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宿命としてのバブル

リーマン・ブラザーズの破綻から始まった先週から、いろいろとコメントを求められて大変でした。

世界的な金融・証券の統合・再編が始まったと見るべきでしょうね、なんてことを話してきましたが、おおむねその通りに進んでいるようです。ちょうど10年前にソロモン・バーニーがシティバンクと合併したんですが、これはまさに独立系の証券会社の存在価値が問われる事態になった先駆けだった。

いま現在、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーだけ独立系の証券会社なのですが、サブプライムでキャッシュフローの問題が出てきて、それで証券と金融が結びついてきているわけです。どうなるかと思ってたらこの1週間でもうほかの金融・銀行とくっつく、あるいは銀行になっちゃう、という動きが出ています。

と、エラそうなことを書いてるんですが、じつはわたし、経済のことがホントのところ、よくわからんのです。

どうしてモノを作ったり採ったりするという最も根幹で人間の命を支えている人たちが低収入にあえぎ、マケイン陣営に参加したヒューレット・パッカード(HP)の前CEOが4500万ドル(50億円弱)もの退職金をもらえるのかがよくわからん。

ちなみに、マケインはリーマン破綻に関するニュース番組出演で、ウォールストリートのこの苦難の原因の一端はCEOたちの強欲さだって非難したのに、このカーリー・フィオーナの4500万ドルに関しては「詳しくは知らないが」と前置きしつつ、「フィオーナはそれを受け取るのにふさわしい。なぜなら、彼女はよいCEOだから」って答えています。うーむ、このひと、だいじょうぶかいな? HPは2万人もレイオフしてるんだよ。そんでどうして4500万ドル払えるの? わからん。

50億円って、21歳から働いたとして70歳まで毎年1億円稼ぎつづけたっていう金額です。
まずもってそんなこと、人間に可能なんでしょうか?
あるいはそれを受け取るにふさわしい人間の価値って、どんな価値なんでしょう?

バブルって言いますが、価値のある株券が一夜にしてどうして紙切れ同然になってしまうのかもよくわかりません。いや、もともとは一枚の紙切れでしかなかったものが、どうして見る見るうちに巨額にふくれあがる価値を持つようになるのか、それがわからないと言ったほうが適当かもしれません。

リーマン・ブラザーズが破綻してどこがどう影響を受けるのか。これも複雑に絡み合って今ひとつイメージできない。つまりこれって風が吹けば桶屋が儲かる式の(この場合は桶屋がつぶれるってな式の)話とどう違うのかもよくわからない。AIGが救済され、リーマンが救済されなかったのもきっと風が吹いてつぶれる桶屋の数が違っていたからだったんでしょう。しかしリーマンは救済しなかったのに7月のベアスターンズはなぜ救済支援したのか、今度はそれがわからない。これは「場当たり」っていうのとどう違うのかわからない。わかるひと、います?

AIGっていうのは保険会社だけあって、じつはこの10年ほど世界中の企業間の投資のリスクを保証する“保険”ビジネスを続けていました。世界がつながっているのは、インターネット以上にこうした損の回避のもたれ合いだったのです。

で、保険が利いていると思って世界中の企業はどんどんカネを出し合ってきた。そうこうしているうちにそのカネの出し合いを「損しないように」保険していたAIGがつぶれそうになる。となると、こけるのはもう親ガメ子ガメ程度では済まなくなる、ってのはわかる。

だからブッシュ政権はAIGを救済したのだ、といわれます。しかし7千億ドル(75兆円)という米政府の不良債権買い取り計画がどうして可能なのか、それがよくわからない。

75兆円というのは日本の国家予算にも迫る金額。アメリカの納税者1人当たり40万円も金を出すってことです。その中には当然わたしも入っています(ってか、これ以上払わないようにいますぐ帰国して逃げちゃえばいいんだけどね)。ブッシュ、どうせ任期が12月までってことでやけくそになってこれだけの勇気を奮えたわけじゃないんでしょうね。ちゃんと根拠と責任をもっての決断だとよいのですが、なんかドタバタした緊急出動めいてみえるんですわ。あのポールソン財務長官ってのも、話してるの聞いてるとなんだか軽いんだよねえ、ノリが。

そういうわけだかどうだか、その財政出動を好感してNY市場がどんと戻ったのが先週末でしたが、と思ったらリーマンショック1週間の月曜22日にはまた327.75ドルも値を下げました。こういうのってどういう論理なのか、というかどういう根拠に基づいた動きなのか、その根拠の証明ができないのでなおさらわからないのです。

ただし、今回を含めこれまでの経験からうっすらとわかったこともあります。それは、証券経済はかならずバブルに陥るということ。実体経済から乖離して、どんどんカネがカネを産み記号が自己増殖してゆくのです。そこにモノの裏打ちはない。中身は空洞なのです。あのホリエモンのライブドアが株を小口に分けてどんどん高値にしてったのはまさにこれですもん。

いかにサブプライム問題がこうして大きな傷跡を刻んだとしても、けれどこの証券経済っていう流れはぜったいに元に戻ったりはしません。ならばそのとき、政府はそうした経済になんらかの規制を持ち出すのかどうか。

こうしてこの件はいま、共和党vs民主党、つまり小さな政府vs大きな政府という、今回のマケインvsオバマの大統領選挙の最大のテーマになったのです。

ってかね、オバマもマケインも、そう経済に強くはないでしょ。
さっきの元HPのフィオーナさん、マケインもペイリンも主要企業の経営者としては採用されないだろうってなコメントをして最近、表に出てこなくなったんですよ。ま、付け加えてオバマもバイデンもダメだって言ってはいるんですが。

今日のワシントン・ポスト紙によると、毎週記者会見をすると約束していたマケインは現在、40日にわたってその記者会見を回避しつづけているらしい。ボロを出さないようにしてるとしか思えませんな。登場の遅かったサラ・ペイリンにしても25日間、記者会見してないんだそうです。

まずいよなあ、それって。

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