ハルジオン
日本から買って帰ってきた英田大輔「ハルジオン」(リトルモア刊)読了。
この人、20代のほんとの初めから触ると痛いゲイ小説を「バディ」に発表していて、その当初からあややと思ってた。文章のリズムがいいんだ。このリズム感はもちろん学び得た部分もあるんだろうが天性だろうな。そうじゃなきゃ書けない。書く言葉も吉田修一なんかよりずっとうまい、というかヒリヒリしている。読み進みながら、ときおり吉原幸子の詩を思い出しちゃった。
「新しい言葉」が好きだね。わたしも、同性愛者よりも異性愛者のあり方のほうに関心が移っているので、こんな小説書かれると、やられたなあって思っちゃいました。「新しい言葉」ね。せつないなあ、このタイトル、というかキーワードも。目のつけどころだなあ。
それにしても、この本が出たのがほぼ2年前でしょ。ということはつまり、これ自体、2000年ごろの作品でしょう。いやはや。まいりました。
収録三編はたしかにいずれもゲイの置かれた状況という点で2000年前後までの時代性を感じさせますが、英田さんはことし30歳。
彼の下の世代に「ぼせ」さんという20代半ばでゲイ小説を書く人もいるのだけれど、また違うんですね、作品との距離感が。まあ、年齢の差だけではないのでしょうが、英田さんにはぼせさんの小説にはある(というか彼の小説に特徴的な)心地よい「ゆるさ」というのがない。くそっ、きついんだよ、ってな感じ。
英田さんのその後の近作をぜひ読みたいですなあ。どうしたら読めるんだろうか。金を払う価値はあります。
ちなみに、2篇目の「光彩」で、「呟く」が「眩く」と数カ所誤植のママなのが気になりました。この人、バディで掲載されてたときも誤植や行落ちが多くてかわいそうだったなあ。テラ出版、その罪滅ぼしで彼のバディ時代の短篇をぜんぶまとめて本にしてくれないかなあ。2000円で買うぞ、おれは。
あ〜あ、睡眠障害が続いている。
時差ボケともいうが。