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ビリーズ・ブートキャンプ

ビザ更新のために1カか月ほど日本に帰っていましたが、帰るなり友人たちに聞かれたのが「ビリーズ・ブートキャンプって知ってる?」という質問でした。「は?」と聞き返すも相手は「アメリカで大流行のエクササイズだよ」という説明で、こちらとしてはさっぱりわかりません。「そんなの流行ってねえよ」と抗弁しようにも断言できるほどの自信はなく、しまいにはアメリカに住んでるのになにも知らないんだと憐れんでくれる輩も。

テレビつけたらすぐにわかりました。ブートキャンプとは泣く子も黙る海兵隊新兵用の猛烈特訓キャンプのことなんだけど、テレビ画面にはどこかで見たことのある黒人インストラクターが日本語のアテレコで、インフォマーシャルっぽいプロモーションをやたらとやっているわけ。つまり彼のワークアウト・ビデオのことだったのですね。

で、思い出しました。この男、10年くらい前にテコンドーとボクシングを合わせた「テイ・ボウ」なるトレーニング法を考案してアメリカのパブリックチャンネル枠を買い込んでやはり盛んにインフォマーシャルを流していた人。しかしあのころはポニーテールの人だとかモジャモジャ頭の人だとか、いろんなワークアウトのインストラクターがいたなあ。アブなんとかという腹筋器具も手を替え品を替え売っていたっけ。

で、ビリーズ・ブートキャンプ、知らないのは私ばかりかと思ってアメリカにいる友人たちにも聞いてみたのですが、やはり誰ひとりとして知らなかったぞ。しかし日本ではみんな知っていた。なにせ75歳の、実家で一人暮らしの私の母親まで知っていたくらいです。日本側にだれかうまい仕掛人がいたんだろうけど、それにしても日米のこの温度差はいったい何なんでしょうね。

思えばアメリカに来てそういうことがままありました。日本ではかまびすしく「全米で大人気」とか喧伝されているものが、こちらでは「え?」という感じなことがざら。ニューヨークでヒットしたものなんてこの15年で、そうねえ、まずはローラーブレードとスポーツジムかなあ、そんで95年以降にエスプレッソバーが林立し始めたと思ったらそれがあっというまにスターバックスにぜんぶ変身し、それからiPodだね。そんでもって、スシもそうか。それくらいのもんじゃないでしょうか……。

そういえば日本で公開される映画に「全米ナンバー1の大ヒット」とあおられるのがやけに多いと思っていたら、それは毎週明けに発表される週末の映画興行収入ランクでの瞬間風速だというカラクリもこちらに来てから知りました。

それにしても瞬間的な「なんとかブーム」というのが日本には多過ぎるような気がします。(あるある大事典の)寒天とか納豆とかはすぐに売り切れるし、ティラミスからナタデココからたまごっちから、なにかに火がつくと全国的に猫も杓子もそれ一色になってしまう。まあ、アメリカでも最近はゲーム機やアイフォンに行列ができるなど、なんだかオタク化、日本化の進む消費者層も生まれてきましたが。

これにはマスメディア、とくにテレビの影響があるのでしょう。どのチャンネルも同じ内容の横並び。8月は朝青龍一色でうんざりでした。朝青龍よりメディア・スクラムの問題の方が重大です。大袈裟だけど、こりゃあ大政翼賛ファッショと同じメカニズムなんですわいな。国土の狭さと、TVネットワークの東京集中のせいかなあ。朝青龍なんてどうでもいいでしょう。だいたい、相撲協会なんてものすごくくだらない連中が運営してるわけで、国技とはいえ、朝青龍の傍若無人とどっちもどっちなんです。しかも仮病疑惑が尽きないとはいえ、いちおう精神疾患(神経疾患?)と診断された人物をああやって自宅から空港から、飛行機内まで、追いかけ回していいものですか? ひでえよ、テレビ局。

テレビ、電話、漫画はクールメディアだって40年も前にマクルーハンは言いましたが、あのころからよく言ってる意味わからなかったんだけど、時代を経てその分類はすべて逆転したみたいです。当時ホットメディアとされた新聞やラジオ、映画などはいまや受容者の頭を冷やすクールメディアのようです。

思えば、それって単に当時はテレビや電話や漫画が日常にそんなに即してなかったからじゃないのかなあ。マクルーハンはえらく御託を並べてたが、あれは当時もブルシットでしたものね。いまやテレビと携帯と漫画くらい人を熱くするものはない。えらい迷惑です。

ということで、書きなぐりの感のある今回のこれにオチはありません。はは。悪しからず。

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Comments

 そうですか。アメリカじゃ評判になっていませんか。痛快痛快。そういえば昔、イエローキャブっていうのも日本で変な紹介のされ方をして話題になり、ニューヨーク在住の日本人の間でひんしゅくを買ったことがありましたね。 

鎌倉さん、コメントありがとうございます。

そうそう、「イエローキャブ」ありましたね。あのいい加減な女性ライター(とはいえすべてゴーストが書いていたという元はしっこ女優(だっけ?))が日本で広めたデタラメ。

なんか、ビリーさん、また日本に行くらしいですね。数億円稼いでいるそうですよ、日本だけで。まあ、いいカモだこと。

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