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December 15, 2017

告発の行方

アメリカのような「レディー・ファースト」の国でどうしてセクハラが起きるんですかと訊かれます。セクハラは多くの場合パワハラです。それは「性」が「権力」と深く結びつくものだからです。「性」の本質はDNが存続することですが、そのためには脳を持つ多くの生き物でまずはマウンティングが必要です。それは、文字どおり、かつ、比喩的にも、「権力の表現形」なのです。

なので、権力がはびこるところではセクハラも頻発します。個人的な力関係の場合も社会的な権力の場合もあります。男と女、年長と年少、白人と黒人、多数派と少数派──パワーゲームが横行する場所ではパワハラとセクハラ(あるいは性犯罪)は紙一重です。

この騒動の震源地であるハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴィー・ワインスティンや、オスカー俳優ケヴィン・スペイシーへの告発は以前から噂されていました。トランプは大統領になる前はセクハラを自慢してもいました。けれど告発が社会全体の問題になることはほとんどありませんでした。結果、これまではコメディアンのビル・コスビーやFOXニュースのビル・オライリーなど、ああ、1991年、G.W.ブッシュが指名した最高裁判事ののクラレンス・トーマスへのアニタ・ヒルによる告発の例もありましたね、でもいずれも個人的、散発的な事件でしかありませんでした。それがどうして今のような「ムーヴメント」になったのか。

私にはまだその核心的な違いがわかっていません。女性たち、被害者たちの鬱積が飽和点に達していた。そこにワイントンポストやNYタイムズなどの主流メディアが手を差し伸べた。それをツイッターやフェイスブックの「#MeToo」運動が後押した……それはわかっていますが、この「世間」(アメリカやヨーロッパですが)の熱の(空ぶかしのような部分も含めて)発生源の構成がまだわかり切らない。わかっているのは、そこにはとにかく物事を表沙汰にして徹底的に正しく解決しようという実にアメリカ的な意志が働いていることです。ヒステリックな部分もありますが、恐らくそれもどこかふさわしい共感点へたどり着くための一過程なのでしょう。

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日本でもそんなアメリカの性被害告発の動きが報道されています。ところが一方で、TBSのTV報道局ワシントン支局長だった男性のレイプ疑惑が、国会でも取り上げられながらも不可解なうやむやさでやり過ごされ、さっぱり腑に落ちないままです。

同支局での職を求めて彼と接触したジャーナリスト伊藤詩織さんが、就労ビザの件で都内で食事に誘われた際、何を飲まされたのか食事後に気を失い、激しい痛みで目を覚ますとホテルの一室で男性が上に乗っていたというこの件では、(1)男性に逮捕状が出ていましたが執行直前に警視庁から逮捕中止の指示が出たこと、(2)書類送検されたがそれも不起訴で、(3)さらに検察審査会でも不起訴は覆らず、その理由が全く不明なこと。そしてそれらが、その男性が安倍首相と公私ともに昵懇のジャーナリストであることによる捜査当局の上部の「忖度」だという疑い(中止を指示したのも菅官房長官の秘書官だった警視庁刑事部長)に結びついて、なんとも嫌な印象なのです。

性行為があったのは男性も認めているのに、なぜ犯罪性がないとされたのか? 何より逮捕状の執行が直前で中止された事実の理由も政府側は説明を回避しています。言わない理由は「容疑者ではない人物のプライバシーに関わることだから」。

しかし問うているのは「容疑者でない」ようにしたその政府(警察・検察)の行為の説明なのです。アメリカの現在のムーヴメントには「物事を表沙汰にして徹底的に正しく解決しよう」という気概があると書きましたが、日本ではレイプの疑惑そのもの以前の、その有無自体を明らかにする経緯への疑義までもが「表沙汰」にされない。ちなみに、当の刑事部長(現在は統括審議官に昇進)は「2年も前の話がなんで今頃?」と週刊誌に答えています。「(男性が)よくテレビに出てるからという(ことが)あるんじゃないの?」と。

