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September 13, 2006

ランファン・キ・レーヴ

2006-9-6
ランファン・キ・レーヴ
☆なし
〒007-0880 札幌市東区丘珠町604-1
モエレ沼公園ガラスのピラミッド内
TEL 011-791-3255

L'enfant qui reve、つまり英語では The child who dreams「夢見るあの子」って感じの意味ですね。le (the) と定冠詞なのが訳しづらいところ。そういう謂いがフランスにはあるのかしら?

ここは札幌から20分、な〜んにもないところに出現したイサム・ノグチのデザインとなる公園のなかにあるしゃれたレストランです。いろんな人から勧められて、ランチに母親、叔父夫婦を連れて行ってまいりました。

アミューズはどういう順番で食べればいいのか、コーンポタージュでしょ、キッシュでしょ、さんまのマリネでしょ、それで、もう一品、忘れた。ちっちゃな皿やグラスに盛られて、4人分をポンと出してきて、みんなで取って食す。

で、前菜に入ると、スモークサーモン、北海道の何とかカボチャでしょ、ポロネギの茹でてアスパラみたいな味と食感になったやつでしょ、エビをズッキーニで巻いたやつでしょ、あと、なんかの天ぷら(これも忘れた)。

次は海のものね。これはホッキ貝のソテー。とてもよい焼き具合。それに野菜のグリエ。


次はスープと来ました。前日のテルツィーナでも食した柳の舞っていう名前の白身魚のグリエしたのを沈めて、上に舞茸を載せ、そんで魚のフュメを注ぐという趣向。

主菜は鴨でした。山わさびのソースというかコンディメントをかけて、下には焼き葱という定番。

そんで、デセール。白ぶどうの実とジェルの上に赤ぶどうのソルベを載せたもので、じつはこれがいちばんうまかったです。

っていう書き方でわかると思いますが、料理は可もなく不可もなく、予想した味が予想したとおりに舌に載る、というふうで、安心して食べられます。フレンチというより、料理としてはもっと素朴なイタリアンのアプローチに近いかな。まあ、雰囲気もあわせるとこれで上々というべきでしょうね。

しかしダメなのです、この店。何がダメかって、ここのウェイティングスタッフです。

ちっとも微笑まない。料理の描写がぞんざい。なんだかすごく無愛想で、わざとじゃないんだけど、木で鼻をくくったような、というか、というより力量、器量の問題なんだろうなあ、アルバイトなんだ。応対が、プロじゃないのです。

料理がこのレベルだったら言葉一つで客を上機嫌にもできるはず。そんで笑顔一つで☆半分追加ですよ。ちょうど、そうやって言葉で飾ってやれば☆1つ、言葉がなければ☆なし、というそんな境界線上にある料理なのです。大きな窓の向こうには広大な自然が広がり、青空には雲までもが力を持って描かれている。そういう最高のロケーションおよびシチュエーションで、この客対応はないよなあ。

それともうひとつ。あの、くだらないフラットウエアはやめるべきです。見た目はかっこいいけど、柄も刃も細すぎて使っていて手の中でくるくる回っちゃう。バカげたデザインのナイフとフォーク。大量に揃えて買っちゃったからしょうがなく使ってるんでしょうがねえ。


ということで今回の訪問を基にした判断では、結果的にはちっとも面白くない、スタイルだけがおしゃれなレストランでした。
行きたい人は行って、という感じです。
じつにもったいない。
夜はもっとプロが応対してくれるのかしら?

