フセイン処刑間近
CNNはあと3時間後と言っています。
日本時間では正午までに。これがこの日のイラクの夜明けに当たるらしい。
アメリカによるイラク侵攻が始まったときに、わたしは次のように書きました。
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第一、フセイン政権が崩壊したとしてでは次に誰がイラクを統治するのか。亡命イラク人に人材はいない。優秀な官僚機構を持つとされる唯一の政党バース党をフセイン色を一掃した上で傀儡政権として利用するのか。
しかしそんな政権で誇り高きイスラム教徒が、近隣イスラム諸国が黙っているはずもない。米英がいくら共同声明で殊勝なことを言っても国連にいまさらなにを頼めるのか。米英が安保理を見限った傷は簡単には癒えない。
したがってそんな新政権を支えるためには米軍の長期占領が必要となる。散発的な対米進駐軍ゲリラの危険は消えるはずもない。そのうち内戦が勃発する危険さえある。そうなったら次に生まれるのは反米政権でしかないのである。
フセインの首を取ったとする(それは当初から圧倒的な軍事力を背景に時間の問題でしかない)。ではその次にどうするのか? 戦争は、実はそこから始まるのである。だからこの戦争の行方がわからないのだ。
ところでテロはどこに行ったのだ? 最初は対テロ戦争だったんじゃないか? テロもまた、さて、そこからまたぞろ生まれるのである。米国とアラブの共栄どころか反米の世紀が始まるのである。いや、それはすでに始まっているのかもしれない。
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上記の予測はほとんど当たりましたが、ゆいいつ、フセインの絞首刑は予想していませんでした。フセインの「戦死」ならこれは事の推移として“自然”だったのだけれど、裁判から死刑判決そして処刑、ということになるとそこにより大きな米国の恣意が入り込んでくることになる(実際、死刑判決は米国の中間選挙の直前にアナウンスされたのですし)。それに「年内の執行」というこの「年内」という概念自体、欧米的ですしね。
この処刑がバース党の残党周辺にさらなる報復の火種を与えることになるかもしれない。しかしフセインを生かしておいてはこの内戦状態の中、いつフセインが獄中から逃げ出して復活するかもしれない、という恐れは現政権、および米政権にとっての最悪の悪夢ですから。
この処刑はですから、シーア派やクルドへの圧政と虐殺の罪と同時に、いやむしろ現時点での意義としては、政敵の抹殺ということであります。状況は違えど、本質的にスターリンとどう違うんだか。とはいえわたしに言えることなどそうあるわけでもなく、まあ、最初のパジャマのボタンの掛け違いを、しかしとにかく最後までやってしまわないことにはうかうかベッドにも入れない、ということなんだろうなあということ。もっとも、ベッドに入って寝ついてからも、きっとどこかがずれてて寝づらくて、きっと夜中に目を覚ますことになるんだろうなあということです。
歴史は残酷だね。