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October 30, 2005

Bouley Upstairs/Ferran Adria del Bulli

2005-10-30
☆☆☆

今夜こそは行くまいと思っていたのに、ともだちのオサムちゃんが誕生日近いの、とかいうんで、あ、じゃ、行こ、とまたまたまたまたアップステアーズに行っちゃった。

破産状態。

例によって三上さんのすっげえ京都味の絶品和食が数品出て、つぎにデイヴィッドのわけのわからんタルタルが出て、うぇー、うっめえ、三上さん、これ、わかる?っていってみんなで分析しようと思って何が入ってるんだか探ったんだけど、タラゴン? or ミント? 松の実? マスタードシード? コリアンダーシード?(これは自信なし) もちろん黒胡椒だよね? でもけっきょく分析したって再現が出来るわけでもなく、あ、バルサミコね、でも、もうや〜めたってなって、いやあ、うまいねえ、すっごいねえ、っとだけで堪能していいんじゃないの? そうそう、下に敷いてあるのはパッションフルーツのピュレにフレッシュグリーンピーのさっと茹でたののみじん切りだぜ。これを和えるとまたうまいんだ。でも、こんなに重ねてるのにぜんぜん重くならない。三上さんも、うまいですね、これはぁ、とか言っちゃって。

っとかなんとか天国気分でいたら、ごちゃごちゃと夜の11時なのにうるさいご一行さまが入ってきて、ほしたらグリルにいたデイビッドがあらって顔をして出てきてみんなとご挨拶してるから、いったいどんなセレブがきたのかね? と思ったら、あ〜た、エル・ブリのフェラン・アドリアさまご一行さまだった。

え? エル・ブリ、もう休み期間?

ま、そんなことは関係ないけど、デイビッドが三上さんにこいつは友達ですごいシェフだから、とにかく日本料理を出してくれって頼んでるんだけど、三上さん、フェランなんて知らないから、へ? って顔。で、ま、すっご有名なスペインのレストランの創設者で、ブーレイで出る泡のソースもこいつの発案だってくらいなのって説明して、でも、三上さん、いつも出してるのを出したらおいしいに決まってるよ、とかエンカレッジして、いろいろブレインストーミングして出したら、フェランちゃん、もううんうんうなづきながら5品食べてた。時々両方の親指を突き上げてTwo Thumbs Upね。

よかったよかった。

んで、デビちゃんが私をフェランに紹介してくれて、フェランちゃん、英語ぜーんぜんしゃべれないの。でも、通訳を介してデビちゃんなんか私のことぐちゃぐちゃ言ってるから、そのうちになんだかよくわからんうちにフェランちゃんからじかにエルブリに招待されたわ。ま、口だけだろうけどさ、行ったら一品くらいは増えるかも。30皿が31皿に変わるくらい。ふむ。

でもおもしろかった。
3巨頭、相まみえる。
そのウィットネス、目撃証人さね。
三上さんの和食どうだった?って訊いたら、70行くらいしゃべってた。シンプルと思ってはいけない、このだしの深さは、とかなんとかのたまうんだけど、yeah, I knew, って。は、失礼。

でもいいなあ、このくらいのプロフェッショナルは。
私もそういう感動をひとに与えたいもんだ。

フェランは、やっぱ、面構えが違う。
デイビッド・ブーレイも、同じ。
三上さんも同じ。

にんげん、面構えね。
それが本日の結論。

October 10, 2005

Bouley Upstairs

2005-10-10 w/yoshie
Bouley Upstairs
☆☆☆☆
122 West Broadway NY., NY. USA
予約とらず


煮蚫の蚫煮汁と雲丹のソース
イタリアのママのズッキーニの酢漬けをニンニクとオイルで和えたものを刻み、真鯛の千切りといっしょに混ぜて
紋甲いかのウンベリア製プロシュート巻き&大根煮にマグロの脂身の炙り焼きをのせて酢みそを添えたもの
boiled skate & gnocchi with carrot & passion fruits sauce w/pomegranate, baby basil
sauteed bass and foie gras with truffle vinegar sauce & sliced baby green tomato
grilled swordfish with gin & red bell pepper sauce(?)
コーベビーフのブロイルの海苔ソース カボチャの煮付けを添えて


やっぱり、書き初めはここにしなくちゃならんだろうねえ。

おれはね、日本でバブルのときに新聞記者をしていて、まあ、適当に金はもらってたんだけど社会部記者だったもんで忙しくてさ、あんまりたいしたレストランなんか行かなかった。というか、時代って恐ろしいもんで、あのころ、80年代から90年代の初めにかけては、日本には、東京にさえ、おいしい地酒なんか出回っていなかったし、ワインなんて雲上の高級酒というか、バカ高かったから味もわかるほど飲めなかったわけさね。チーズに関しては何をか況や。

そんで、運あってニューヨークに来てさ、まあ、話せば長くなるけど、ワインは安いし、チーズは安いし、おまけにちょうどニューヨーク自体のグルメブームにかち合った幸運もあって、バルサミコなんてののうまさも初めて知って、オリーヴオイルとバルサミコだけでなんだって食べられるじゃん、とかって思ってたときに、知り合いのジュンコちゃんに、「おいしいところ、あるのよ。連れてってあげる」っていわれて、そんでトライベッカのBouleyってレストランに初めて連れて行ってもらったわけなのですよ。

