世界エイズデー
セックスって、気持ちいいですよね。
あれ、どうして気持ちいいんだろう。
男は射精の快感だっていうけれど、それだけじゃぜったいにない。
なんていうか、ふれあったり、だきあったり、だきしめあったりしているだけで、なんだかからだじゅうに気持ちのいいホルモンがじわじわとしみわたっていくみたいな、そんなじわじわした幸福感につつまれる。
これもじつは生殖のために遺伝子が仕組んだ(あるいは神が仕組んだ?)餌というか罠というかご褒美というか、そういうもんだってことは知ってるんですが、わたしが投げ遣りなときに陥る唯脳論に立脚すれば(ってまあそんなたいそうなもんじゃないが)、最初はそうだったかもしれないが、そのうちに脳がどんどんそれを自分で勝手に発展させて、快感ってものを別の回路でも関知できるように独立して作ってしまったんじゃないかと思うわけです。ちょうど、数字が数学をつくったように。
そうすると、わたしたちが思い込んでいる「性欲」とは、本当にわたしたちが思い込んでいるような「性欲」なのか、という反語が出てくる。そうして次のような仮説を、考えちゃうわけです。
つまりセックスとは、セックスを通じて、じつは人を好きになり たいという(そのほうが生物学的には変態的ではあるのですが)、そういう意志の欲望なのである、と。
まあ、戯れ言はこの辺にして、ていうか、もしそういう意志の欲望だとしたら、セックスは、ちゃんとセイファーなものでもぜんぜん問題はないわけで、というところにつなげたかったわけなんですがね。
で、12月1日は第20回の世界エイズデーでした。1988年に、世界先進国の厚生行政の大臣たちがサミットを開き、HIVの感染拡大を防ごうとこの日を設けたわけです。
でも、HIV/エイズはその後も第三世界へと拡大を続け、現在では世界で3300万人がHIVに感染し、その数は昨年2007年だけで270万人が増えました。この中には、もちろん、わたしたちの知人・友人、あるいはその知人・友人がおそらく含まれています。わたしたちが知らないだけで。あるいは、わたしたち自身かもしれません。
わたしの新聞記者時代の畏友、産經新聞の宮田一雄さんは日本でいち早くこの問題に取り組んだジャーナリストです。彼の飄々たるブログサイトを推薦します。鎌倉に住み始めて、「ビギナーズ鎌倉」というブログを書いていらっしゃいます。
'http://miyatak.iza.ne.jp/blog/
ニューヨークでは、先週のメイシーズ百貨店の感謝祭パレードで、キース・ヘリングのバルーンが登場しました。
キース・ヘリングもエイズ関連の合併症で1990年2月16日、31歳で亡くなりました。生きていれば来年50歳だった。
ダウンタウンのバンクストリートからハドソン川に通じたところにあるハドソンリバー公園では、エイズ・メモリアルのベンチが設置されました。長さ12m強の、黒い御影石のベンチです。遊歩道に沿って少し湾曲しています。御影石には、旧いスカンジナビアの民謡の歌詞が刻まれています。
'I can sail without wind; I can sail without oars. But I cannot part from my friend without tears.'
わたしは風がなくとも舟を出せる。わたしはオールがなくとも舟を出せる。でも、涙がなければ、わたしはわたしの友と別れることができない。
ニューヨークでは1日、エンパイア・ステート・ビルディングが恒例の赤い色に染まりました。