Summer Storm
アメリカのケーブルTVにはいま、3つのゲイチャンネルがあって、その1つに「here!」TVという有料局があります。VODの方式と24時間放送の2チャンネルで、有料といっても月に6ドルで見られるわけ。ブロックバスターで2本ビデオを借りる分で見放題だから、まあ悪くはないディールですわね。
で、今年の初めかな、NYのアート系のクアドシネマという映画館で公開していた2001年のドイツ映画「Summer Storm」が、早くもこのケーブル局に登場して、先日、見てみました。
よかったんですよ、これが、なかなかとても。
さてストーリーですが、高校のボート部の男女が合宿で郊外の川のほとりにキャンプを張るわけです。そん中のトビとアヒムという2人の男の子にはそれぞれガールフレンドもいて、彼女たちも女子部の方で練習をしてる。ところが、トビはなんとなくチームメートのアヒムがたまらなく好きになってしまう。そんで永遠の友情を誓い合いながらも、しかしアヒムは自分のガールフレンドといっしょにいる時間の方が長くなりがちになって、それでトビがみっともなくも嫉妬してしまう。で、無理にキスをしようとして拒絶され……。
まあ、こういうのはよくある設定、よくあるパタン。
でも、さすが21世紀の映画です。違う要素が入ってくるんですよ。いいなあ、こういうの。
そのキャンプ地に、他地区からゲイばっかりのボート部の高校生たちもやってくるんだけど、で、ここで挑発されるのはトビたち、“普通”の高校生たち。古い話だけど、「東京・府中少年の家」事件とは逆ですね。で、少年たちは、少年たち自らでreconcileの道を辿り始めるのです。
この辺の筋運びがきれいごとじゃなくてとても自然で清々しくて、こういう映画を見られるヨーロッパやアメリカの高校生たちは、ゲイでもゲイでなくとも、機会としてとても恵まれているなあと思いました。
物事には順番というものがあります。
日本のゲイシーンというのは、きちんと順番におさらいする教育的な基盤というものがなくて、いつも先鋭的なものを先取りして自慢するプロ仕様だけがちやほやされる異様なもののように映ったりします。そうして性的指向とか性的アイデンティティとかジェンダーとかで余計に混乱したりすることになる。
知るのに早すぎることはありません。だから、知る順番はどうとでもなりますが、知ったあとで遡及的にその「理」の成り立ちをたどることは必要でしょう。
BBMも好きな映画ですが、若い人たちには、性指向に関係なく万人に、むしろこの「Summer Storm」をこそ見てほしいと思います。新旧のゲイ・イッシューが、この映画の中に潮目のように存在して、そうして確実に未来へと流れていきます。
この7月、この映画は「サマー・ストーム〜夏の突風」というタイトルで東京のLG映画祭で青山のスパイラルホールで上映されるようです。12日(金)16時〜と14日(日)13時15分〜の2回。1300円。
それと、大阪では関西Queer (クイア)Film Festival で、24日(月)19時45分? HEP HALL(梅田・HEP FIVE 8階)=大阪市北区角田町5-15=だそうです。ドイツ語で日本語、英語字幕付き。1,600円とか。
お楽しみあれ。