緊張しましたねえ。なんせ、ジャケット着用でしょ、ネクタイなんかうまく締められないの、当時、おれ、自分では。

そしてさ,Duane Street にあった、昔のブーレイのね、厚く重い、大きな木製のドアを開けたらさ、箱入りの林檎が山になって積まれているの。そんでその香りが、ほわーんと清々しく我を包めり、なわけですよ。

4時間,あるいは5時間でしたね、シェフのお任せコース。
私が食べたのは、何だったのでしょう。地上のものではなかった、と思ったのは、それまでにちゃんとしたフレンチを食べたことがなかったから? いや、そんなことはないと思うんだ。美味いものは知ってたの。まずはうちの母親の美味いものはほんと美味くてね、それにB級グルメだって美味いものと美味くないものは知ってた。謙遜していわなかったが、一応高級料亭とかも役得で何度か行ったことがあるし、本格懐石だってフレンチだって日本では一応ちゃんとした一流店も知ってたわけですさ。

でも、違ったんです、このDavid Bouleyの作るもんは。なにからなにまで。
ジュンコちゃんはBouleyを知っていて、そんで、Davidもきっと自分で作って出してくれていたんだと思う。そのときも他のテーブルと出るものが微妙に違っていたから。ってか、当時、彼はほとんど毎日そうやって客ごとに特別な料理を出していたんだね。

で、毎月、通い始めました。
ずっと、1993年から、一時閉店の96年まで。
一度として同じものが出てきませんでした。
たった一度、なんだったけかなあ、魚かフォワグラか、焼き具合がなんだか違っていて、聞いたらDavidがいなくて別のスーシェフが焼いたんだってすまなそうにいわれた。そのときだけでした、出されたものに隙があったのは。

わからないのさ、なにがこういう味になっているのか。ソースがね。
まあ、果物と野菜のだしがキーなんだろうなあ。でも、食べてるうちに分析の意欲がへなへなと崩れ落ちて、美味さに身を委ねて陶酔してしまいたくなるの。

そんなかんなで13年。
で、本日も行ってきました。アップステアーズ。ブーレイ本店ではなくて、いま(2005年秋冬)はここでDavidがオープングリルの前に立って、客をオーディアンスに料理をしています。(2006年からはテストキッチンでやっていて、アップステアーズには深夜の客としてくるほうが多くなってますが)

先日、エリック・クラプトンが来てね、という話をDavidがうれしそうにするのだ。うれしそうなのはクラプトンが来たからじゃなくてね、クラプトンが、レコーディングのスタジオに籠っているとこれはおれの仕事じゃないって思うんだって言ったことがうれしかったらしい。おれにはオーディアンスが必要なんだ、って言うんですってよ。

Davidいわく、「そうなんだよ、オーディアンスがいることが必要なんだ。きみとか、エリックとか、他の常連のあの人とかこの人とか」って、そうかそうか、クラプトンもDavid Bouleyのオーディアンスなんだよね。一流ってのは、一流を相手にその話を自分の話にして喰ってしまうんだわのう。

いまアップステアーズには和食のNYトップである三上忠夫さんが寿司カウンターに入っていて、従って冒頭のようなメニューとなります。きょう面白かったのは、三上さんが出していると、Davidがやってきて、そろそろおれにも出させろと言って来ること。店に入ったときは「きょうはハンバーガーとピザを作ってやる」と、これまたいままで食べたことのないものを料理してやろうぞ、という顔だったのに、三上さんの出すものを見て3品とも魚にして来たのが面白かった。張り合ってるんだもんね、おたがい。クソっ,そう来るか、とかいって。

ああ、客冥利に尽きるなあ。これ以上、何を望めるレストランがこの世に存在するのだろうか。

料理はスッゲエが、サービスは混乱中。

October 06, 2005

☆の読み方

レストランガイドのクリシェとして、☆を使いませう。
でも、ミシュランより1つ多い4つ星で採点します。
で、なにが基準かというと、私が自分でつくる料理との比較なのです。あはは。
自分が拙宅へのお客さま用に作るものと同程度以上の味でないと☆は付きません。
すっごい不遜! でも、わたしの料理を食したことのある方なおわかりいただけるかと。
自画自賛。結構。だって、自賛できないような絵は少なくとも人様に見せるものとしては描くべきではありません。
それに、これだと基準がぶれないし。はっきりしてますから。
ってか、わたしの料理がさらにまたうまくなればなるほど厳しくなる。
うーん、基準、ぶれるじゃないか(笑)。
ま、いっか。どうせここは私のサイト、王様は私だ。金を払ったのも私だもんね。

ですんで基本的に、☆が1つでもつくところはすごくお勧めできるレストランです。
かなり厳しい採点をします。

「☆なし」もありますが、それは悪いという意味ではありません。触れるってことはなにかいいたいことがあるからです。行ってみるのも一興、おもしろいかも、という感じのレストランです。もちろん、訪れるレストランをすべてここに掲載するわけではないですし。
また、ここで触れるくらいにひどいのはその都度、なんらかの記号を示しませう。

というわけで、☆の定義は次のごとし

☆ はたと膝を打つ納得得心じつに好感
☆☆ へえ、こりゃ大したもんだわ、と賞賛
☆☆☆ ひえー、参ったね、こりゃ、と絶賛
☆☆☆☆ 絶句、昇天……。