どぜう総理
すでに旧聞ですが海江田さんの演説はホントに下手クソでした。「修羅場をくぐって悔しい思いをした私だからできることがある」って言っておきながらそれが何かはパス。テレビからもはっきり「アガって頭の中真っ白」がわかりました。演説でその人の度量の幾ばくかがわかるのだとしたら、こんな人にはだれも投票したくないというレベルでした。
にしても、ドジョウってのもどうなんでしょうか。野田さんの演説も生い立ちだとか昔の話ばかり。とても日本的というか情緒的というか、この期に及んでコレかよという思いを禁じ得ませんでした。だいたい相田みつを的なもので政治を語るなんて、海外配信した外国人記者たちはどう翻訳したんでしょう。
いや、数多のファンがいらっしゃる相田センセをここで批判する気はありません。個人的に愛好している分には私が口を挟むスジでもありますまい。ただし、このドジョウも輿石さんを取り込むための布石だったとしたらこの人、けっこうやるかもしれませんね。
それでも、今度の所信表明演説はぜひ国際的にも通用するような言葉で語っていただきたい。なぜならいま放射性物質は日本を越えて世界に飛散流出しているのですし、環境破壊に対する国際的な批判にも応えねばならないのですから。それに円高や世界同時不況を避けるための国際協調も訴えなければなりません。そういう世界視点を持たないと政治はすでに立ち行かないのに、日本の政治家にはいまでも世界も聴いているのだと意識した演説があまりに少なすぎます。
各報道メディアで60%前後という高支持率は巷間言われる政権発足のご祝儀相場ではありません。ここには「ノーサイドで行きましょう」という口調に民主党の再建を託した人たち、輿石さんや山岡さんらを内閣に取り込んでの小沢さん支持者たちが含まれます。
その一方で、ご自身や前原さんら松下政経塾の保守路線を歓迎する自民党支持者たち、そして安住さんの財務相就任や元財務官僚の古川さんの入閣による財政再建派(つまりは増税派なんですが)、さらには原発を早く再稼働させてほしい産業界の思惑までが結集した数字です。
もちろん相田みつをの情緒的ファン層もいたでしょうが(しつこい)、本来の民主党支持者たちの大方と、逆にそれを取り壊したい自民党復権派とが一緒になっての数字なのです。それだけ国民の多くが、いまの日本の危機に政治が一丸となって対処してほしいと願っているということです。
もっとも、私は大連立には反対です。だいたい民主党だけでも舵取りができていないのに自公を加えて大連立をやって、そんな複雑な組み合わせを制御できる「頭」が存在しているとはとても思えません。わけがわからなくなって大政翼賛の単純思考に陥るか空中分解するかのどちらかです。
そもそも政権交代と大連立って理屈が正反対。こういうときこそ前に進んで事を処理しなければならないのに、どうも元のサヤに戻ればうまく行くと思ってしまう人が多いんですね。そりゃ「あのころはよかった」的な感慨を持つ人はいるでしょう。しかし官僚が箱ものを作っていればそれで社会が動いていた自民党下の成長時代はとうに終わったのです。
にもかかわらず今回の新政権で手腕を問われているのは野田さんではなく財務省だという揶揄もあります。慣行と現状にしがみつく官僚制度の手強さを、どうにか未来に向けて手なずけてくれれば、ドジョウだって相田みつをだって私は大歓迎なのですが。