September 06, 2006

テルツィーナ

2006-9-5
Ristorante Terzina
リストランテ テルツィーナ
☆☆☆

札幌市中央区南2条西1丁目 アスカビル2F
TEL 011- 242-0808

このレストランは、わたしが札幌でいちばん気に入っている店です。2003年の夏に見つけて、毎年帰るたびに訪れるようにしています。料理、接客、いずれもとても素晴らしい。ただの料理でもない。驚きもひらめきもちゃんと刷り込ませてある。うふふ、と思わず笑いが漏れることもある。しかして接客はあくまで軽やかに丁寧で……そう、だれを連れて行っても恥ずかしくありません。こういう店は札幌でなかなか難しいと思います。東京にあったら東京でも行く、ニューヨークにあったらニューヨークでもひんぱんに出向く、そういう店です。

で、この日はわたしは毋と母方の叔父夫妻の4人で、1人10500円のディナーコースを頼みました。

焼き茄子とアンチョビ
ガスパチョとデラウェア
生ハムとその日のソルベ
カリフラワーのババロア ブロッコリーのソース キャビアのせ
函館産アワビとミョウガの冷製カッペリーニ たまり醤油のジュレ添え
歯舞産活〆柳の舞と冬瓜のブロデット
イベリコ豚ホホ肉のグリーリア 色々お野菜とポルチーニ茸、イベリコチョリソーのカポナータを添えて
みやこ南瓜とパルミジャーノチーズのリゾット サマートリュフをたっぷりとかけて
北アカリ・無花果・ゴルゴンゾーラ
季節のフルーツとティラミス
プラムのソルベとフロマージュブランのムース ヴィンコットのカプチーノ
コーヒー

この感動をすこしでも伝えたいと皿ごとに料理の写真を撮ったのですが、じつはその写真、携帯電話のカメラでして、その携帯からどうやって取り出してよいのかわからんのです。はは。すんまそ。

で、料理は食べていただくしかない。コースは5000円、7000円もあります。アラカルトはパスタが1600円くらいから、肉や魚は2000円台からあります。どれを取っても大丈夫です。私が保証します。

それで今回、シェフのお名前を確認しようとメールを出したら、支配人の安住正弘さんから次のようなメールをいただきました。
「名前は小川 智司(さとし)と申します。リストランテ・テルツィーナ開業(2002年)からのスタッフです。
オープン当初はグランシェフの堀川がおりましたので、シェフではありませんでしたが1年間でメキメキと頭角を現し、他の先輩達を差し置いて23歳でシェフに大抜擢されました。(現在26歳)、今では完全にリストランテ・テルツィーナの料理をまかされております。」

26歳ですよ!
そうなんです。才能のある料理人は20歳そこそこから活躍します。世界的なシェフで26歳で開眼していなかったやつはいません。小川さん、これは期待できます。コースからなにか強弱のメロディーが流れているのです。それはたしかに彼の唄なんだろうなあと思わせるような波形です。

でも、今回、ちょっと量が少なかったよ〜(笑)。
冷製カッペリーニ、具がアワビと高価だったせいもあるかもしれないけど、ありゃあドンブリいっぱい喰いたいぞ!(って無理な注文)。ミョウガと醤油のジュレだなんて、もうしっかりトレンドも押さえてるしぃ……。

あとガスパチョとデラウェアの組み合わせはよかった。これも量が少なかったけど。
生ハムはそんでもってソルベの上にのっかるんじゃなくて、ソルベの入ったデミタスの縁と縁に蓋のように渡してある、その盛りつけのひねり。いいねえ。
カリフラワーのババロア ブロッコリーのソース キャビアのせ、ってのはこれまた優しい味で、攻めも守りも両方できるというその幅の広さを感じさせる逸品。じつはその10日前のブーレイのロワールでの結婚式の正餐で、スーシェフのセザールがカリフラワーのクリームソースを柚子果汁を塗った生の手長エビに合わせていたんだけど、そのソースと同じ味のバランスでした。おみごと。

柳の舞も、スープ仕立てのブロデットだもんねえ。サフラン風味でこれも技あり。

イベリコ豚のグリルも、切り身3枚じゃ足りなかったよー(ってまるでだだっ子状態ですな)。
リゾットもぐいっと攻めの味にトリュフですからねえ、くー、うまかった(大スプーン3杯くらいだったけど、ってしつこい!)。

そういうわけで、札幌はこの店で救われています。(でも、コートドールとかのフレンチも行ってないんで、ほんとはそう語るには早すぎるかも。一度4年前に行ったモリエールは明確に期待はずれでしたけどね)