、視聴者からの電話の1つに「おまえなんかエイズになって死んでしまえ、ブタ野郎!」って言っちゃったのよ。

“事件”は7月5日に起きた。トークショーってのはね、視聴者からの電話にホストが面白おかしくコメントして受けをねらうって番組なんだけど、その土曜日のテーマは「飛行機での恐怖の体験」。ある視聴者が自分の恐怖体験を電話で披露していたとき、サヴェージが「ってえことはあんたも例のホモ連中の1人ってことか?」と突っ込んだわけ。その視聴者が「イエス、アイ・アム」って答えたらさ、サヴェージちゃん、椅子の上でふんぞり返って腕を組み、サングラスをかけてからこう言い返したのですわ。
 「おやおや、ホモ連中の1人ときた! おまえみたいなのはただエイズになって死ぬべきなんだよ、このブタ野郎が!」。英語ではこうね。「Oh, you're one of the sodomites! You should only get AIDS and die, you pig!」
 この時代、こういうことを言うってのは蛮勇っていうよりもただのバカなんでしょうな。しかしこうした人物をトークショーのホストに起用した局の責任はどうなるのさ。

 案の定、MSNBCは週明けの7日にサヴェージの解雇と番組の打ち切りを発表しました。広報がロイター通信に話した局としてのコメントは「彼の話したことは非常に不適切で、番組打ち切りの決定は容易だった」。しかしこれもおかしな話でしょ。「イージー・デシージョン(容易な決定)」という言葉を使っているんだけど、そんなに「簡単」に事が済むと思っていいんでしょうか。
 なぜなら、サヴェージを起用したのは彼のそんな荒っぽくがさつなコメントが視聴者受けするだろうとふんだ局でしょ。番組はこの3月に始まったのね。そのころ、ニュース番組はFOXが対イラク戦争開戦に向けてのイケイケムードに乗じて保守的なキャスターを多用し、MSNBCはその波に乗り遅れまいとリベラル派のトークショー・ホスト、フィル・ドナヒューをクビにしたのだ。そうしてサヴェージみたいなのを雇った。
 サヴェージはラジオのトーク番組出身で、カリフォルニアで右翼的な政治団体を創設し、これまでだって「メキシコ移民を締め出すために国境を閉鎖しろ」「バイリンガル教育など必要ない」「少数人種優遇政策(アファーマティブアクション)など不要だ」という持論を展開してきただけじゃなく、ゲイコミュニティーを「タードワールド(クソ漬けの世界)」「ホモセクシュアルパーヴァージョン(倒錯)」と呼んではばからなかった。人種差別、性差別、性的少数者差別……MSNBCはそういう言動を承知で彼を雇い入れたわけでしょ。

 サヴェージは8日になって自分のウェッブサイトで謝罪しました。いわく、「もし私のコメントがだれかに苦痛を与えたなら、それは私がまさに意図しなかったことでありこのような結果をもたらしたことを謝罪する」「特にゲイコミュニティーの中の私の多くのリスナーたちに与えたかもしれない無意識の侮辱に関して、私のこの謝罪を受け入れてもらいたい」
 しかしその前段は「これは仕組まれたんだ」「あの電話を掛けてきたやつは他の競合トーク番組の回し者で、おれを個人攻撃したから個人的に言い返したまでだ」「しかしそれが放送されてしまった。もちろんそのコメントが病気や苦痛に関するおれの見解であるはずがない」「おれはいままでもずっと病気の連中を癒す西洋医学以外の薬がないかと探してきた」云々。やっぱりこいつはバカです。
 この「謝罪文」に、どうしてHIV/AIDS関係者への謝罪がないのかにも、こやつの頭の働きの欠落部分がわかる。謝罪の部分にしたって「もし」だとか「与えたかもしれない」だとか条件節が多すぎないかい。おまけに「無意識の侮辱(inadvertent insults)」というのはありません。思っていないことは口からは絶対に出てきません。
 それが出てしまったというなら、それはそれこそが病気なんです。

