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December 31, 2006

年が暮れる

やけに人の死ぬ12月だ。ジェラルド・フォードが死んだ。ジェイムズ・ブラウンが死んだ。青島も死んだし岸田今日子も死んだ。それでサダム・フセインは死刑になった。イラクでは開戦以来最も米軍兵士の死んだ月になった。

the Deadliest Month.

フセインの処刑を報じるCNNが、awaiting the first picture of the excution released というテロップを映しながら中継をしていた。アンダーソン・クーパーが「手に入り次第、お見せします。もちろん局内で内容を検討した上、事前に警告もおこなってから放送します」といっていた。見せねばならないんだろうな。

人は死に餓えているわけではないし、フセインの処刑は史実として記録が必要だろうが、その後放送された、首に吊るし縄を回されるフセインの映像を見ているときに、はてわたしはどう反応していいものか、考えはその先にどうしても行こうとしなかった。

わたしは死刑にはなんの効果もないと思っている。だから、効果を求めての死刑には反対だ。けれど、拷問され虐殺された148人の遺族の怨念が死刑を求めることに関して、わたしはなにも言えないと思う。

最も高貴な復讐は、赦すことである。
けれど、復讐がしたいのではない、ただ、永遠に赦したくないだけだ、という言葉に、対峙できる言葉をきっとわたしは持たない。

この死刑はさらにまた、刑罰ではなく政治的な権力闘争の結末として、歴史に多々在った死のひとつでもある。その場合もまた、わたしはそれを受け入れるしかないのだろうとも思う。そんなもんだ、と。

12月もまた、残酷な月である。
A Happy New Year というあいさつの空々しく響く大晦日の青空が暮れてゆく。

December 30, 2006

デップがマーキュリーに

deppmercury.jpg

ジョニー・デップが91年にAIDSで死んだクイーンのヴォーカリストのフレディ・マーキュリーの伝記映画に主役することになったらしいです。製作はロバート・デニーロのトライベッカ・プロダクション。クイーンのギタリストのブライアン・メイが英インディペンダント紙に明らかにしました。

フレディは当時、最後まで自分がゲイだとは言わなかったし、AIDSだと関係者が明かしたその翌日にロンドンで亡くなりました。おまけにインド人の血を引いていたこともほとんどだれにも話していなかった。いろんな意味でがんじがらめになっていたんでしょうね。でも一方ではものすごいパーティー好きで色恋沙汰も数えきれず。

わたしが生前も死後も彼にあまり感情移入できなかったのはでもそういう意味ではなくて、クイーンの音楽自体どうも好きじゃなかったせいですけど。80年代のロックって好きじゃなかったんですよね。おまけに当時のわたしは「クイーン」という意味すら知らなかった。ウブと言えばウブでした。はは。

フセイン処刑間近

CNNはあと3時間後と言っています。
日本時間では正午までに。これがこの日のイラクの夜明けに当たるらしい。

アメリカによるイラク侵攻が始まったときに、わたしは次のように書きました。

2003/04「よい戦争のよくない未来」

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 第一、フセイン政権が崩壊したとしてでは次に誰がイラクを統治するのか。亡命イラク人に人材はいない。優秀な官僚機構を持つとされる唯一の政党バース党をフセイン色を一掃した上で傀儡政権として利用するのか。

 しかしそんな政権で誇り高きイスラム教徒が、近隣イスラム諸国が黙っているはずもない。米英がいくら共同声明で殊勝なことを言っても国連にいまさらなにを頼めるのか。米英が安保理を見限った傷は簡単には癒えない。

 したがってそんな新政権を支えるためには米軍の長期占領が必要となる。散発的な対米進駐軍ゲリラの危険は消えるはずもない。そのうち内戦が勃発する危険さえある。そうなったら次に生まれるのは反米政権でしかないのである。

 フセインの首を取ったとする(それは当初から圧倒的な軍事力を背景に時間の問題でしかない)。ではその次にどうするのか? 戦争は、実はそこから始まるのである。だからこの戦争の行方がわからないのだ。

 ところでテロはどこに行ったのだ? 最初は対テロ戦争だったんじゃないか? テロもまた、さて、そこからまたぞろ生まれるのである。米国とアラブの共栄どころか反米の世紀が始まるのである。いや、それはすでに始まっているのかもしれない。
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上記の予測はほとんど当たりましたが、ゆいいつ、フセインの絞首刑は予想していませんでした。フセインの「戦死」ならこれは事の推移として“自然”だったのだけれど、裁判から死刑判決そして処刑、ということになるとそこにより大きな米国の恣意が入り込んでくることになる(実際、死刑判決は米国の中間選挙の直前にアナウンスされたのですし)。それに「年内の執行」というこの「年内」という概念自体、欧米的ですしね。