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折しも12月12日はアラバマ州での上院補選でした。ここでも40年前の14歳の少女への性的行為など計8人の女性から告発を受けた共和党のロイ・ムーアの支持者たちが、「なぜ40年前の話が選挙1カ月前になって?」と、その詩織さん問題の元刑事部長と同じことを言っていたのです。性犯罪の倫理性には時効などないし、しかも性被害の告訴告発には、普通と違う時間が流れているのです。

しかしここはなにせアラバマでした。黒人公民権運動のきっかけとなった55年のローザ・パークス事件や、65年の「血の日曜日」事件も起きたとても保守的な土地柄。白人人口も少なくなっているとはいえ70%近く、6割の人が今も定期的に教会に通う、最も信仰に篤いバイブル・ベルトの州の1つ。ムーアも強硬なキリスト教保守派で州最高裁の判事でした。そして親分のトランプと同じように、彼自身も性犯罪疑惑などという事実はないの一点張りの強硬否定。性被害を訴えるウェイトレスたちのダイナーの常連だったのにもかかわらず、その女性たちにはあったこともないと強弁を続けました。
 
案の定、告発そのものをフェイクニュースだと叫ぶ支持者はいるし「ムーアの少女淫行も不道徳だが、民主党の中絶と同性婚容認も同じ不道徳」「しかもムーアは40年前の話だが、民主党の不道徳は現在進行形だ」という"論理"もまかり通って、こんな爆弾スキャンダルが報じられてもこの25年、民主党が勝ったことのない保守牙城では、やはりムーアが最後には逃げ切るかとも見られていました。おまけにあのトランプの懐刀スティーブ・バノンも乗り込んで、民主党候補ダグ・ジョーンズの猛追もせいぜい「善戦」止まりと悲観されていたのです。

それが勝った。

トランプ政権になってからバージニアやニュージャージーの州知事選などで負け続けの共和党でしたが、その2州はまだ都市部で、アラバマのような真っ赤っかの保守州での敗北とはマグニチュードが違います。

バイブル・ベルトとラスト・ベルト──支持率30%を割らないトランプ政権の最後の足場がこの2つでした。アラバマの敗北はその1つ、バイブル・ベルトの地盤が「告発」の地震に歪んだことを意味します。来年の中間選挙を考えると、共和党はこうした告発があった場合に、否定一本で行くというこれまでの戦略を変えねばならないでしょう。とにかくいまアメリカはセクハラや性犯罪に関しては「被害者ファースト」で社会変革が進行中なのです。

December 05, 2017

司法取引の意味するもの

ところで前回のフリン訴追の続きなのですが、彼の起訴罪状が「FBIへの虚偽供述」だけだったことに「ん?」と思った人は少なくなかったでしょう。おまけに一緒に起訴されると言われていた彼の長男の名前もない。虚偽供述は最高禁固5年なのに彼への求刑はたった6カ月。何だ、全然大したことない話じゃないの、と。

実は今回の訴追はそれがミソなのです。

フリンは、トルコ政府の代理人として米国に滞在するエルドアン大統領の政敵をトルコに送還する画策を行なっていたことが疑われていました。これは無届けで外国政府の代理人を務めることを禁じたFARA法(Foreign Agents Registration Act)違反。さらに昨年12月の政権移行時にキスリャク駐米ロシア大使に接触してオバマ政権による経済制裁解除の交渉をしたという容疑もある。これも民間人が政府とは別に外交交渉をすることを禁じたローガン法違反です。それらから下手をすると米国の重要な情報をロシアに与えたスパイ容疑や国家反逆容疑まで発展してもおかしくない。すると本来は禁固十数年から数十年、あるいは終身刑まであったかもしれない重罪容疑者です。それがたった禁固6カ月……。

この大変な減刑は、もちろん司法取引によるものです。裁判の余計な手間を省くために有罪を認め、その代わりに「罪一等を減じる」というのが司法取引なわけですが、今回は罪「一等」どころか二等も三等も減らされています。

