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サンジャヤがついに落選

いやいや、昨夜、とうとうサンジャヤが落っこちてしまいましたねー。
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相変わらず視聴率全米1位を独走する怪物番組「アメリカン・アイドル」第6シーズンの話であります。最終選考7人にしぼられて、私は今シーズン初めてちょくちょく見ていたのですが、動機はちょっと違って出場者の1人をめぐって全米を二分する論争が起きているのが面白かったから。

話題の中心がその最年少決勝進出者のサンジャヤ・マラカーくん(17)でした。
知らない人のためにざっと説明すると、この「アメリカン・アイドル」はタレント発掘のオーディション番組なんですが、歴代、優勝者ばかりか落選者すらレコード会社と契約するほど歌唱力第1の選考で知られていて、映画「ドリームガールズ」でオスカーを獲得したジェニファー・ハドソンもこの番組のファイナリスト(先に「準優勝者」と書きましたが、あずささんの指摘で間違いが判明。12人中、7週目に落とされたので6位とかの説もあり。すんません、このシーズン、気を入れて見てなかったの)。

んで審査員の1人に辛口のプロデューサー、サイモン・カウエルってのがいて、こいつのイギリス英語の酷評が呼び物でもあるんですが、サンジャヤはこのサイモンに「人気があっても歌も歌えないサンジャヤが勝ち進んだら審査員を辞める」とまでこき下ろされ続けながら今週まで来ていたわけですよ。視聴者投票では毎回抜群の人気だったし例のYouTubeでも圧倒的に再生数が多い。ブログ界もサンジャヤへの賞賛とこき下ろしで真っ2つに分かれて増殖を続けていた始末。もうすごいもんでした。「サンジャヤはアメリカン・アイドルの恥だ」とか「国家的陰謀だ」とか、酷評派は言いたい放題の2チャンネル状態。ま、ちょっとサンジャヤのなよなよしたところがホモフォビアを誘発してる気もしましたがまあそれは今回の話題ではないんで。

でね、「歌がヘタ」とは言われるものの、はっきり言ってジャパニーズ・アイドルたちを聞き慣れている私には「けっこううまいじゃないの」とかって感じなの。ちょっと音程が外れてふにゃらふにゃらした歌い方をするんだけど、まあそれも個性といえば個性かも、とかって。見ようによってはかわいくないこともないと思う人もいないことはないだろうし(それか結局!)。

しかしアメリカってのは、日本と違ってティーンズ・アイドルが一般エンタテインメント市場とは画然と異なる子供向け市場で住み分けているんですね。ガキのマーケットはぜったいにメインストリームには出てこれない。ガキが高級レストランに入れないのと同じです。ですんで、そんな米国のオトナというか一般向けの芸能市場では、毎回髪型を変えたり子供っぽく受け答えするサンジャヤの活躍は異常に映っていたわけです。

その結果、もうテレビやラジオのトークショー番組やニュースでもこの不可思議なサンジャヤ人気で花盛り。「サタデイ・ナイト・ライブ」でも面白可笑しいパロディになったし、ニューヨーク・タイムズなんぞは「勝利を第1の価値観とすることへの市民の反発の現れでは」と硬派に分析したりね。こないだのあるラジオ番組ではヒラリー・クリントンがサンジャヤ現象へのコメントを求められ「ここ最近で最高の質問ね」と笑いながら、「人間は投票したい人に投票できるもの。私の選挙もアメリカン・アイドルの投票も同じことよ」と答ってました。
だいたい、昨夜の落選は夜11時台の各局のニュースばかりか今朝のニュースでも取り上げられたんですよ。落選がニュースになる、そんなことってかつてないことでしたね。

思えばそう遠くない昔、たしかアメリカは「かわいらしさ」というものに日本とは違う基準を持っていました。それに気づいたのは例のキャベツ畑人形を初めて見た20年以上前なんですが、あのときアメリカ人の友人に「なんでこんなへちゃむくれの顔をした人形が可愛いのか」と問いつめたことがあります。ペットにする犬だってブルテリアだのフレンチブルドッグだのパグーだのと不細工な方が「可愛い〜!」と叫ばれていたんですよね。ま、それはいまもそうだけど。

それが最近はなんとなく変わってきてる。まずはあのポケモンかしら。それからキティちゃんでしょ、おまけにあのわけのわからん村上隆のデザインまで、どんどん日本的な、子供にもわかる「ど真ん中の可愛さ」が文化の本流に浸透してきている気がします。べつにどうでもいいことだけど、なんだか日本的な「子供文化」、はっきりいえば「ガキ文化」がこれからこの国にも上陸してきてるんじゃないかなと……。

そこにこのサンジャヤ旋風でした。彼の昨日の敗退を、さて、オトナ文化安泰の徴と見るか、それともガキ文化擡頭の序章と見るか。今回のアメリカン・アイドルは単なるタレント発掘というだけではなく、そういうオトナ文化とガキ文化の潮目、時代の変化の兆候と見るとなかなか考えさせられるものがありましたわ。

サンジャヤはきっとどっかのレコード会社が拾って、まあティーン向けの、それこそ日本的な意味でのアイドルCDを出すかもしれません。サンジャヤがあの屁みたいな声でジャズを軽く歌った回を見てて、あら、いいじゃないの、この子、とかって思っちゃった私は、きっとそのCDもチェックしてここでご報告することになるんでしょうか。はは。

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Comments

ジャニファー・ハドソンは
準優勝じゃなく、7位でしたよ。

あずささん、修正しました。
ありがとうございます。

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