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ゲイのペンギンのカップルの絵本

次のような文章を、3年前に、いつか書くかもしれない小説かなんかの挿話として書き置いたことがあります(ってか、ずいぶんと小説、書こうという気が起きてないなあ)。その絵本を読んだいつかの幼稚園児が、いずれ時がたって次のように気づくことを願って。

 同性愛のひとのカップルをこの目で初めて見たとき、ぼくはなぜかペンギンのカップルの姿を連想をした。で、それからも彼らに会うたびにずっと二羽のペンギンの姿が頭に浮かんだ。なぜだったのか、それからしばらくしてからわかった。ずっとずっとまえ、幼稚園のときに見た絵本のせいだ。そこにはオス同士のペンギンのカップルが仲良く二羽で暮らして、捨てられた卵まで孵したっていう物語が描かれていた。

 そう思い出したとき、同性愛のひとのカップルを見たのは彼らが最初ではなかったんだと気づいた。あの幼稚園の園長先生と若先生、ナギ先生とかいったっけ、あの2人も、カップルだったんじゃなかったのかって。

 そのとき、ぼくの頭の中でなんだかいっせいに世界の見え方が変わった。吹雪の中でぴったり身を寄せて立ち尽くす、目に見えない牡ペンギンや牝ペンギンのカップルが、あちこちにいっせいに見えだしたような気がしたんだ。

そのエピソードはたしか、アメリカで次のような絵本が出版されたのに触発されて書いたもんだったんですね。
tango_USA.jpg
その本は翌年2006年に、スペイン語にも翻訳された。
tango_spanish.jpg
それがいま、日本語にもなりました。

tango.jpg

この物語の基になってるのはじつは実話なんですね。あのころ、ニューヨークではセントラルパークの動物園やコニーアイランドの水族館でオス同士のペンギンカップルが大きなニュースになりました。まあ、自然界には、とくに鳥類には同性同士のカップルがよく見られているんですが(同性愛は反自然というテーゼはすでに科学的には破綻してるんです)、そのセントラルパークのペンギンカップル、ロイとシロが、卵によく似た石を何日も温めるので、見かねた飼育係が別に産み落とされて親ペンギンに捨てられてしまった卵を彼らの巣に入れたところ、ひな娘のタンゴが生まれたんです。「and Tango makes three」はつまり、It takes two to tango (タンゴを踊るには2人が必要)というフレーズがあるんだけど、そのタンゴを踊ったら3人になっちゃった、っていう意味なんですよね。ちょっといい話。

翻訳したのは去年の参院選に民主党から立候補した前大阪府議、尾辻かな子さんら。
出版社はポット出版。

アマゾンでも買えるよ。

http://www.amazon.co.jp/タンタンタンゴはパパふたり-ジャスティン-リチャードソン/dp/478080115X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1208797882&sr=8-1

また、東京・大阪で出版記念パーティーも予定されているようです。

◇【東京開催】━━━━━━━━━━━━━━
日時:2008年4月27日(日)17:00~19:00
会場:九州男(くすお)
   新宿区新宿2-17-1サンフラワービル3F  
   電話03-3354-5050
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇【大阪開催】━━━━━━━━━━━━━━
日時:2008年5月11日(日)15:00~17:00
会場:Village(ビレッジ)
   大阪市北区神山町14-3アド神山2F
電話 06-6365-1151
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

会費:3,000円(絵本+1ドリンクつき)
主催:尾辻かな子とレインボーネットワーク

翻訳の尾辻かな子、前田和男両氏の挨拶の他、ゲストを交えてのトークショーも予定しているらしいです。時間と興味があったらどうぞ。

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Comments

米図書館への苦情、トップはペンギンの絵本:
http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN200805110016.html

残念な記事ですね。

記事中に「「同性愛を容認する姿勢を、幼い子どもに植え付けるべきではない」というのが、反対派の言い分だ。」とあります。

私には「それは間違っている!」と言い返せない気持ちが正直ありますが、「奨励」しているわけでもなし、「容認」が悪いこととは思えません。

「人はそれぞれでどれもが素晴らしい」ってことについて親子で話し合えるいい教材にもなるような気がするんですけどね。

とはいえ、多様性なんてもの説明するの面倒くさいか。
というより、親が認めてないものを子どもに説明できませんよね(笑)

「親が認めてないものを子どもに説明できませんよね(笑)」なんて上から目線で書いてしまいました。
私自身が幼い子どもたちにそんなことうまく説明できないだろうに。

それでもこの本は、ひとりでも多くの幼い子どもに読んでもらえるように図書館に置いて欲しいなと思います。
ヘテロに育った「かつての幼稚園児」が「気づ」けるように。
そして、ある日自分がゲイだと自覚した子が、「これはあの本にあったアレだ」と思い出し、不要な罪悪や絶望など感じないように。

もっとも今の子にはインターネットがあるから、ちょっと調べりゃ自分が異端でもなんでもないことがあっさりわかっちって783640(@リーブ21)かもしれませんけどね。

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