スーパーストーム・サンディ
スーパーストームと呼ばれたサンディの被害でマンハッタンは大混乱だと日本のニュースでも大きく報じられていましたが、本当にひどい被災はじつはあまり日本では報道されていないスタッテン島やブルックリンを含むロングアイランドの海岸部、さらにはサンディが上陸で直撃したお隣ニュージャージーの沿岸部でした。こちらのニュースでも報道の中心はまずはマンハッタンだったのですが、いまはほとんどがニュージャージーやスタッテン島の被災に重点が移っています。
スタッテン島をスタート地点とするニューヨーク・マラソンが中止になったのも宜なるかな。日本人の私たちには尋常ではないところにある車やボート、ゴッソリとえぐられたり流されたりしている家並みは3・11を彷彿させて身につまされるものがあります。
あの時の東北もそうでしたが、最も大切なのはまずは必要物資や救援活動の情報でした。なのに停電のためにそれを必要とする人たちにこそ肝心の情報が伝わらない。
でも少なくともマンハッタンではiPhoneなどのスマートフォンを利用して、停電地区でもネット経由で復旧情報をいち早く知ることができていたようです。あちこちで善意の無料充電スポットが出来ていたのは新しい光景でした。日本人同士でも懸命に日本語で地下鉄やバスの運行状況やトンネルや橋の通行止め情報、電気の復旧の見通しなどをツイッターで共有していました。
そんな中、遅ればせながらミッドタウンの日本領事館も29日夜になってツイッターを始め、サンディ関連の「緊急情報」を流すというので大いに期待したのです。
ところがどうでしょう。とんと何もつぶやかない。最初の「緊急情報」は「緊急対策本部を立ち上げ」たという前日の領事館の対応の紹介。その後も具体的情報にはほとんど何も触れずに一次情報の英語のリンク先を紹介するだけ。橋や地下鉄の開通状況や電力復旧状況を流すのも遅いったらありゃしない。
そのツイッターは結局2日時点で終了していて「つぶやき」の数は5日間でたったの計17回。900人以上の人がフォローしているのに、きっとほとんど何の役にも立たなかったと思います。まさかいちいち稟議書を上げて何をつぶやいていいかダメかの上司決済を取っていたんじゃないでしょうね。こういう「お役所仕事」は、責任のある人が自分の責任ですぐに情報発信できるような仕組みにしないと何の役にも立たない。減点主義ではなく、得点主義で運営すべきなのです。それがなかなか出来ないのが日本型組織の、ひいては日本社会の弱点なんでしょうね。
ちなみに日本領事館のツイッターのアカウント名は「JapanCons_NY」。まるで商品評価の「Pros & Cons」の「Cons=ダメなところ」みたいな名前。おまけに「Cons」というのは「ペテン師たち con artists」とか「犯罪者たち convicts」とかいう意味でもあって、さらに動詞だと解釈すれば「日本がニューヨークをペテンに掛ける(con の三人称単数形)」ってな意味にもなってしまって……まったく、これは偽アカウントかと思ってしまうほどのセンスの無さでした。
さてそれでもやっと電気も地下鉄も復旧してきて、マンハッタンはこれで一安心と思っていたらいまさっき友人から電話があって「何言ってんのよ、うちのアパートは大変な孤立状態なのよ!」って……ああ、そういえばあのぶらぶらクレーンがまだ解決していないのでした。
彼女の住む高層アパートは56丁目。まさにあのクレーン宙づりのビル(57丁目)から短い方の1ブロックで、倒れたらビルを直撃するのでビル北側の住民全員が強制避難。撤去作業に4〜6週間かかるといわれるのですが工程の精査で作業は始まってさえいないそうです。おまけに今週半ばにはまた別の嵐がニューヨークを襲うともいわれているではありませんか。
カーネギーホールを含め周辺丸ごと封鎖状態の現場は、下を走る地下鉄も落下直撃の恐れで不通のまま。しかも落下したら地下に埋設のガスとか電気とかのインフラが直撃され、それがすべて基幹の本管であるためにマンハッタン中がブラックアウトする恐れもあるのだそう。「あたしのこと忘れないでよ!」と彼女に怒られたのも、じつにもっともなことです。