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now he sings, now he sobs

こういう写真を見せられるとげんなりします。

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これは、カリフォルニアで同性婚を禁止する「プロポジション8(提案8号)」に対し、住民投票が賛成多数に傾いて快哉を叫ぶ人たちです。

オバマがアメリカの次期大統領に選ばれたとき、この国の黒人たちの多くが涙していました。黒人といってもみんながみんな同じ境遇にあるわけでもなく、それぞれに生活信条も態度も性格も思想も違うでしょうからいっしょくたに「黒人」という枠をはめることはできません。けれどこの夜、黒人たちは「黒人」だった。彼らに共通する「肌の色の歴史」を共有していた。それはぬぐい去れぬなにものかとして彼らのどこかにいまもあるのでしょう。その「負」が解放されて、彼らは涙したのです。

同じその日に、その制約を、その強制された「負」を、同性愛者たちはふたたび突きつけられました。当選したオバマが「黒人のアメリカもアジア系のアメリカも、ゲイのアメリカもストレートのアメリカもない。あるのはただユナイテッド(1つにまとまった)ステーツ・オブ・アメリカだ」と勝利宣言したと同じその日に、ストレートのアメリカがゲイのアメリカを否定したのです。

カリフォルニアではすでにこの4カ月半で1万8千組の同性カップルが結婚しています。彼ら/彼女たちの生活を、強奪する偏狭と非道とを、寛容と慈愛を説く宗教者たちが行いました。いまロサンゼルスでは、それを主導したモルモン教会に抗議のデモが続いています。モルモン教会は警官が警護する事態になっている。

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サンフランシスコでは市庁舎の前で多くのゲイたちがキャンドルを持って集まっています。まるであの、暗殺されたハーヴィー・ミルクのあの時のように。もう、ひとのよいゲイであることはやめにしたい、と。

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カリフォルニア各地で、いま抗議行動の呼びかけが飛び交っています。

同性婚禁止のこのニュースを聞いて、友人の1人が言っていました。
「悲しみ、ってきっと、大きな力になるんだね。その力が何かを変えて行くことを祈ろう。」

**

この州民投票(同性婚禁止提案)に反対運動を繰り広げていた「No on Prop 8」からカリフォルニアの友人に届いた手紙を紹介します。

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Dear Colin,
親愛なるコリンへ

We had hoped never to have to write this email.
このメールを書くなんてことがなければよいと願っていました。

Sadly, fueled by misinformation, distortions and lies, millions of voters went to the polls yesterday and said YES to bigotry, YES to discrimination, YES to second-class status for same-sex couples.
悲しいことに、偽情報と歪曲と嘘によって、数百万人の投票者が昨日、投票所に行ってこの偏見に「YES」を投じました。差別に「YES」と、同性カップルを第二級市民にすることに「YES」と投じたのです。

And while the election was close, and millions of votes still remain uncounted, it has become apparent that we lost.
開票の結果は接戦でいまだ数百万の投票が数えられていなかったながらも、だんだんと私たちの敗北は明らかになってきました。

There is no question this defeat is hard.
この敗北がつらいものであることに疑いはありません。

Thousands of people have poured their talents, their time, their resources and their hearts into this struggle for freedom and this fight to have their relationships treated equally. Much has been sacrificed in this struggle.
数千もの人々が自由のためのこの苦闘に、自分たちの関係が平等に扱われるためのこの戦いに、その才能と持てる時間と持てる資金とその心とを注ぎ込んでくれました。

While we knew the odds for success were not with us, we believed Californians could be the first in the nation to defeat the injustice of discriminatory measures like Proposition 8.
たとえいま勝算は私たちにないと知ってはいても、私たちは、カリフォルニア州民がこの国で最初にプロポジション8のような差別的な措置の不正を打ち砕くはずだと信じています。

And while victory is not ours this day, we know that because of the work done here, freedom, fairness and equality will be ours someday. Just look at how far we have come in a few decades.
たとえ今日勝利は私たちのものではないにしても、私たちは、ここでなされた私たちの努力のゆえに、自由と公正と平等がいつか私たちのものになるだろうと知っています。この数十年で私たちがどこまで来たか、それを見るだけで。

Up until 1974 same-sex intimacy was a crime in California. There wasn't a single law recognizing the relationships of same-sex couples until 1984 -- passed by the Berkeley School District. San Francisco did not pass domestic-partner protections until 1990; the state of California followed in 2005. And in 2000, Proposition 22 passed with a 23% majority.
1974年まで、同性間で親愛の情を示すことはカリフォルニアでは犯罪でした。同性間カップルの関係を認知した法律は1984年まで、バークリー学校区で可決されるまで、ただの1つもありませんでした。サンフランシスコがドメスティックパートナーの保護規定を可決したのは1990年のことでした。カリフォルニア州がそれに続いたのは2005年のことです。それに2000年には、プロポジション22は23%ポイントの差をつけて可決されていました【訳注:今回のプロップ8と同様に同性婚禁止を謳った州民投票提案。当時は61.5%対38.5%で可決】。

Today, we fought to retain our right to marry and millions of Californians stood with us. Over the course of this campaign everyday Californians and their friends, neighbors and families built a civil rights campaign unequalled in California history.
今日、私たちは私たちの結婚の権利を保持するために戦い、その私たちに数百万のカリフォルニア州民が加勢してくれました。毎日このキャンペーンを続ける中、カリフォルニア州民とその友人たち隣人たちそしてその家族たちは、カリフォルニア史上比類のない公民権運動を形作っていきました。

You raised more money than anyone believed possible for an LGBT civil rights campaign.
あなたたちはLGBTの公民権運動でだれひとり可能だとは思わなかったような多額の資金を集めてくれたました。

