どっちを見てもホモだらけ?
アメリカでまたまたとんでもないスキャンダルが発覚しました。
テッド・ハガード(50)=写真上=という、全米3000万人もの信者を有する「福音派(Evangelical=エヴァンゲリオンの語源ですね)」のトップが、まあ、キリスト教保守派の総本山とも言うべき「全米福音教会協会(the National Association of Evangelicals=NAE)」の会長さんなんですけど、日本でいえば創価学会の池田大作みたいなひとですかね、このひとが、なんと3年間にわたって男性エスコート(プロの男娼です)と性的関係を続けていたってことを、このエスコートがばらしちゃったのです。うわっ、なに、それ? です。それだけでなくて、このハガードが覚せい剤(メタアンフェタミン)などの麻薬を使ってることも、「私のファンタジーは18歳から22歳くらいの大学生の男の子たち6人といっしょにセックスすることだ」なんて話してたこともばらしちゃった。おまけに「アート」と名乗ってこのエスコートに残していた伝言メッセージ(ボイスメール)も公開されました。麻薬を100ドルとか200ドル分、いますぐ手配できないかって言う話です。
この「福音派」、前の日記にも書いた例の「静かな広がり」の「ヘルハウス」のおっちゃん、なんとかロバーツ牧師ってのも所属している右翼バリバリの会派です。もちろん「ホモは地獄に堕ちろ!」派の中心組織。で、ハガードさん、本日の朝のニュースショーでニコニコしながら「私はゲイの関係など持ったこともない」「妻に忠実な夫だ」とかって余裕(のカラ元気?)でいってたけど(子供も5人!います)、NAEの協会長を辞任、自ら率いる「ニューライフ教会」(信者14000人、本部・コロラドスプリングス)の代表も降りると発表しました。このひと、「タイム」誌で「最も影響力のある福音派宗教人25人」に選ばれたようなやつで、「福音派教会の政治的方向性を支配するのに彼より強大な人物はいない」ってひとなのです。毎週月曜にはブッシュに週の初めのありがたい聖書のお話をしてるっていうし、電話すれば24時間以内に必ず大統領から返事が来るって豪語もしてる。
で、ご多分に漏れず、信者を前にしてはアンチ・ホモセクシュアルの説教をバシバシ。同性婚などもってのほかで大反対っていう急先鋒。いまアメリカで話題のドキュメンタリー映画「ジーザス・キャンプ」(少年少女たちを大量に動員してサマーキャンプをやるように福音派の教義を教え込むキャンプ。洗脳キャンプですね)にも噛み付いてる。彼自身が映ってますからね。
(ふうむ、私らもあんたが昨晩、何してたか知ったってわけよん)
いやいや、マーク・フォーリーといい、いったいこの保守派連中のホモセックス行為はいったい何なんでしょう。今回これをばらしたメイル・エスコートはマイク・ジョーンズさん(49)=写真下=ってひとなんだけど、つい最近、この3年間毎月決まって自分の体を買っていたこの相手がハガードだって気づいて、しかも同性婚やホモセクシュアルへの攻撃的なスピーチの内容を聞いて、このアウティングを決意したんだそうな。「みんな私を見て(メイル・エスコートなんて)反道徳的な人間だと言うかもしれないが、心では道徳的なことをしなければと思ってきた。言ってることとやってることのまったく違う偽善的な人間を公にすることが、わたしにとっての道徳的な行為だった」と話してます。で、ハガードとは完全に肉体関係だけで、「情緒的な関係emotional relationshipはまったくない」と。「心は孤独なクローゼット」ってなら同情の余地があるかもしれないが(そんなことねえか)、単純に肉体的快楽を追い求めてのゲイセックス狂いだってなら、あちゃちゃ、イタいですな、こりゃ。
一方のハガードは「麻薬は買ったが興味があっただけで使ってはいない」と言い訳。マイク・ジョーンズをホテルに呼んでいた一件についても「マッサージをしてもらっただけでセックスはしていない」と言い張っております。なるほどね。
まあ、来週火曜日の中間選挙に向けて、ということもあるでしょうが、出てくるは出てくるは。
敬虔なキリスト教信者は、おそらくかわいそうなくらい混乱してるでしょうね。いったい、何がなんだかわからなくなってるんじゃないでしょうか。いやそれとも、こんなのはやはり神の与えた試煉だと考えているのかも。あるいはデマだ、信じない、とか。
わたしだってこうも続くといったい何だかわかりません。
こうしたスキャンダルはさて、選挙にどう影響してくるのでしょうか。
今回の選挙と前回の2004年選挙との大きな違いは、同性婚や人工中絶などのモラル・イッシュー(道徳問題)はひとびとの関心から離れてきているということです。CNNの調査では、同性婚が一番の争点と言うひとは1%にしかならない。これは日本のマスメディアでも「イラク戦争の泥沼化のことが大きすぎてそちらに目が回らない」というような言い方がなされているのですが、私にはどうももっと積極的に(あるいは消極的に?)、同性婚のことなどどうでもよくなってきたんじゃないかと思われるのです。どうでもよくなってきた、というのはもちろん、そんなに目くじらを立てるほどのことではないんじゃないか、認めてもいいんじゃないの、というような感じが、大勢を占めてきたんじゃないか、という意味です。
その証拠に、やはりCNNの最新の調査では、同性婚を認めるべきというひとは28%。ドメスティックパートナーなどのシヴィルユニオンの形を認めるべき、というひとは29%で、この2つを会わせると57%と、大きく過半数なのです。どちらも認めるべきではない、というひとは39%にとどまって、これは2年前とは大きな違いです。
そうしてこうした一連のスキャンダルで最も影響を受けると思われるのは、共和党、というかブッシュの支持母体であった草の根保守主義のキリスト者たちが、呆れて今回は投票にいかなくなる、ということなのではないかと思うのですね。つまり、2年前には同性婚支持派の拡大に危機感を持っていて投票に出かけた層が、今回はなんだかわからなくなって投票に出かけるだけの動機付けにも迷ってしまう、ということなんじゃないか。
だって、ホモセクシュアルはダメと言っていたひとがホモセックスを楽しんでいたとなると、これはそのひとが投票しようと訴えていた共和党も、ほんとに投票していいのかどうかわらなくなる。だって共和党にはマーク・フォーリーみたいなやつもいたということが明らかになったばかりですし。で、共和党も民主党もとにかくホモばっかりだ。もう政治はダメだ。投票にも行きたくない、という具合になるのではないか。
これが今回の共和党の不振の下支えになっているのではないかと思うのです。もちろん上の揺れを支えているのはイラクですけどね。