あ〜、今回は長かった。

July 07, 2003

ロブスター

6日の日曜に、車で1時間ほどのジョンズビーチに行ってまいりまして、3時間ほどいましたら本日、体が真っ赤になって、もうなにもできません状態であります。ロブスターのような赤さなのです。ビーチはもう、ゲイゲイしていて、そういう状態のセクションが波打ち際2キロほど続くのですね。いやあ、壮観です。このBLOGって、写真載せられるのかしら。

でも、ヒリヒリして痛いよぉ〜。

July 04, 2003

ふと思ったんだけど

こうやってここにひんぱんに書いていたら、バディとか、他にもいろいろと頼まれてあちこちにコラムを書いてるんですけど、そこで書くことと重複してしまうんじゃないかって、あらら、そうなったら書くことがなくなるかも。まずいかなあ。

まずくはねえよね。
いくらでも書くことはあるし。
ここは、いわば、下書きみたいに書けばいいよね。

私には、いま気になる人が何人かいる。
1人はね、テレビのドラマの制作者なんだけど、ま、彼の才能云々が気になるんじゃなくて、というか、才能はあるのだ。だからそれはいいのです。でもね、鬱なんだよね、彼。かわいそうに。パッと見はね、それこそ、非の打ち所のないエリートテレビマンよ。でもね、いろんなこと考えてるんだな。それに感受性も強い。そしてそれをあまり表に出すことを潔しとしない。ま、問題はこの「表に出すことを潔しとしない」という部分にあるのかもしれないけど、出したら?といって出してそれで問題が解決するならとっくに解決してるでしょ。ぼくはね、彼のことを、東京にいるんだけどさ、いまは、毎日、気にしてる。

もう1人はね、トランスジェンダーの子でね、これもまた日本じゃ“珍しい”存在でしょ。いまじゃゲイとかレズビアンとかは相対的に「あ、知ってる」という存在になってきたけど、TG/TSはね、昔からの「オキャマ」とか「ニューハーフ」とか、だいたい、ゲイの間でだってはっきりわかってないんだ、どういう存在なのか。世田谷で上川あやさんという区会議員が当選したけど、ぼくはね、これは日本のすごいとこだと思ってる。同時に、日本の手強いところでもある。そうそう、そのTGの子、その大変さが、ぼくにはとても気になる。力添えできるものなら、力添えしたいけど、いまのところはその子の存在に私の方が力づけられているという感じだね。

そうしてもう1人、この子は、病気なんだ。ゲイであろうがあるまいが、病気というのは降りかかってくる。白血病なのね。やっぱり大変な病気よ、こりゃあ。私にできることはなにひとつありません。まいります。そういうときにね、難しいこと考えてもね、彼には直接的には有効じゃないんだわね。おまけに、この子、頭がいい子でさ、まだ20歳そこそこなのに、人の心の機微がわかっちゃうんだな。もうちょっとのんびりしてたら楽なんだろうになあとおもうけど、そんなこと、言ってもしょうがないやね。

サルトルがさ、(サルトルって、古いか?)、「飢えた子供の前で文学は有効か」ってのを60年代に言ってるんだよね。わしゃあね、それも命題の立て方が違うんでないかいって、ずっとそういうふうにこなしてきたけど、しかし、その命題はそれはそれで、じつはたしかに存在するんだわな。

けっきょくは、そういう、現実的なレベルと、概念なレベルと、二股かけて考えかつ対処してゆかねばなんねえってことなんだろね。

二股掛けるの、得意になんなきゃ。時代はマルチよ、やっぱり、うん。

July 03, 2003

ゲイプライドマーチも大成功

いやあ、疲れちゃってまた更新に間が空きました。
もう7月ですね。今年も折り返したか。早いなあ。
ゲイプライドは浴衣姿が功を奏して、なんと地元24時間ニュースチャンネル「NY1」のニュースクリップにばっちり3秒ほど我らが勇姿が映っておりました。ミーハーです。はい。