これは普通の取引ではありません。裁判の手間云々よりも、フリンを懲罰に処するよりも刑事罰に処するべき重大な人間がいて、その人物を訴追するに足る情報をフリンが捜査当局に渡す代わりに刑を減じるという取引だったということです。そうじゃなきゃこんなに減刑されない。

そして、フリンよりも重大な人物とは誰か? フリンは国家安全保障担当の大統領補佐官でした。大統領補佐官は実は閣僚級(つまり各省の長官と同じ)ランクです。日本の報道ではフリンと一緒にキスリャク大使に接触していたトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーが狙いだ、という解説がなされています。しかしクシュナーは政権内では上級顧問です。これはたとえ「トランプ一家」の人間とはいえ「格下」です。例えば暴力団事案の立件で組長の罪を減じる代わりに情報を取引して、組長代行を挙げようなんてことは起きません。

では誰か? ロシア疑惑ではセッションズ司法長官が関係を疑われているので、この問題では捜査にタッチしないと自ら宣言しています。ならばセッションズか? しかしセッションズはフリンと同格です。同じランクで訴追するなら複数の人間でなければ取引は成立しない。

ではトランプ政権でフリンよりも位が上なのは誰か? それはペンス副大統領とトランプ大統領の2人しかいないのです。つまりモラー特別検察官のチームは、フリンとの司法取引でペンスかトランプ、あるいはその双方を標的にしたということなのです。

これはリチャード・ニクソンの辞任以来の大事件へと発展する可能性があるということです。

フリンがトランプとくっついたのは2015年夏。そして今年2月の辞任以降4月までトランプと接触していました。つまりそのおよそ21カ月間=1年9カ月というトランプの今回の政治経験のほぼすべてを網羅して、フリンは彼のすぐそばにいたのです。そんなフリンが完落ちした。これはトランプにとっては(もし違法なことをしていたのなら)大変な脅威でしょう。

モラーが事情聴取したクシュナーも重要な情報源です。が、捜査チームはクシュナーは家族を裏切らないだろうと踏んだ。だから突破口はクシュナーではなく、フリンだったのでしょう。クシュナーを呼んで話を聞いたのは、フリンが事前に教えてくれたことに関して、つまりはロシアのキスリャク大使との関係において、クシュナーがどう嘘をつくかをテストしたわけです。クシュナーは本丸と一緒に起訴できるから、それは後回しで良い──そんなことが見える今回のフリン訴追なのです。

さて、こりゃまずいと思ったからか、トランプのツイートがまた荒れています。フリンの訴追と有罪答弁を受けて、即「フリンを辞めさせたのは彼がペンスとFBIに嘘をついていたからだ」とツイートしたら、「大統領、それを知っていてその後に(当時のFBI)コミー長官にフリンへの捜査をやめるよう指示したのならば、それは立派な捜査妨害に当たりますよ、とあちこちからツッコミが入りました。そうしたら翌日に慌てて「コミーに捜査中止を指示したことはない」とツイート。それだけでなく、今度はトランプ個人の弁護士が「実は”嘘をついた”と知っていたというあのツイートは私が草稿を書いた。事実関係を間違えた」と名乗り出る始末。

本当に彼が草稿を書いたのか、それとも人身御供の身代わりを指示されたか買って出たか、トランプの一連のあのトチ狂ったツイートに草稿があること自体が疑わしいのですが、何れにしても大統領側の慌てぶりが漏れ見える事態です。

するとトランプの訴追はこの「捜査妨害=司法妨害」が手っ取り早いと受け取られているようで、トランプ大統領の弁護団が4日、今度は面白い論理を繰り出してきました。「大統領はそもそも司法妨害などし得ない」という論理です。つまり、大統領はFBIなどの捜査当局の最高執行官なのであるから、何を「指示」しようがそれは「妨害」ではなく「指揮」だ、というのです。ここまでくると呆れてモノが言えません。