この処刑がバース党の残党周辺にさらなる報復の火種を与えることになるかもしれない。しかしフセインを生かしておいてはこの内戦状態の中、いつフセインが獄中から逃げ出して復活するかもしれない、という恐れは現政権、および米政権にとっての最悪の悪夢ですから。

この処刑はですから、シーア派やクルドへの圧政と虐殺の罪と同時に、いやむしろ現時点での意義としては、政敵の抹殺ということであります。状況は違えど、本質的にスターリンとどう違うんだか。とはいえわたしに言えることなどそうあるわけでもなく、まあ、最初のパジャマのボタンの掛け違いを、しかしとにかく最後までやってしまわないことにはうかうかベッドにも入れない、ということなんだろうなあということ。もっとも、ベッドに入って寝ついてからも、きっとどこかがずれてて寝づらくて、きっと夜中に目を覚ますことになるんだろうなあということです。

歴史は残酷だね。

December 25, 2006

12月の俳句

このところ、CSI というこちらの犯罪ドラマにはまってまして、Crime Scene Investigation というもともとはCBSの番組なんですが、ラスヴェガスを舞台にした科学捜査班の物語、これが面白いんだなあ。で、数週間前からじつは午後6時から10時まで、Spike TVという別チャンネルでこの再放送を毎日やってるのに気づいて、それを見だしたら、毎日この時間帯、4時間も、テレビを見るだけで他になにもできない状態。

本日はクリスマスイヴ。うちで少人数で鍋でもしようということで、これから食材の買い出しに行ってきます。

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セーターのほつれ止まらぬ夜の望郷
(せーたーのほつれとまらぬよのぼうきょう)

蓋のなか闇ふつふつと蕪煮ゆ
(ふたのなかやみふつふつとかぶらにゆ)

日めくりの明日はや透けて今朝の冬
(ひめくりのあすはやすけてけさのふゆ)

赤値札この冬牡蠣の堅き口
(あかねふだこのふゆがきのかたきくち)

数多なる可能剥ぎ終え暦果つ
(あまたなるかのうはぎおえこよみはつ)

乳見せて眠る雌猫レノンの忌
(ちちみせてねむるめすねこれのんのき)

わが嘘の語尾弱まりてマリア像
(わがうそのごびよわまりてまりあぞう)

売れ残る聖樹寄り添ひ街眠る
(うれのこるせいじゅよりそいまちねむる)

赦すことなほできぬまま聖夜かな
(ゆるすことなおできぬまませいやかな)

December 24, 2006

隔数日刊─Daily Bullshit移転再開

半年がかりでちんたら引っ越し作業を進めてきた本サイトを、公開します。
大もとのHPは
New York Journal〜北丸雄二.com
っていうもの。
そこにメニューがあって、その下の階層の1つがこのDaily Bullshitなわけです。
以下のようなメニューです。

デイリー・ブルシット(日々のたわ言) =これが最もひんぱんに更新される予定です。ここのことです。
ワールド・インデックス(バディ誌の連載コラムの再掲) =これは月末に更新。
まだ言うか?(Still Wanna Say?)(その他の依頼原稿の再掲) =これは適当です。
内省的な脂肪肝(Introspective Fatty Liver=極私的レストラン評) =これは気晴らしです。おいしいところに行き当たったら気ままに更新されます。

などと遊んでいます。

まだ不具合もありますが、いつまで待ってもブログというのはその性格上、完成形というのは存在しない増殖系なのだと悟りました。
おいおい他の過去のテキストもアップしていけばよいかな、と。
字が小さいですが、その場合はブラウザで「字を大きく」を選択してお読みください。これもいずれ直して参ります。それからワールド・インデックスはポップアップで拡大版が出ますが、小さなモニターだと端が切れてしまうことがわかりました。それで、その場合は「別ウィンドウで開く」で見てください。これもそのうちにクリックすれば自動的に別ウィンドウが開くように直します。画像アップを一つ一つ変更するの、面倒くさいの。

定期的にご訪問いただけるとちっぽけながらも強固な私の自己顕示欲が満たされます。
またお手数ですが、すでに旧サイトのブックマークなどをお持ちの方にはリンク先のご変更をいただければ幸いです。このブログだけへのリンクだけでもいいですし、HPアドレスでもどちらでも。

ご感想などもいただければうれしい限りです。
ってか、各ブログでは原則的にコメント記入欄を設けてません。コメントをいただくと返事をしなくちゃ失礼なので、しかし、なかなか面倒だったりもするわけでして。
ですので、コメントがある場合はメールでいただければ幸いです。アドレスはHPにあります。

では、告知終わり。