書き忘れ
昨日は、気色ばんだときのチェイニーの迫力に気圧されして(ありゃ、テレビ画面を通してでもびびったね)、書くべきことをじゃっかん書き忘れた。
副大統領討論で、じつは2候補に呆れたこともあった。
あまりにイラクとか税金とか医療保険とかに気を取られていたのだろう、あるいはそもそも関心のうちになかったのかもしれない。司会者の黒人女性が、アメリカ国内でアフリカ系アメリカ人のHIV感染者が増えているが、どういう対策を考えているか、と質問した時のことだ。
最初に2分間、チェイニーが答え、つぎに90秒でエドワーズが反論する、というやり方だが、チェイニーは驚いたことに、さんざん型通りのエイズ対策予算の説明をしてから最後に「アフリカ系で増えているという数字は知らなかった」と口にしたのだ。
アフリカ系、ヒスパニック系、しかもその若い世代でまた再びHIV感染が増えているというのは何度もニュースに上っていることだし、もう常識と言ってよい。なのにこの回答。
じゃあエドワーズはどうかというと、こちらもアフリカ系ではなくアフリカでのエイズ禍についてしゃべくるという始末。アメリカ国内の問題としても紋切り型の言葉しか発せられなかった。
エイズはすでに政治課題ではなくなっているのか。そんなことはない。エイズは安全保障の問題ですらあるのだから、重要な国際課題でもある。だが、アメリカの国内問題としては、質問されるとすら思っていなかったのだろう。そんな“慢心”がありありと見て取れた。なんかね、さぶいなあ。人は攻撃的であるとき、弱者を忘れるんだわね。昨日の討論会はじつにともに攻撃的だった。
同じことはもう一点、イスラエル・パレスチナ問題にもいえる。
ブッシュ政権のイスラエル一辺倒の政策はすでに世界から批判を受けているものの、数はそう多くないとはいえ国内のユダヤ票を抱える政治家としては票にもならないパレスチナに同情しても何の役にも立たないということなのだろう。イスラエル問題を質問されたエドワーズも「押さえていなければならないのは、イスラエルには絶対的な自衛権があるということだ」と強調して、パレスチナ人による自爆テロへの反撃の権利だけを言い募っていた。いったい、パレスチナ人の自衛権はどこにいったのか。そんな簡単なことじゃないからこんなにも泥沼化しているのに、それをわかっていながらそうしかいえないどうしようもなさ。
ガザに侵攻したイスラエル軍の即時撤退を求める国連安保理決議案に5日、アメリカはまた拒否権を使った。ことし3月には、イスラエルがハマスの指導者ヤシン師をあんなにあからさまにミサイルで暗殺した時の非難決議でも拒否権を行使している。おいおい、そりゃあねえだろーと思ったよね、あんときゃ。
ケリー・エドワーズになってもこの状況は簡単には変わらないだろう。
しかし、エドワーズが口にしていた「fresh startを切るべき時だ」というのは、イスラエル・パレスチナ和平でもいままた望まれる課題なのだとつよく思う。