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再び産経抄

本日また、あまりの反響の多さからか(これって、みなさんのおかげですよね)、産経抄子が次のようなブルシットを書いておったです。

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十八日付小欄で「ジェンダーフリー(性差解消)というばかげた風潮」について書いたところ、たくさんの反響をいただいた。それには感謝いたしますが、不思議なことがある。これは十八日付コラムなのに、二十四日を過ぎてから一斉にメールが殺到した。

 ▼察するに何かの組織や団体があって、「けしからんコラムがある。やっつけよ」という指示が出たのかもしれない。日常の読者ではないようである。まじめなご意見には耳を傾けたが、多くは「だれが書いているのか」「お前は馬鹿だ」といった悪口雑言Wだった。

 ▼小欄は“はっきりものをいうコラム”を目指しているが、このメール攻勢には自分と少しでも異なる論は封じてしまう圧力、あるいは恫喝(どうかつ)のようなものが感じられた。いつかの特定歴史教科書の不採択を要求するファクス攻撃と似ているかもしれない。

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「察するに何かの組織や団体があって」

これはおそらく団体でも組織でもありません。
草の根の同性愛者たちが、あるいは性同一性障害者たちが、次から次へと知り合いにメールを送って、つまりは「これってちょっとおかしくない? どうやったら反論できるの?」とさまざまに声を掛け合って産経新聞社に送り届けた抗議のメールです。
なぜそうだとわかるのかというと、わたしのところにも、別々の人から、5通ものメールが、べつべつの意見を書いて、べつべつに怒りかつ悲しんで、どうすればよいのかと問い合わせてきたからです。

産経抄子は、この国で、組織も団体も持てずに、隠れざるを得ない人々がいまだいることを想像できないのです。かれらはネットを通じてのみ他者を知っている。いや、それは誇張に過ぎるかもしれません。都会のLGBT(性的少数者)たちはすでにもっとおおっぴらになりましたから。しかし、田舎にはその百倍の人々が隠れています。その彼らを代弁するためにも、一人一人が産経にメールを送った、それが正確なところでしょう。

次の段で抄子はこう書きます
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▼ついでながらメールという機能には、人が感情を爆発させる何かがあるらしい。「ハンドルを握ると人が変わる」などというが、メールに向かうとやはり人が変わるという。手紙では決してそういうことにはならない不思議な作用が働くようなのである。
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このいかりは、決してメールだから筆が走ったのではない。
彼らは真に怒り、真に憤っていた。
産経抄子はメールのせいにしていますが、それは彼のふたたびの誤謬です。
かれらは「自分と少しでも異なる論は封じてしまう圧力、あるいは恫喝(どうかつ)のようなものが感じられた」からこそ、その産経抄子の論理に怒った。それは、論を封じ込まれても生き延びられる産経抄子とは違い、彼ら一人一人の、命の問題ですから。

最後の段を引用します。
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▼批判の多くに小欄が同性愛を否定しているとあったが、よく読んでいただきたい。けっして否定なぞしていない、それを「過剰に強調」する風潮を戒めているのである。過激なフェミニズムには反対する。何度でも繰り返して書くが、「行き過ぎたジェンダーフリーは国を危うくさせる」。

そうでしょうか。
彼は18日付でこう書いています。
「そういう人たちは両性具有とか同性愛を過剰に強調し、男女間の性愛と同列に扱う。男女間の性愛をことさらに「異性間情愛」と呼んだりしている。こうなるとなにが正常なのか」

これはつまり、「同性愛は異常である」と言っていることです。異常なことを、否定しているのではないか、自分たちは否定されているのではないか、そう思っても、当然な書き方ではないでしょうか。「よく読ん」だら、そういうことだ。それ以外のどんな読解が可能でしょう。

「行き過ぎたジェンダーフリーは国を危うくさせる」。それはそうです。行き過ぎたものにはすべて、害があるでしょう。それはしかしジェンダーフリーのせいではない。それは「行き過ぎ」のせいです。

そういうことをわからないから、産経抄子は「バカだ」と悪口雑言をいわれるのではありません。
そういうことをわからないまま、人を傷つけるから「バカだ」なのです。

ほらまた予定調和的に、この書き物は「バカだ」で終わります。
ふむ。

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