« June 2005 | Main | September 2005 »

August 31, 2005

死者の代弁者

 ブッシュへの支持率がじわじわと40%にまで下がってきて、不支持の56%とともに最悪を記録しています。再選を果たした大統領というのは戦後ではウォーターゲート事件の渦中にあったニクソンを除いて、みな2期目のこの時期には60%ほどの支持率を維持していましたからこれは“異常事態”。これにはイラク戦争で米兵の息子を失い、テキサス州の大統領私邸近くで連日反戦と米軍撤退を訴えているシンディ・シーハンさんへの共感が広がっていることも影響しているのでしょう。

 そのシーハンさんの抗議活動に対してブッシュ共和党支持者のある男性が「戦死した息子は彼女を恥じているだろう。政府に反対なら4年ごとの選挙で不信任の意志を示せばいい」と言っているのを目にして、この夏の日本での靖国問題を思い出しました。靖国に関しても死者たちの思いを生きている者たちが代弁してかまびすしかった。

 死者は何を思っているのか、それを言葉にするのはおそらく不可能でしょう。靖国でいえば軍上層部の無謀な作戦で餓死した兵士たちの無念もあれば、殺したくもない非戦闘員を命令で殺さざるを得なかった人間としての恨みもあるに違いない。そうした彼らが合祀されたA級戦犯を赦すのかどうかはわかりません。生きている現在の日本人がそんな“英霊”たちを一緒くたにして「日本では死ねばみんな神様だ」と急に宗教じみるのも節操がないように見えます。

 しょせん死者の代弁は、死者を代弁しているのではなくて生者の声に過ぎないのでしょう。もっともその生者も、いつか死者になるものとしてのそのときの自らの代弁者として。

 ただしいくら自らの代弁だからといって、イラクで戦死した息子が反戦活動をする母親を恥じているかどうか、それは他人が言ってはならないことのように感じます。今回のブッシュ不支持率の増加もイラク反戦の気運の高まりというよりは、この母親シーハンさんへの批判をこれまでと同じく単純な、正義か悪か、敵か味方か、の二元論で片付けようとするブッシュ支持派の相変わらずの論調に、そろそろ中間派がウンザリしてきた、そんな世論が背景なのではないかと思われるのです。

 さて日本はどうなのでしょう。郵政改革の是非の二元論だけでも単純すぎるのに、今回の総選挙の日程を9月11日に決めた理由を「なにしろ同時多発テロの記念日であるから」「参院議員の反対派の同時多発に我々は巻き込まれてビルから転げ落ちたような格好でございますから」と明かした自民党の山崎拓前副総裁の無神経(http://www2.asahi.com/senkyo2005/news/SEB200508290007.html)を、私はあのテロ死者たちの目撃証人として、直後のユニオンスクエアに参集した夥しい追悼者の1人として、文字どおり吐き気を覚えるほどに恥じるのです。

 しかし“保守派”と呼ばれる人々に、国の違いを問わず、こうして情け知らずの発言が繰り返されるのは、いったいいかなる心理的メカニズムが働いているのからなのでしょうか。

August 12, 2005

尾辻かな子さん、Good Luck!

この共同配信の英語ニュースは8月12日付けでアメリカなどのLGBTニュースサイトでも大きく転載されてますよ。

尾辻さんはまえまえからカムアウトのタイミングを考えていたんだよね。本を書いてたのかあ。よくふんばったね。ビアンの潔さ(って一般化するわけじゃないが)、拍手。そうそう、東京パレードだな、今日は。良き日和であることを。

Osaka Prefectural Assembly legislator comes out as lesbian

(Kyodo) _ In a move rarely seen by a legislator, Kanako Otsuji, a member of the Osaka Prefectural Assembly, told reporters Friday that she is a lesbian and is publishing an autobiography that centers on her quest for sexual identity.
When she ran in an election for the 112-seat prefectural assembly in April 2003, Otsuji, 30, gave up the idea of coming out to the public because she was unsure she could win understanding about her sexuality from the general public in the prefecture with a population of 8.84 million, the second largest after Tokyo.