さて、ミーハーじゃないところで、やっぱね、ソドミー法違憲判決はブッシュ政権に評判が悪いようで。ブッシュが大統領の間は同性婚の解禁はないね、この国じゃ。それが5年先になるか、それとも来年の大統領選の大番狂わせがあって3年先になるかは、神のみぞ知る。しかし、この5年で絶対に政治日程に上ってくるでしょうね。それは予言者じゃなくてもわかります。

さてその前に、片づけておかなければならないのがサントラムっていう上院議員の問題だ。

この5月、フィラデルフィアのセントジョセフ大学の学位授与式で同州出身の上院議員リック・サントラムが壇上から演説しようとしたとき、600人の卒業生の約100人がいっせいに立ち上がって退場するという“事件”が起きた。サントラムはその前月のAPとのインタビューで同性愛を重婚、一夫多妻などと同等だと非難した人物。一斉退場は、そんなサントラムに同大の名誉学位が与えられることへの抗議だったんですな

 反応したのは退席した100人だけではなくってね、他の卒業生の多くも卒業帽にレインボーカラーの房飾りを添えて臨席していたんですね。レインボウカラーはご存じのとおり生/性の多様性を示すゲイのシンボルカラー。一斉退場の際には会場にとどまる学生からも大きな拍手が挙がった。
 まさかイエズス会のこの大学にこんなに多くのゲイ学生がいるとはだれも信じないわな。もう、意識的な若い世代にはゲイかゲイでないかはあんまり関係ないみたい。要は、お互いの差異を認め合って生きる社会を作るか、差異を憎悪に変えるようなシステムで生きるかっていう選択の問題なんだわな。そんなの、答えは決まり切ってるんだけどね、バカにはどうしても自分が後者に属してるっていう事実がわからんようなのだ。

 さて、サントラムの肝心のその発言を精査してみまひょか。
やっこさんは次のようにのたまったわけです。
 「合意があれば家庭内でどんな性行為も許されると最高裁が認めたら、重婚や一夫多妻や近親相姦や不倫の権利も認めることになりなにをしてもよいことになってしまう」
 そうそう、お気づきのように、これは例の最高裁のソドミー法判断を前にしての発言だったわけ。結果はご存じのように違憲判断だったんだけどさ、さて、すぐに「重婚や一夫多妻や近親相姦や不倫」を思い浮かべてしまう汚らわしい思考傾向を持つ、ということ以外に、このサントラムの発言のじつは何が本質的に問題なのか?
 「同性愛は重婚とか一夫多妻とは違う」という意見があるけど、そういった場合に違うのは何? 同性愛は重婚とかと違って犯罪ではない? でもね、そういう論理はサントラムのような人には「同性愛も犯罪」なのだから効き目がないのね。

 ではどう違うと考えればよろしいのでしょうか。
 サントラムの論理は、この手の人物によくある傾向なのだけど、そもそも前提からおかしいんですね。「合意があれば家庭内でどんな性行為も許されると最高裁が認めたら」という部分がパープリンに間違いなのさ。
 最高裁=司法は「家庭内の性行為」を含むすべてのプライバシーに対して口出しをしないというのがこの市民社会の大原則。その上でそのプライベートな行為がパブリックな社会に大きな害を与えると判断した場合にのみ、それに法的な制限が加えられる。それが近代民主法制度の基本なのであるわけ。だから最高裁が認める以前に「合意があれば家庭内ではどんな性行為も許される」の。これが前提。その上でどれはダメだということを定める。社会に害を与える重婚などが禁止されたのはそういう経緯なのだ。

 それでは「同性愛」は重婚や一夫多妻と同じような、社会に対する弊害を持っているのでしょうか? そこが違うところですね。サントラムは害は自明だと言うだろうけど、ためしに例示を求めれば彼は答えに窮するでしょう。きみは例示できる?

 ブッシュ人気に力を得た共和党は、そんなサントラムの非論理を支持してる。つまり、個人のベッドルームにも介入するような全体主義社会がよいと言っているのと同じなのです。でも、バカだから自分の言ってることの重大さに気づきもしない。それって、すごいでしょ。
 あと5年もこんなのが続くと思うと、さすがにげんなりしてきますね。