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正義の顔したサディズム

亀田だの赤福だのと、なにやらうんざりするニュースが日本から流れてきます。いや、わたしがうんざりしているのは亀田、赤福そのものだけではなくて、むしろその取り上げられ方です。

東京新聞の13日付の一面コラム「筆洗」に「たかだか十八歳の“悪ガキ”が」というふうに綴った、なかなか当を得た文章が載っていました。

わたしも「たかだか18歳の悪ガキ」を主語にすれば、その強がりと敗北とを、こうもマジに怒ったり快哉を叫んだり、むしろふだんはボクシングなんか見ないような人までがまるで百年来のボクシングファンであったかのように「世界戦への冒涜だ」「日本の恥だ」と憤ってみせるのは、さて、いかがなものかと思っちゃう部分があるのです。(「筆洗」は新聞社の顔としてそういうふうにあからさまに過激には論は飛ばしませんが)。

もちろん亀田一家の言動は目に余ります。放送というか後援・プロモーターみたいなTBSも調子に乗り過ぎだ。でもそれにカッカすればするほど視聴率は上がり一家もテレビ局もしてやったりなのでしょう。時代劇じゃないけれど、この一家のことを見るにつけいつも、捨て置け、捨て置けというセリフが口をついて出てしまいます。

つい2か月ほど前には同じようなことが朝青龍について起きていました。これも「国技」を汚した、「横綱」の面汚しだ、というニュアンスでしたが、そりゃ朝青龍もなってないが、しかしそんなに大上段に怒ってみせることなのか。それはもうここに書きましたね。

要約すれば相撲協会なんて、組織としては「なんぼのもんじゃい」ということ。記したように元NHK相撲アナウンサーで現・相撲ジャーナリストの杉山さんの取材証取り上げ問題なんか、むしろそっちのほうが大問題だと思うのですが、しかしこれに関しては「街の声」はどなたも怒ってくれてませんでしたわ。

そして赤福です。

そりゃ「毎日その日の作りたて」と偽ったのは赤福は悪い。でも、問題はそれだけで、ならこれは雪印牛乳や不二家や白い恋人やミートホープとかの不祥事とは本質的に違う話ではないか。

後者はみんな原材料にまかり間違えば腐ってたようなもんを使って出荷していたのです。でも赤福は急速冷凍して加熱解凍したものを「作りたて」と称して出荷していたのが問題。冷凍ならべつに肉や魚でもやってるし、冷凍マグロを生マグロとやったら値段も違ってカネ返せとなるけれど赤福程度なら返ってきても数十円でしょうか。ですんで、これも「おいおいセコいなあ、赤福」という程度のことで、「裏切られた思い」とか「お前も偽装か」とかいう「街の声」を聞くと、なんか違うかなあと思えてしまうんですわ。ま、わたしは赤福なんぞ年に一度食べればいいくらいで、それもべつにそんなに幸せになるほどうまいってもんでもないと思ってるんで、そもそもそういう「街の人」みたいな思い入れがないからそう思うのかもしれませんが。

友人の一人はでも、毎回デパートの物産展で赤福を買うくらいのファン(?)というか親御さんが好きなんで買ってあげるんですって。で、でも「その日に作って空輸するので」という理由で赤福だけ商品の入荷が遅れるんだわね。で、整理券なんか持たされる。

彼女はこう書いてます。
「9時半に行って整理券をもらった私としては腹は立っています。随分余計な勿体をつけやがったな、という心境です。」

これはわかりますね。はは。こういう個人的な思いはどんどん伝えるべきだ。

でも、今回長々とこれらを例示したのは、いずれもそういう「個人」の思いとは毛色の違うように見える、つまりこれら「街の声」の後ろに見え隠れする「正義」のガチムチさ加減です(用語違う?)。肩を怒らせた「正しさ」の嫌らしさ、っていってもよいか。しかもそういうのに限って「日本」だ「国技」だ「伝統」だとやたら話が大きい。怒ってる人自身が権威を体現しているみたいです。

悪者を懲らしめることは必要でしょう。けれどいつの間にか懲らしめること自体が快感になってはいないか。叩き、石打つことを楽しんでいないか? それはサディズムです。イジメやネット上の「マツリ」と同じです。そんな激発的な“正義”の振りかざしが、このところの日本社会に横行しているように見えてなりません。

東京新聞の筆洗子は亀田の件に関して「ちょっと気掛かりなのは、正義役を振られた内藤王者が「“国民”の期待に応えられました」と、コメントしてみせたこと。ヒールを立てて熱狂しやすいこの国で、小泉煽動(せんどう)政治の怖さを体験したばかりだから、なおのことだ。自分が倒したタイの前チャンピオンとの実力比較より、12回保った少年の潜在能力と将来性をもっと称(たた)えてやれば、さらにかっこよかった。斜陽のボクシング業界のためにもなる」と書いてありました。

はたと膝を打つ大人の書き物でした。
「負けたんだから公約どおりに切腹や」なんて言ってるひとたちがとてもカメディに見えます(造語)。


【追記】
*赤福、売れ残りを再利用 店頭から回収、原材料に

って見出しが19日になって踊っております。
んにゃろ、赤福め!

ま、信じてたわけじゃないけどね。そんな縁などないですから。
しかしこの事実が明らかになったいまこそ初めて「けしからん」と怒りましょう。
んなもん食わすな、あほ!
わしだって食っちまったわ!

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