Le Cinq(ル・サンク)
2006-8-26
Le Cinq(ル・サンク)
☆☆☆
31, avenue George V,
75008 Paris,
France
TEL 33 (0) 1 49 52 70 00
泣く子も黙るル・サンクに、8月の夏休みでどこも開いてなくてやっと予約が取れたランチで行ってきました。ご存じミシュランの3ツ星レストランです。ここに来ると、ミシュラン3ツ星というものの持つ意味がよくわかります。味やサービスは当たり前ですが、レストランそのものの持つ格調というのか、面構え、佇まいが違う。凛としていて、従業員みんながどうにかここを一生懸命素晴らしい店にしようと努力しているのが伝わってくる。その意気と格調がDNAの二重らせんみたいになってるんだなあ(ってわかるかね、この比喩?)
でね、素晴らしい応対というのがどういうものかを教えてくれるの。
ここのウェイティングスタッフと話をしていると、客との間合いの取り方がなんともいえず絶妙なんですね。上質な人間が、上質な教育を受けて、気取られないように客の顔を読んでいる。みごとなもんですわ。まあ、それだけのことをするプロとしての金を貰っているという矜持もあるんでしょう。
テーブルセッティング。バターは有塩と無塩で、もっちりと粘質。オリーブオイルは2006年産の新物。スパイシーでグリーニー(青臭い)でおいしいでした。
さて料理はじつに堅実なものです。ホテルのレストランという性格でもあるんでしょうが、絶対に文句は出ない、出させない、という作り方をしている。これも客への応対と似ていて、とにかく減点される要素を徹底的に排除するという手法なんですね。その意味では面白さに欠けるともいえるけれど、ここの常連には面白さよりもこの(特級の)確実さ、(特級の)安心さ、(特級の)日常さ、を求めるともなく求めているひとが多いのでしょう。面白いものを求めるひとはもちろんここには来ないのかもね。もっと尖ったところに行く。ガニエールとかね。
この日のムニュは、それぞれにグラスのワインを合わせてもらいました。
アミューズはトマトのコンフィテュール(タマネギとバジルをアクセントにしてとろとろに煮込んだもの)を添えたツナとオリーブのケーキ。ケーキといっても薄くて小さなスライスが2枚、これ、もすこし粉が少なければキシュになるくらいに卵の香りが高くて、ツナとオリーブがなんだか田舎っぽい懐かしい味で和ませてくれるって趣向っすね。しかし、この卵自体、そのままですっげえうまいやつなんだろーなあ。
1皿目はタイのカルパッチョと称していたけど、出てきたのはソールでした。それがね、フグの薄造りみたいにして、きっと叩いて薄く伸して丸く切り取ったんだろうね、その下には皿の絵柄じゃなくて、オゼイユ(日本でいうスカンポの葉っぱです)とかセルフィーユとかの緑のものを散らしてそれが透けるようにしてあるの。魚は変わるけどル・サンクの定番です。日本料理だねえ。で、うえに一直線にクレームフレッシュと野菜のエスカベーシュ(なんてあるのかしら? そう説明されたけど)を引いて、レモンゼストもちょっと散らしてきれいですわー。そんでもってフルール・ド・セルをぱらぱらとやってカリカリと歯を楽しませる仕組み。完成品です。これ以上どうにもならない。
これにはブラン・ド・ブランのドミセックを。
2品目はラビオリっていうんだけど、これも手が込んでる。うーん、スクィッド(小さなヤリイカ)のフリカッセとタジーヌの野菜をベッドにして、そのうえにラングスティーン(手長エビ)のラザーニアがのっかる。で、ソースはやはりラングスティーンのだしのリダクション。それをシトラスやコリアンダーでカットして注ぎ、さらに最後にアリサ・ソースをのっけてた。これ、Harissaというチュニジアあたりのピリッと辛いソースってか調味料のことです。
これにはオーストラリア・マーガレットリバーのセミヨンとソーヴィニヨン・ブランのブレンドでCullenっていう白。木の香りのするいいワインでした。
3皿目はほわほわのタラのロースト。泡のフュメ(だし)のソースなんだけど、生のアーティチョークが薄切りになって付いてくるの。生のアーティチョークは初めて。漬け水のレモンの香りが残っていて、その酸味もうまい具合にソースに移って、おいしうございました。
これにはブルゴーニュのムルソー。Cote de Beaune 2003. J.M. Boillot, Eau Marc. いっしょに行ったワイン通のパトリスは2002年のほうがベターだと言っておりました。つまり、2003年は比してミネラル感が多すぎるのかな? でもムルソーはうまいわね、いつも。
お肉のナイフ、切れませんでした。これだけがこの日の減点。へへ、めっけ。
そんで、ラムの付け合わせの野菜の酢漬けがうまいのなんのって。子牛のほうも付け合わせの野菜が抜群にうまい。フランスって、すごい国だわ。
で、ウェイターにそう感動を伝えると、「日本の方はみなさんポテトピュレのほうに感心なさいますが、そちらはいかがですか?」っていわれました。うん、もちろんポテトピュレおいしいんだけど、これ、わたし、ブーレイで14年前から喰ってるんです。そういや14年前は顎が落ちるくらいびっくりしたもんなあ、たしかに。
これにはClos du Marqui 1999, St. Julienですね。
いやいや、上質で素敵なランチでした。デセールにはお茶のマスターがいてね、ワゴンでサービスしてくれるの。このひとね、右手が不自由なんだけど、それも普通に働いて客たちも普通にサービスされてる。
この普通のレヴェルの上質さ、それがル・サンクのル・サンクたる所以なんでしょうな。
お値段は、ワインとチップを含めて、3人で500EUROくらいでした。75000円か。高いですわ。うん、かなり高い。ディナーじゃないんだよん。さて、ニホン人、高くてもありがたくいただきましたってことでしょうか。でも、ほんと、☆3つの味です。でも、高すぎですわね。
フランス、ユーロになってからものみな高しだとマナエちゃんがいってました。