何れにしてもモラー特別検察官チームはトランプ=ペンスを射程に入れました。一方で、FBIの自分のチームから「反トランプ」的なメールを出していた捜査官をクビにするということもしていて、これも昨日ニュースになっていました。このニュースはつまり、「特別検察官チームは大統領への政治的な意見を基に捜査をしているわけではない」というメッセージを世論に向けて表明したわけです。「政治的な思惑ではなく、事実に基づいて捜査している」というさりげないアピールなのです。

これからどうなるか? 捜査の結果が出るまでどれほどの時間がかかるか? それはまだわかりません。大統領は慣例的に「起訴」されたことがないので、何かの罪状が明らかになってもそれで訴追というのではなく、特別検察官が議会へ結果を報告して、次は議会の仕事=弾劾裁判になります。それがいつか、そこまで行くか、それを考えるとトランプ一家は気が気ではないホリデーシーズンからの年越しとなるでしょう。

December 01, 2017

フリン危機

感謝祭(23日)の深夜にニュースが飛び込んできました。ロシア疑惑に関連して2月に辞任した元大統領補佐官マイケル・フリンの弁護士団が、トランプ側の弁護士団に「今後は情報共有を中止する」と通告してきたというのです。これは、逮捕・起訴が近いとされるフリンがこれから、モラー特別検察官チームと司法取引をして捜査協力に転じることを示唆しています。つまり情報共有を続ければ今後は捜査情報を漏らすことになるのでもうできない、という意味です。

フリンは就任前にロシアの経済制裁解除をめぐり駐米ロシア大使と事前接触したことに関連して辞任しました。このフリンと一緒になって動いていたのがトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーや長男ドナルド・トランプJr、そしてペンス副大統領です。もしフリンが知っていることを洗いざらい話したら、政権中枢やトランプ家族を巻き込む強制捜査へと進むかもしれない、とSNS上では今トランプ大嫌い派が期待に浮かれています。

ロシアゲート捜査の大変な火の粉をかわすために、トランプ側にはいま大きく2つの方途があると思われます。

1つは彼が「本当のロシア疑惑」と呼ぶものに別の特別検察官を立て、そちらに目を転じさせることです。これはヒラリー・クリントンが国務長官だった時代に、ロシアへのウラン大量売却契約が結ばれ、その見返りとして巨額の金がロシア側からクリントン財団に寄付された、という疑惑です。ロシアゲートからは自分が関係している恐れがあるために捜査に関与しないことを宣言しているセッションズ司法長官が、これに関しては特別検察官の任命が適切か検討するとコメントしていますが、これは一時的な目くらましにしかならないでしょうし、これはこれ、ロシアゲートはロシアゲートですから、このことで痛み分けにはならないでしょう。だいたい、見え見えの戦略にアメリカの世論が騒がないわけがない。

もう1つは北朝鮮カードです。トランプはアジア歴訪直前で北朝鮮へのツイートの言葉を随分と軟化させていて、これは何かあったかと思ったのですが、それは習近平が親書を持たせた特使を北に送るつもりだとトランプ側に伝えていたからだったと後になってわかりました。けれどその特使は金正恩に面会を拒絶され、思惑は失敗に終わります。するとトランプ政権はすぐに北朝鮮へのテロ支援国家再指定を行いました。

北朝鮮問題はロシア疑惑と何の関係もありません。このテロ支援国家の再指定も実は次に何かあった時、あるいは何も進展のなかった場合の既定路線上のさらなる制裁策でした。けれどこれがロシアゲート捜査の目くらましになることは間違いありません。この国の大統領は支持率が極端に落ち込む時は戦争でそれを解決するのです。あのビル・クリントンさえ、1998年のモニカ・ルインスキー事件で弾劾裁判まで受け、支持率ジリ貧の時にアフガニスタンやスーダンへの爆撃を行ったのです。

そう、戦争の火蓋が切られたらロシア疑惑など吹き飛んでしまいます。戦争をしている大統領は辞めさせにくい、辞めさせられない。

まさかそんなことのために、とは思いますが、この大統領は「まさかそんなこと」を次々とやってのけてきている人です。ただし北朝鮮に対する軍事行動に踏み切るのはそれなりの理由づけが必要。そんな理由を手にするために、トランプが奇妙に意識的にさらなる挑発を続けるかどうか、それを見ていれば彼の次の行動が予測できます。もっとも、現時点では在韓や在日米軍に増派などの大きな動きは起きていませんし、韓国や日本にいるアメリカ人への退避勧告もありませんから、喫緊に大変なことになるというわけではありません。

