失望の選挙
2年前の大統領選の時には「オバマ人気」のことを書いていたのに、この中間選挙でこうなると予想していた人は少ないんじゃないでしょうか? しかしその「オバマ不人気」の原因はというとどうもはっきりしません。
強いて挙げれば医療改革で例の保険サイトが初っ端からひどいバグだらけだったこと。それに保険に関しては今のところ出費だけで、新たに病気になってその保険の恩恵を実感できる人がまだ少ない。かくしてプラス評価が出てこない。
イラク撤退。これは当初は評価されましたが、その空白をねらって隣のシリアからイスラム国が台頭してきた。しかもマンハッタンで斧を持ったイスラム国支持男が警官を襲って重傷を負わせ、カナダでは同じくオタワの国会でイスラム国支持男が銃を乱射して……はてイラク撤退は果たして良かったのかという疑念が大きくなっています。
外交上の疑念はそれ以前から芽生えていてイラクやシリアだけでなくリビアもぐちゃぐちゃ、ウクライナではプーチンの良いようにされたまま。「世界のリーダー」だったアメリカはこれでよいのか、あるいは「このままでは国内でまた本格的なテロが起きるかも」という不安が漂ってさえいるのです。
そこに経済です。失業率や株式市場などの数字上の好転がありながら、景気の良さが一般国民にほとんど実感されていません。つまり格差が広がって、単に上部の富裕層が数字を引っ張っているだけじゃないのか?
でも元を正せばこのすべては前政権の失政のせいでした。心の中で「なんでその責任がぜんぶオレに来るんだ?」とオバマは叫んでいるかもしれません。
大統領選挙は「希望の選挙」と呼ばれます。未来を語り、希望の道筋を示すのです。それに対して中間選挙は「失望の選挙」と呼ばれます。選んだ大統領に対して「こんなはずじゃなかったのに」と思う要素が強く出てくる。
この不人気の原因はオバマの失政というより、むしろ彼が2回の大統領選で示した「希望」の大きさに、現実が付いてきていないことへの「失望」なのではないのか。おまけに中間選挙ではその「失望」のせいかあるいは大統領選で示されるような「明確で大きな争点」の無さのせいか、オバマ旋風の基礎となった若者層、社会的マイノリティ層がそもそも投票に行かないという傾向も影響しました。そして決定的なのが、今回改選分の上院議員は、08年のオバマ旋風でに乗って「勢い」で当選した人たちが多かったということ。旋風なしに当選することはそもそも難しかったのです。
だからといって国民が共和党を支持しているのかというと、茶会派で極端に走る彼らへの信頼は厚くはありません。共和党に穏健派が少なくなったことで民主党にも極端に走る議員が増えて、議会に対する国民の信用は14%しかないのです。
こんな不安な時代に人が求めるのは、実はオバマのような理詰めのリーダーではないのかもしれません。「理」よりも「情」に届いてくる、明るく包容力のある人間なのかもしれません。かといって2年後の選挙で出てくるヒラリーがおおらかな「肝っ玉母さん」になれるかははなはだ心許ないのですが。ただしその選挙で改選される上院議員の多くは10年のお茶会旋風に乗って当選した共和党議員でもあります。それが「ヒラリー政権」の追い風になることは考えられます。
それ以前に、オバマが残る2年をどうやりくりするかが問題です。世界に山積する難問は、彼にレイムダックになるヒマを与えないからです。