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北の湖という男

朝青龍のときに書こうかどうかと迷っていてけっきょく書かずじまいだったのは、北の湖というのが私の中学時代からの親友の親戚だったということもあるんですけど、今回はやっぱり書かねばと思います。

この話です。nikkansports.comからの転載です。

「評論家」改め「会友」で杉山氏に取材証
(日刊スポーツ - 09月13日 10:04)

 日本相撲協会の北の湖理事長(54=元横綱)が、元NHKアナウンサーの杉山邦博氏(76)の「取材証」を10日に没収した問題で、同理事長は12日、杉山氏への措置を撤回して取材証を本人に返還した。

 両者はこの日午後1時30分から両国国技館内の理事室で約10分、話し合った。北の湖理事長は、前日11日に東京相撲記者クラブの抗議文への回答で示した没収理由の1つ「本場所で取材証を持って取材できるクラブの会友であるのに、相撲評論家などの肩書でテレビに出ていた」をあらためて主張。杉山氏が「その点は配慮を欠いた。これからは会友として出演する。今後も相撲協会の応援団の一員です」と返すと、あっさり取材証を返還した。

 一方で、もう1つの理由「出演番組でほかの出演者の批判的なコメントに、杉山氏がうなずいて同意した。協会批判だ」とした点については、杉山氏が意見を述べようとすると「もう、この件は終わりです」と論争を避けるような態度を取ったという。その上で、東京相撲記者クラブには「協会への批判等は真摯(しんし)に受け止める」などと回答した。また、杉山氏に対して10日に十分な説明もなく取材証を没収した行為への抗議については「今後、取材者に返還要求をする際は、事前に東京相撲記者クラブに相談する」と約束した。【柳田通斉】

この北の湖という男に関しては、実は個人的な思い出があります。
2000年のことでしたか、じつはこれも友人のドキュメンタリー映画作家が日米関係における「相撲」の文化的考察を撮りたいというので、私に日本でのロケの手伝いを頼んできたことがありました。それでぜんぜん畑の違う話ではあったけれど、私が相撲協会から学識者から相撲部屋からいろいろと取材と撮影のアポを取って日本各地で数週間にわたるロケを敢行したわけです。

北の湖は当時まだ、理事長ではなく、本場所でも順番持ち回りで花道の警備みたいなことをしていました。そこに私たちがカメラを抱えて土俵を撮影する構えに入っていたのです。そのとき、近くにいた北の湖があの大きな体で無言でカメラの前に背を向けて立ちはだかったのでした。通訳もしていたのでそういうところにも立ち会っていた私はいっしゅん、こいつが何をしようとしているのかわかりませんでした。もちろん撮影は相撲協会の許可を取って、花道の撮影場所まで届けてあります。その日だって別に初めての日ではなく、北の湖だってそれまでも何度も本場所を写している私たちの姿を見ていたはず。で、その日はたまたま自分の近くに私たちがやってきたというわけでした。

北の湖は、その背で、わざとカメラを邪魔していたのです。アメリカ人のカメラマン(女性)も相手が何をやっているのか理解できず、邪魔だというのも日本式には礼を失するかもしれないと変に心配して(とあとから言っていました)右にずれてカメラを構えます。すると北の湖も右にずれてきます。左にずれる、すると北の湖も左に一歩。困っている彼女の顔が見えます。

私はとうとうたまらずに「北の湖さん、撮影してるんですが、よろしいですか?」と声を掛けました。
すると彼は「何だ? 撮影?」と振り返りました。アメリカ人の制作スタッフの方は見ません。私がもういちど「ドキュメンタリー映画を撮影してるんです」と言うと、彼は「そんな話、聞いてない」と言います。「協会に許可は取ってありますが」と言葉を返すと、「知らん」と言ってまた背を向けました。

知らないはずはないのです。それまで協会事務所でも顔を見ていますし、なにせこちらはアメリカ人。カメラやマイクを抱えた外人の姿など、両国の国技館には私たち以外にはいないし、ほかの理事へのインタビューや相撲学校の取材でもう何日も両国に通っていました。北の湖は、ただ、自分へ取材がない,挨拶がないのが面白くなかったのでしょう。それもガキだが、それでそんな嫌がらせをして憂さを晴らそうとしているのも呆れるガキです。そうわかったときに、なんとまあ、相撲協会というのはダメなやつばかりで作られているのだと思ったものでした。はっきりいって北の湖だけではなかったですからね、取材対応のできていないのは。協会の職員までもが同じ体質。相撲の外の世界のことが何も見えてない。協会の内部の論理だけで生きていられると思っている。というかもっと簡単なこととして、一個の大人としてまともに話せるやつがほとんどいないのです。おまけにカネにものすごく汚い。よっぽど困ってたんでしょうかね。

で、さきほどの花道での顛末は、私がやや声を強めて「協会の許可があなたに届いていないということですね」と念を押したら、「いや、知ってるよ」と急にニタニタ顔になって脇に寄って終わり、というものでした。おいおい、これって50になりなんとする男(当時)のやることか?

ああ、こいつはダメだと思ってたら、その何年か後に理事長になった。

で、こないだの朝青龍です。

朝青龍も朝青龍ですが、北の湖が理事長をやっているんだから、あの協会決定の懲罰も公正なものというより子供っぽい報復とか嫌がらせとかいじめとかいう要素があるんだろうなあというのが私の印象でした。くだらなくて、コメントすらバカ臭い。国技とかいってるが、そんなもんです。

そして今回のこの「記者証」問題。

「評論家に取材証は出せない」って、どういう論理でしょう。記者だって評論します。コメントを求められれば評論です。嫌がらせでしょう、これ。同じなんですよ。

また、「出演番組でほかの出演者の批判的なコメントに、杉山氏がうなずいて同意した。協会批判だ」とした点については、何をか言わんやです。自分のことをなんだと思ってるんだ。フセインか、金正日か? 協会批判をした記者は取材証を没収されるということなのでしょうか。「杉山氏が意見を述べようとすると「もう、この件は終わりです」と論争を避けるような態度を取ったという」のは、いったい、どう片を付けたということなのでしょうか? これも私たちに「いや、知ってるよ」と急に掌を返したように対応を変えて、それでなかったことにしたのと、まったく、呆れるほど同じパタンです。で、協会批判は記者証没収の要件なのかどうなのか、東京相撲記者クラブはこの白黒をはっきりさせるべきですわね。

一事が万事。北の湖という下司のアタマの中は、そういう短絡でごちゃごちゃです。朝青龍問題でもけっきょく一度もまともに言葉を発して説明していない。説明できないのでしょう。何度も言うようですが、なにせ嫌がらせといじめが動機なのですから。

そういうことですので、相撲協会のことなどまともに考えるのもバカらしい。だいたい税金もろくに払わないような連中ですよ。7年前の経験からいうと、まともな人も多くいましたが、そういう人たちはほとんど協会では傍流でしたね。惨憺たるものです。

朝青龍の件はどっちもどっちですからどうでもよかったが、今回の杉山さんの件は、ことは言論の自由の問題なのです。

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Comments

北の湖ってやつはやっぱり本当にだめなやつなんですね。
力士リンチ事件での対応にも本当に腹が立ちますし、セクハラ事件まで起こしているのに知らぬ存ぜぬ。
問題が起こっても何も対応できない無能力さが大相撲の衰退の一因でもあるのではないでしょうか。
豊山の時津風理事長は本当に頭もよくて弁も立派な人だったのに、北の湖が理事長になってからはあまりにひどい事件が多く、相撲取りがただの馬鹿みたいに見えます。

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