エイズになって死んでしまえ
皮がむけむけです。いま一番ひどいのが胸。次にほっぺた。不思議なことに腹まわりがいちばん真っ赤だったのに、いまも真っ赤なままでぜんぜん剥けてない。死んでるのかも。
ところで。
やってくれますねえ。米国社会ぜんぶがブッシュのばかに感染したみたいに、なんだか最近、とっても粗雑な物言いをする連中が多いような気がするんですけど、実際のところはどうなんでしょう。で、今回のやり玉はマイケル・サヴェージというトークショーのホスト。それもMSNBCという、マイクロソフトと三大ネットのNBCが作った24時間ニュース局ね、ここで土曜の夕方5時からのトークショーを持ってる男がさ、視聴者からの電話の1つに「おまえなんかエイズになって死んでしまえ、ブタ野郎!」って言っちゃったのよ。
“事件”は7月5日に起きた。トークショーってのはね、視聴者からの電話にホストが面白おかしくコメントして受けをねらうって番組なんだけど、その土曜日のテーマは「飛行機での恐怖の体験」。ある視聴者が自分の恐怖体験を電話で披露していたとき、サヴェージが「ってえことはあんたも例のホモ連中の1人ってことか?」と突っ込んだわけ。その視聴者が「イエス、アイ・アム」って答えたらさ、サヴェージちゃん、椅子の上でふんぞり返って腕を組み、サングラスをかけてからこう言い返したのですわ。
「おやおや、ホモ連中の1人ときた! おまえみたいなのはただエイズになって死ぬべきなんだよ、このブタ野郎が!」。英語ではこうね。「Oh, you're one of the sodomites! You should only get AIDS and die, you pig!」
この時代、こういうことを言うってのは蛮勇っていうよりもただのバカなんでしょうな。しかしこうした人物をトークショーのホストに起用した局の責任はどうなるのさ。
案の定、MSNBCは週明けの7日にサヴェージの解雇と番組の打ち切りを発表しました。広報がロイター通信に話した局としてのコメントは「彼の話したことは非常に不適切で、番組打ち切りの決定は容易だった」。しかしこれもおかしな話でしょ。「イージー・デシージョン(容易な決定)」という言葉を使っているんだけど、そんなに「簡単」に事が済むと思っていいんでしょうか。
なぜなら、サヴェージを起用したのは彼のそんな荒っぽくがさつなコメントが視聴者受けするだろうとふんだ局でしょ。番組はこの3月に始まったのね。そのころ、ニュース番組はFOXが対イラク戦争開戦に向けてのイケイケムードに乗じて保守的なキャスターを多用し、MSNBCはその波に乗り遅れまいとリベラル派のトークショー・ホスト、フィル・ドナヒューをクビにしたのだ。そうしてサヴェージみたいなのを雇った。
サヴェージはラジオのトーク番組出身で、カリフォルニアで右翼的な政治団体を創設し、これまでだって「メキシコ移民を締め出すために国境を閉鎖しろ」「バイリンガル教育など必要ない」「少数人種優遇政策(アファーマティブアクション)など不要だ」という持論を展開してきただけじゃなく、ゲイコミュニティーを「タードワールド(クソ漬けの世界)」「ホモセクシュアルパーヴァージョン(倒錯)」と呼んではばからなかった。人種差別、性差別、性的少数者差別……MSNBCはそういう言動を承知で彼を雇い入れたわけでしょ。
サヴェージは8日になって自分のウェッブサイトで謝罪しました。いわく、「もし私のコメントがだれかに苦痛を与えたなら、それは私がまさに意図しなかったことでありこのような結果をもたらしたことを謝罪する」「特にゲイコミュニティーの中の私の多くのリスナーたちに与えたかもしれない無意識の侮辱に関して、私のこの謝罪を受け入れてもらいたい」
しかしその前段は「これは仕組まれたんだ」「あの電話を掛けてきたやつは他の競合トーク番組の回し者で、おれを個人攻撃したから個人的に言い返したまでだ」「しかしそれが放送されてしまった。もちろんそのコメントが病気や苦痛に関するおれの見解であるはずがない」「おれはいままでもずっと病気の連中を癒す西洋医学以外の薬がないかと探してきた」云々。やっぱりこいつはバカです。
この「謝罪文」に、どうしてHIV/AIDS関係者への謝罪がないのかにも、こやつの頭の働きの欠落部分がわかる。謝罪の部分にしたって「もし」だとか「与えたかもしれない」だとか条件節が多すぎないかい。おまけに「無意識の侮辱(inadvertent insults)」というのはありません。思っていないことは口からは絶対に出てきません。
それが出てしまったというなら、それはそれこそが病気なんです。
あ〜、今回は長かった。