議員がするのは珍しいが、大阪府議の尾辻かな子(30)が報道陣に自分がレズビアンであること、その性的アイデンティティへの探索を中心にした自伝を出版することを話した。2003年4月の選挙では自分のセクシュアリティへの理解を得ながら当選できるかわからなかったのでカムアウトは断念していた。

With two years elapsed, she decided to come out because "I don't want children troubled by being homosexual to experience the same (hardship she had)."

2年経って、カムアウトの理由は「同性愛者であることで子供たちが私と同じこと(つらさ)を経験してほしくなかった」から。

In her book titled "Coming Out -- Jibunrashisa wo Mitsukeru Tabi (a journey for finding your true self)" published by Kodansha Ltd., she says she realized she was homosexual when she fell in love with a woman at the age of 23 but had a hard time because she could not tell her parents or close friends.

本のタイトルは「カミングアウトー自分らしさを見つける旅」(講談社)。自分が同性愛者だと気づいたのは23歳のときに女性に恋したとき。自分の両親にも親友たちにもそのことを話せずとてもつらかったという。

August 07, 2005

小泉解散?

弟の四十九日法要のためまた帰省中です。ところが今夏の北海道もまるで北海道じゃないみたいに暑い日が続きます。おまけに尋常じゃないほど蒸すんだ。まいったね。

弟の息子である4年生の甥っ子が夏休みにどこかに行きたいというので土日を使って高校時代の友人たちを呼び出し、積丹半島の海水浴場に一泊のキャンプをやってきました。ちょうど同じ年齢の子供もいてね、カニや貝やエビなんかも捕まえて大喜びしてましたわ。食事はジンギスカン。翌朝は隣のテントからお裾の牛肉処理のためにビールでシチューつくったらこれまたうまかった。甥っ子ははしゃぎ疲れで帰ってくる車の中ではもちろん爆睡。私は茹でガニみたいに日焼けで真っ赤です。いま体が火照って起きだしてきたところ。庭のキュウリをすりおろしてヘチマコロンの代わりに顔や体に塗ったくったところっす。これ、けっこう効きますよ。

さて本日は小泉解散の日ですか。
わたしが小泉だったら解散はしないと思うんだけどね。

解散総選挙って、総理が信念の正否を問うものだけど、解散総選挙になって、「小泉の信念やよし」とする者がどういう投票行動に出れば「よし」ということになるのか、それがまったくわからないでしょ、今回。
小泉支持だから自民党に入れる? それは郵政法案をつぶしたところへのミソも糞も(失礼)いっしょの投票行動ですよね。たとえ亀井一派が新党を作って戦うと言っても、当選後は自民党に戻るって言ってるんだから同じこと。

つまり、解散総選挙をしたって小泉支持、郵政民営化賛成の意思の表明のしようがないわけですよ。そんな選挙なんて、小泉にとってはやるだけおかしい。それでもとにかく選挙ではぜったいに自民党批判票が増えるでしょ。そうすれば、結局は自民党敗北=下野の責任も小泉が自分で取ることになってしまう。 おかしいやな、そりゃ。

そんな損な役回りを彼がやるかなあ。 森は「変人以上だ」って言ったらしいが、それとは別の意味で、総選挙をやるってのは「変人以上」ですわね。

わたしなら辞職しますね、総理も総裁も。「いつも言ってたでしょ、総理総裁の職に恋々としないって。私の腹を、わかってなかったんだなあ、みなさん」とか言ってさ。

そんで次の総裁総理が自民党から出てくるわけですよ。
すると支持率15%ですよ。
するとそこでこそ総選挙だ。
そうやって下駄を預けてから、自民は総選挙敗北ですよ。小泉を辞めさせた党ですからね。ここで初めて郵政民営化賛成、小泉支持の投票行動が現れる、表し得るわけでね、結果、その敗北の責任を自分とは別物になった自民党に取らせることになるわけですよ。
そんでもって、郵政民営化公約毀損の鬱憤を、もう1つのかねてからの公約、「自民党をぶっ壊す」の成就で晴らすんだなあ。

そんなこと、どこの新聞も書いてないが、そういうシナリオ、あるんじゃないですかね。ま、あと十数時間でわかることですが。