そんな中で北朝鮮は米国東部時間28日の午後1時過ぎに新型とされるICBMを発射しました。実はちょうど1ヶ月前の10月28日に北は「我々の国家核戦力の建設は既に最終完成目標が全て達成された段階」と表明していました。つまり「もう実験も必要なくなった」という「理由」を作って9月15日からこの2カ月半ほどミサイルも撃っていなかったのです。それが、今週初め27日あたりに北朝鮮軍幹部が「(次回の)7回目の核実験が核武力完成のための最後の実験になる」と語ったということがニュースになっていて、なるほど、テロ支援国家再指定の報復の意味も込めてこの75日ぶりのミサイル(核)実験となったのでしょう。しかしこれも、ではもう表立ったミサイル発射や核爆発実験もとうとう必要なくなって打ち止めなのかということになります。

日本ではこれをいつもどおり北の「挑発行動」と呼んで大騒ぎしているのですが、これを「挑発」と呼ぶには無理があります。いくら金正恩の気質に問題があるとしても、北朝鮮が体制崩壊、国家滅亡につながる米国先制攻撃に踏み切ることは考えられません。つまり繰り返されるミサイル発射実験と核実験は、「我々にはこれだけの武器があるのだから軽々に攻撃するな」という「示威行動」「デモンストレーション」なのです。「挑発」してアメリカが(というかトランプが)それに乗ってしまったら元も子もない。挑発なんかしていないのです。

同時に、北にとってこの「核」は交渉でどうにかできる取引材料でもありません。それを取引なんかして失ったらたちどころに攻め込まれて命がなくなってしまう死活的な最後の「宝刀」なのです。核放棄なんてあり得ない。あるとしたら米朝の平和条約締結しかない。そしてアメリカ側は、核を保有したままの平和条約など、世界の核不拡散体制を崩壊させるものとしてこれもやはり到底受け入れられるものではないのです。

かくして現在、この問題は米朝中、そして日韓も含めて三すくみ、五すくみの状況です。二進も三進も行かない。

そこで今度は、トランプの気質問題が出てきます。国内政治情勢もままならず、国際政治でも英国の極右団体代表代行の反ムスリムツイートをリツイートしたり、何をやってるのか支離滅裂なこの大統領は、こんな北朝鮮の閉塞状況にしびれを切らすのではないか? そしてそこにもしロシアゲートが弾けて、どうしようかと辺りを見回した時にこの「北朝鮮カード」があった場合、この人は北の恐らくはまだ続いているであろう「示威行動」を「米本土に対する明確な脅威」とこじつけてあの9.11以降のアメリカのブッシュ・ドクトリンと呼ばれる「正当防衛的」な(しかしその本当の目的は別のところにある)「予防的先制攻撃」に打って出るのではないか? 

前段で書いた「フリン危機」がロシアゲートから北朝鮮問題に飛び火することは、そうなるとあり得ないことではない。アメリカは、戦争をするとなったら同盟国にだって知らせずに開戦します。北への攻撃は、実際に実行される場合、日本政府へはたった15分前に通告するだけなのです。

そんなトランプ政権を「100%支持する」と繰り返す安倍首相は、本当に開戦となったらわずか数日で数百万人の犠牲者が出るかもしれないという事態に、いったいどういう責任を取れるのでしょうか。

いま開戦を阻止できるのは、11月18日に「大統領が核攻撃を命令しても「違法」な命令ならば拒否する」と発言した米軍核戦略トップのジョン・ハイテン戦略軍司令官(空軍大将)ら、正気の現場の軍人たちだけかもしれません。こんな時、文民統制ではなく軍人統制に頼りたいと願ってしまう倒錯的な異常事態がいまアメリカで続いているのです。