大賀 Oga
2006-10-21
ジャパニーズ・タパス
大賀 Oga
☆(暫定)
143 E. 47th St.
(bet. Lexington & 3rd Aves.)
Manhattan, NY 10017
TEL;212-308-5688
http://www.oganyc.com/
先日、エル・ブリのフェランご一行がNYにいたときに、どこかジャパニーズでお薦めのところはないかと訊かれて、いくつか挙げたうちの1つのここにアルザックの親爺さんともども訪れたらしく、まあ、ジャパニーズ・タパスという位置づけに興味を惹かれたのだと思われ。で、そのあとにここのシェフからわたしにまでお礼の電話が来て(どうもフェランがわたしから聞いたと言いおいたらしい)「フェランが興味を示していた糸唐辛子と針海苔をぜひお渡し願えないか」と請われ、わかりました、では、ということで行って参りました。
今年の初めのオープンらしく内装も新しくきれいでしゃれており、常駐のシェフは大賀さん本人ではなく(ボストンの本店と行ったり来たりの日々らしい)杉浦さんという若い方でした(って後から聞いたらもう四十代ですって)。でメニューを見ると、寿司(巻き物中心)と、温かいタパス、冷たいタパスというふうに並んでおるのですが、一見まあ居酒屋料理なのですね。そうした小鉢、小盛り料理をアメリカ人にもわかりやすく「タパス」と称したのでしょう。さてそれらを頼んでみようかと思っていましたらシェフが中でなにか特別にあしらえているそうで、それらを待つことにいたしました。ちなみにこの日は午後にチェルシーで「ジャパニーズ・レストラン・ショー」という見本市みたいなのが催されていて、プライベートパーティーで急遽お休みとなったアップステアーズのシェフ三上さんに誘われてそこに出向いた後、そのまま2人で(一軒を挟み)流れた次第。そこに同じくアップステアーズのシンちゃんも合流して、さらにはエル・ブリつながりであそこのスーシェフをやっていたマウロという若いイタリア人シェフも呼んじゃって、4人でわいわい、となりました。
で、杉浦さんの厨房から出てきたのは
自家製豆腐にマリネしたキノコをちょこんと飾って柚子ポン酢で食すもの
和牛のタルタルを紫のアンディーブにちょこんと載せて、梨のソースとアンチョビのソース(コンディメント)でそれぞれ食すもの
カブとサツマイモの揚げ出し
アーティチョークのすり流し風松茸のスープ
そのほかにメニューから頼んだもの
スパイシー・ツナ・トスタード(トスタード=揚げたトルティーヤ=の代わりにすし飯を海苔で挟んで天ぷらに揚げて、その上にタイの辛味調理料のスリラチャで和えたスパイシーツナをのっけたもの)
イカとイクラの巻き物のウニ載せ
アヴォカドとイカ・エビのコロッケ
ジンジャー・ラム(ラムのロースを黒ごまでまぶしてパン・ソテーし、生姜と醤油のソースで食すもの)
なす田楽(三種のソースで=黒、黄色、緑、ってことはホイシン系の甘味噌、西京+卵かな、それから緑は忘れた)
茶碗蒸し(とはいえ、豆乳の浅いカスタードで、おまけにモッツァレラがかかっていて、そこにイカやエビの表面に突き出しているところをトーチで軽く焼き付け、その上に鰹の出汁あんを掛けたもの)
そりゃね、特別料理含みですからおいしかったです。
とくによかったのはアーティチョークのすり流し風松茸スープ。これは絶品。
もうひとつは、上記の茶碗蒸しですね。これは面白い。焦げ味とモッツァレラが上質なあんの出汁と絡んで素敵。いいねえ。
あとひとつは、カブとサツマイモの揚げ出し。なんちゃないけど、野菜がほっとします。こういうの、けっこう発想自体が難しいのですよ。
この三品は素晴らしかったです。どこに出しても恥ずかしくない。
いずれも杉浦さんの味付けは押し付けがましくなく、塩加減もちょうどいい軽さ。ただ、お寿司(巻き物)はちょっとまだかな、という感じがします。アメリカ式のいわゆる変わり巻き物(変形)なんですが、何が言いたいのか、よくわからない。2種類しか食べてないですけどね。ウニ、イカ、いくらの巻き物は、みんなグチョッとした食感ですんで、キュウリとか沢庵とかなんか、カリッシャリッってのが入ってないとフォーカスが定まりません。トスタードのほうは、うーん、すし飯の天ぷらっての、成功してないんじゃないかしら。
でもまあ、本日は、☆1つ、という、とてもいい感じでしたが、“特別料理”込みということで、☆の評価は暫定とします。で、何気なくまたふらっと来てメニューからほかの面白いものを頼んでみます。
というところで、店の話は終わりですが、本日はそのほかにとても「なんだかなあ」という経験をしました。
お店に「ジャピオン」と「フロントライン」というNYの日本語フリーペーパーのライターと称する女性が2人取材(かそのまえの取材下調べ?)に来ていたらしく、杉浦さんが「エル・ブリのシェフが来ている」とマウロのことを伝えたのでしょう。そうしたら「エル・ブリのファンですってことで、ごあいさつをしたがっているんですけど紹介してよろしいでしょうか?」って杉浦さんから申し出が。「はいはい、いいですよ」と応えたんですが、その後にやってきたこの女性2人組、私たち他の3人は完全に目に入らないらしく、会釈もなにもせずにそのままマウロだけに名刺を上げたり話したり。その間3分ほどでしたが、私たちの席はその間じゅう、宙ぶらりんになるのです。
舞い上がっているせいでしょうけど、これは日本人によくあるいちばん悪い癖です。いっしょにいる人たちを無視する。眼中にない。あいさつもしない。ジャーナリスト失格以前に、いっちょまえのオトナとしてどうなの、それはすごく失礼なことではないのでしょうか、ジャピオンさん、フロントラインさん。
取材者というのは、周囲の空気を読めなければダメなのです。
ほんと、ニューヨークの日本人社会にはこうした自称ライター、自称ジャーナリスト、自称カメラマンというのがうじょうじょしていて、同じ肩書きで働く者としてときにとても迷惑ですらあります。もうちょっと修行してよね。そうやってあちこちでジャーナリズムの評判を落とすわけだからして、ことの失礼はキミだちだけの問題ではないのです。
Comments
なんと、この店、11月5日に突如閉店してしまいました。
そういうわけで、ま、こういう店もあったなということで……
Posted by: 北丸 | November 27, 2006 12:42 PM