インド洋大津波
きのう銀行に小切手を入れに行って、自動振込機の初期画面がインド洋大津波の寄付金を呼びかける画像だったのに驚きました。
インド洋大津波から今日で1カ月です。アメリカのテレビでは元大統領のブッシュ父と前大統領のクリントンとが2人仲良く並んで被災者支援の募金を呼びかける公共広告が流れています。いわく「起きたことは変えられません。しかし、これから起きることは(あなたの支援で)変えられます」。
正月に日本に一時帰国していたのですが、同じアジアでの大災害にも関わらずこうした支援呼びかけはあまり目につきませんでした。中越地震の支援で目一杯だったからなのでしょうか。対してアメリカに帰ってみると、企業も芸能界もこぞってお金を出したり集めたりして遠いアジアの被災国に送ろうとしています。というか、その広報、プレゼンテーションの仕方がじつにうまいんですね。
同じようなことを9・11のときにも感じました。あのテロの直後、米国企業のホームページは一斉に追悼を表したものに書き換えられましたが、米国内にある日系企業のホームページはまるでなにもなかったかのようにいつまでも“平時”の宣伝ページのままだったのです。企業広報というか、社会事象に対する対応の仕方がまるで鈍いのです。
今回の大津波もそうです。これ聞こえよがしに「寄付をした」と吹聴はしていませんが、米国企業のウェッブサイトにはさりげなく自社の寄付実績が書き添えられ、同時に赤十字などへの寄付金の案内が書き加えられるようになりました。コカ・コーラは1000万ドル(10億円強)を寄付、同じくペプシコもインド、インドネシア、スリランカなどでボトル飲料水の無料配給など多大な寄付を行っているようです。アメリカン・エクスプレスは社員が100万ドルを集め、社としてもそれに同額の100万ドルを追加して計200万ドルを寄付しました。AOL、アマゾン、アップル・コンピュータ、ヤフーなどのホームページでもみんな義援金団体へのリンクが貼られ、テレビ各局も寄付を募る緊急番組をプライムタイムにCMなしで放送しました。ラジオもそうですね。クリア・チャンネルも全米1200局のラジオ網を使ってユニセフの広報キャンペーンに協力していました。
ハリウッドの大物俳優たちや音楽家たちもノーギャラでそれに出演しては視聴者からの寄付金の電話を受け取ったりしているのです。NBCテレビですが、インド洋大津波の被災者救済のための募金2時間特番「ツナミ・エイド」をロサンゼルスのユニバーサルスタジオからCMなしで生中継しました。
この番組にノーギャラで出演したのは音楽界からはマドンナやエルトン・ジョン、グラミー賞歌手のノラ・ジョーンズら。映画界からはお膝元とあってブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ベン・アフレック、ニコラス・ケイジ、トム・セレック、ジェームズ・カーン、モーガン・フリーマンといったそうそうたる顔です。番組ではクリント・イーストウッドらが地震から津波発生までの過程や被災状況を報告し、数々の悲劇を言葉で再現しました。マドンナは犠牲者への哀悼を示して黒衣でジョン・レノンの「イマジン」を歌い上げ、ブラッド・ピットら多くのセレブは自ら電話オペレーターとなって視聴者からの寄付金の電話を受け付ける、といった演出です。
じつは米国企業ではこうした“危機”あるいは“大事”に対処する部署が決まっていて、その場合にどうするかのマニュアルがシステムとして確立しています。このマニュアルは必要なものです。「まずいことをやらなかった」からよしとする消極的な対応は「よいこともしなかった」と同義であって、企業にとっては社会的怠慢と受け取られます。それはいまや減点の対象なのです。
日本企業が、あるいは日本政府がいまひとつ世界にその存在感をアピールできないのは、こうした社会的責任へのアプローチを示すのに怠慢だからだと思えてなりません。やっと大企業が動き出していますが、おかしなことになんだかそろってついこのあいだ、1月24日付けでHPを書き換えているところが多い。はて、談合でもあったのかしらん。
NHKで辞職なさるエラいさんの退職金が1億円だとかそれ以上だとか言われていますが、全部とはいわないけれど半分くらいポンとそれを寄付したりしたら、ずいぶんと汚名返上になるでしょうにね。