You reached out to family and friends in record numbers -- helping hundreds of thousands of Californians understand what the LGBT civil rights struggle is really about.
あなたたちはこれまでにない数の家族や友人たちにリーチアウトしてくれました──そのことで数十万人ものカリフォルニア州民がLGBTの人権というものがほんとうはどういうものか、それを理解する助けにできたのです。

You built the largest grassroots and volunteer network that has ever been built -- a coalition that will continue to fight until all people are equal.
あなたたちはこれまでで最大の草の根ボランティアのネットワークを作り上げてくれました──それは、すべての人間が平等になるまで戦い続ける共同体です。

And you made the case to the people of California and to the rest of the world that discrimination -- in any form -- is unfair and wrong.
そしてあなたたちが、カリフォルニアの人たちに、そして世界中の人たちに、差別はいかなる形でも不正で間違いだと教えてくれたのです。

We are humbled by the courage, dignity and commitment displayed by all who fought this historic battle.
この歴史的な戦いを戦ってくれたすべての人々の勇気と誇りと献身とに身が引き締まる思いです。

Victory was not ours today. But the struggle for equality is not over.
勝利は今日は私たちのものではありませんでした。しかし平等のための戦いは終わっていません。

Because of the struggle fought here in California -- fought so incredibly well by the people in this state who love freedom and justice -- our fight for full civil rights will continue.
ここカリフォルニアで戦われたこの苦労ゆえに、自由と正義を愛するこの州の人々によって信じられないほど果敢に戦われたこの苦闘ゆえに、完全な人権を求める私たちの戦いは続くのです。

Activist and writer Anne Lamott writes, "Hope begins in the dark, the stubborn hope that if you just show up and try to do the right thing, the dawn will come. You wait and watch and work: you don't give up."
活動家で作家のアン・ラモットが次の一節を書いています。「希望は闇の中で始まる。ただ姿を見せて正しいことをしようとすれば、それだけで夜明けは来る、と思う揺るぎない希望。だから待って、見て、頑張って。諦めてはいけない」

We stand together, knowing... our dawn will come.
私たちはともにいます。私たちの夜明けはやってくると知っています。


Jacobs-Delores_signature.jpg
Dr. Delores A. Jacobs
CEO
Center Advocacy Project

Jean_Lorri_signature.jpg
Lorri L. Jean
CEO
L.A. Gay & Lesbian Center

Kendell_Kate_signature.jpg
Kate Kendell
Executive Director
National Center for Lesbian Rights

GK_signature_gd.gif
Geoff Kors
Executive Director
Equality California

**

わたしからも引用を1つ。
これは、あの『Queer as Folk』でデビーが言っていたことです。

Mourn Loss's Because There's Many
...Celebrate Victory Because There's Few.

喪われたものを悼め、なぜならそれは数多いから
しかし、勝利は祝え、なぜならそれは数少ないから

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Comments

北丸さんこれは同性婚は認めないが同性愛は認めるという事が前提にあるのでしょうか?それとも同性愛そのものを認めないということなのでしょうか?どちらの事でしょうか?教えて下さい。

これは、「同性結婚を認めない」ということです。その中にはもちろん同性愛自体を認めないという人も含まれているでしょうが、その数字は(いま出先なので手元にありませんが)かなりと少なくなっているはずです。

この提案8号は、結婚という言葉を使わせない、ということで、もちろんカリフォルニアにはドメスティックパートナーシップ制度はあります。それで充分じゃないか、という人も多いようです。

それに対して、同性愛者たちは、真の平等のためには結婚という選択肢だって与えられて然るべき、という立場なのです。もちろん、同性愛者の中には敬虔な宗教者もいますし、そういう人たちは神に祝福されたいとも思うわけで、結婚は神の名において行われますからね。

そういう宗教的な意味合いのほかに、政治的な意味ももちろんあります。大統領になれなくても黒人たちは何一つ不自由してないじゃないか、というのと似ていますよね。

北丸さん早速説明頂きましてありがとうございました。でもまたわからなくなりました。同性愛を否定しないのであればなぜ「結婚」という言葉は使わせないのですか?冒頭の写真のように同性婚が認められないとなると、大統領選でもないのに腕をつき上げて喜ぶほどの歓喜の雰囲気になるのはなぜですか?すみませんまた教えて下さい。でも北丸さんのお手すきの時で結構ですよ。

初めてこちらにコメントします mixiでは友人の友人ということで時々ROMしています


同性婚についての事情で疑問があるのですが 北丸さんならわかるのではないかと・・

同性カップルの権利を保障する法律が もし結婚と同等の内容になったとしても 結婚を求める方々がいるのは やはり神に認められ祝福されたいという気持ちがあるのはキリスト教徒だからでしょうか?

とすると 日本でいう結婚は 神の祝福になんの効力も必要もないから 法律上宗教色がない キリスト教国からみれば パートナーシップ制に近い気がします どうなんでしょう?  

提案8号で大喜びしている連中の顔は醜いです 「これで日陰もののままだ ザマミロ」とでも言ってるのでしょうか 

同性婚について調べていたらこんなお言葉見つけました

スペインの同性婚法成立にあたってサパテロ首相の演説より
「これは、法律用語でできた無味乾燥な一節を単に法典に加えた、という話ではない。言葉の上では小さな変化かもしれないが、何千もの市民の生活にかかわる計り知れない変化をもたらすものだ。私たちは、遠くにいるよく知らない人たちのために法律を制定しているのではない。私たちの隣人や、同僚や、友人や、親族が幸福になる機会を拡大しようとしているのだ 」 

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