怖い
なんだか、こんなバカみたいな詭弁というものを久しぶりに見た思いがします。多国籍軍に参加すると言ったその首相の発言を法的に支えるために、多国籍軍の「統一された指揮権」という英語の「unified command」というのを「統合された司令部」って訳したのです。
いわく、「(自衛隊は)多国籍軍の中で活動するが、わが国の指揮に従い、統合された司令部の指揮下に入ることはない」。あら、「参加」という言葉もなくなってしまいました。
しかし「ユニファイド・コマンド」を「統合された司令部」ってやるのは、ものすごい力技です。なぜなら、逆に、統合された司令部というのを英語になおそうと思ったら、それは「united headquarters」という英語になってしまって、ぜったいに「unified command」とはならない。
ユニファイというのは、いろいろあるものをいろいろあるまま1つに「束ねる」ことではなくて、合金みたいにして混ぜ合わせて1つに「しちゃう」ことなのです。
それからコマンドですが、これは第一義的には「命令すること、指揮すること」であって、それから「指揮権、司令権」という抽象概念につながっています。ここから「司令部」という意味が派生するのはその先の、もっと派生した先でやっと辿り着く語義であって、いわば比喩なんです。とてもじゃないが、軍事用語に比喩を使っちゃいけない。使ってよいのはそれが熟した言葉になっているときだけです。つまり、慣用的に使い込まれて熟語として存在しているときだけです。そんなの、わたしでもわかるような誤訳を日本政府たるもの、知らないはずがない。
これは、嘘をついているということです。国民に説明するときに嘘をついている。そしてそれを恥じない。だいたい、軍というものは参加したら統一した指揮で動くのです。それとは別に独自の指揮権を持っている、というのは、それは参加ではない。多国籍軍とは協調しながら行動しているが、別の指揮権のもとで行動している、つまり、別の組織である、ということです。なんで、それじゃいけないのでしょうか。なぜに、多国籍軍に参加する、といわなければならないのでしょうか。そのへんを、小泉は説明していません。嘘をついたまま、訳の分からないことを言って通そうとする。何なのか、これは。
権力が、こういうことをやる。ブッシュ政権も同じように嘘をつきますが、しかしそれはアルカイダがイラクとつながっていたというような、なかなか証明の難しいところを勝手に政治的に言いきってしまうという種類の嘘であって、事実はねじ曲げているが、こういう、だれの目にも明らかな論理のねじ曲げではない。
わたしは、これまで自民党政府にバカだバカだと文句ばかり言ってきましたが、最近は、正直言って、この日本の政府が怖い。バカですが、こいつら、本当はバカじゃありません。権力を持つ限り、バカはバカじゃないのです。中川とか麻生とか安倍とか石原とか、こういうことをいけしゃあしゃあとやる権力は、マジな話、他にどんなことでもやるんじゃないかと思います。「こういうこと」、とは、わたしたちを、ないがしろにしてよいと思っていることです。論理が通じないということは論理じゃないことをやってくるということです。いままでの論理の集大成である「法」が通じない。法が通じないということは、わたしたちがこの政府と話をする道筋を失うということです。それは何か。それは、超法規的なファシズムです。大政翼賛会です。怖いな、こりゃ。
イラクの、あの3人のバッシングあたりからでしょうか。政府が、個人を真っ向から攻撃して得意げになっている。政府要人が国民個人を攻撃するコメントを発する、ということは、よほどの重大犯罪人に向けたものでない限り、かつて例がなかったことです。それはいつわたしたちに向かってくるかわかりません。なにせ、論理じゃないのだから。
ヤバいなあ。
ブッシュをつぶす。
小泉自民党を牽制するには、そのドミノ効果しかないのでしょうか。
まずいね、日本は。