エイズと言葉と制度の課題
日本のHIV(エイズウイルス)感染者数が最近3カ月で199人とまたまた過去最高だったというニュースが報じられました。日本というのは先進国の中でゆいいつ感染者が増加している国です。「日本だけ」とはいったいどういうことなのでしょう。日本に、なにか根本的な欠陥があるのでしょうか。
じつは,HIVは言葉のないところで広がる病原体なのです。言葉のないセックス、相手とコミュニケートしない性交渉で広がるのです。言葉を復活させることがHIV感染予防の第一歩になります。
で、エイズに関すして言葉を復活させるというのはどういうことか。
一般的な啓蒙活動とか広報活動とかは、これはもう、日本みたいな情報がどんどん消費させられてしまう高度情報社会ではもう無効なんだと思います。ではどうするか。
残っているのは、教育現場です。教育現場というのは、ゆいいつ言葉を四六時中活用している現場です。そこでエイズ・HIVに関する情報を敷衍させる。これってでも情報が疲弊することがない。なぜって、毎年毎年、新しい人たちがそれを聞くわけですから。問題は、話す方、つまり教育者たちが一緒なので、話す方が疲弊したり飽きたりすることがあるということですね。でも、それは教科書と同じで、毎年同じ教科書を使っててもそれをやらなくちゃいけないわけですから。これを教育現場で本気で取り組まねばならない。それは君が代日の丸の話なんかよりむしろずっと強制力を持たせるべき事柄です。なのに、どうも倒錯していますよね。
もう1つの現場は、職場なんです。最近、アメリカのCDCも職場のエイズという数百ページのマニュアルをまとめました。これはいま私が翻訳していますが、職場を同じく教育現場にしようというものです。従業員教育の一環として、社員の家族も含めたセミナーを開催したり、パンフレットを配布したりしています。
米国ではHIVに現在、100万人近くが感染していると推定されています。50人以上の従業員のいる米国の会社では6社に1社が、また50人未満の小規模な会社では16社に1社が1人の患者・感染者を雇い入れています。悲惨な病気はどんなものでもそうですが、HIV/エイズもいろいろな意味で雇用者にとって他人事では済まされません。
そういうふうに、エイズはすでに「制度」として取り組まなければならないんです。標語とか、キャンペーンとか、そういう問題ではすでにない。もちろん、そういうことも必要ですけど、すでに標語とかで届く一般人の努力の範囲を超えているわけで、政府に、そういう気構えがあるのか。それをこそ問うべきです。
ニューヨークで93年から活動している日本語によるエイズ情報提供ボランティア組織「JAWS」のサイトがやっとスタートしました。いままで忙しくて着手できなかったんですが、順次、コンテンツを増やしていきます。
エイズ問題の参考にして下さい。
http://www.jawsonline.org/Japanese/index.htm