おだつ政治家
バラク・オバマの希望と展望と緊張感に溢れた演説に慣れてしまったせいか、日本の首相である麻生太郎の話し振りを聞いているとなんだかグッタリします。「(医者は)社会的常識がかなり欠落している人が多い。とにかくものすごく価値観が違う」という例の発言をあげつらっているわけじゃないんですがね。
「ものすごく価値観が違う」のは(敢えてカテゴライズすれば)医者に限らず高級レストラン通いの麻生さんを筆頭に政治家も似たり寄ったりで、過去、何人かの政治家にインタビューした際もときに開いた口が塞がらなかったことがありましたし、よく言うわ、という感じ。
それよりこないだのワシントンでのG20金融サミットの麻生の記者会見。
英語の話せる日本の政治家というのは、英語になると日本語よりも上機嫌で受け答えする傾向があるようで、私の知るかぎり例外は故・宮澤喜一だけ。宮沢喜一は英語になると逆により慎重かつ的確に受け答えして浮ついたところがなかった。でもこないだの麻生さん、外国人記者の質問にはニコニコと妙にうれしそうで、しかも「通訳が精確に伝えてくれるといいんですが」と、それが気の利いたコメントかのように2回も付け加えた。2回目はなんだかへんな英語も添えて(distort という結構な単語と、okay? というくだけた口語とがなんともチグハグでね)。ダシに使われたプロの通訳さんもお気の毒というかなんというか。
麻生は景気対策第1と言いながら第2次補正予算を出さないとか、解散先送りで延命ばかりだとか、まあ、そういう難しい話はさておき、私にはどうもこの人の性格がよくわからんのですわ。北海道弁で「おだつ」という方言(動詞)があるんですが、麻生太郎を見てるといつも「何ひとりでおだってるんだろう」と思ってしまうんです。
「おだつ」とは「調子に乗る」とか「はしゃぐ」とか、特に子供が大人のウケをねらって必要以上に目立とうとふざける、みたいな意味です。
68歳の政治家を捕まえて「子供みたい」というのもナンだけど、この人、ほんとにおだった言動が目立つ。秋葉原でオタク相手におだてるのは人気取りが宿命の政治家のパフォーマンスとしても、首相ぶら下がり取材の報道陣へのコメントでやたら新聞記者を皮肉ったり挑発したりするのも大人げない。べらんめえ調っぽい言葉遣いだってなんだか下品な方に流れるし、演説はやたらドスが利いてるがさっぱり高邁さが窺えない。ほんとうにいわれてるような上流階級の出とは思えない。ってか、上流階級ってったってみんな明治維新からの政治成金だしなあ。オダツのも宜なるかな。
あの総額2兆円の定額給付金構想にしても私には竹下内閣時の全国市区町村1億円ばらまきふるさと創世資金みたいな愚策に思えて仕方ないんです。これだってどうも熟慮というよりおだった結果の思いつきなんじゃないのか。ホント、自民党はいつからこんな子供じみた政党に成り果てたのか。民主党は、あれ、反対すべきです。
あ〜あ、と思ってテレビをつけたら、TVジャパンでやっている数カ月遅れの「笑点」では、アンジャッシュっていうなんだか知らん若手のコントのコンビが、「わたしカツラなのだしかもゲイよ」だなんてバカみたいなネタで5分間もいたずらに持ち時間をもたしてます。カツラの人間をからかって面白がるのは小学生くらいでしょう。そんでいまもまだ「ゲイ」ネタです。「若手」であることに、なんの意味があるのか。若手というのは、時代の新しさを背景にしているはずではないのか。なのにこれじゃただのバカじゃないですか。
この首相にしてこのコントあり。
日本はいったい何をしてるんだろー。