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いちむら Ichimura

2007-01-22

いちむら Ichimura

1026 2nd Ave.(Bet 54th & 55th)
New York, NY.
212-355-3557

とてもたたずまいの正しい店です。お鮨屋さんはオープンキッチンですので、しかもここは例の鮨の冷蔵ケースが目線を遮っていないのでまな板がカウンターと同じ高さで見えています。店主の市村さんの一挙手一投足(脚先までは見えないが)が丸見え。市村さんの動きは優雅です。まな板に置く包丁の位置がきれいです。それだけでちゃんとしたところに来たね、とわかります。

聞くとご出身は茨城県下妻市。80年に拉致されてNYに来た、ととても冗談を言うとは思われない穏やかな口調でおっしゃいます。れいの有名店「竹寿司」で働いてきたそう。ここは「ニューヨーク竹寿司物語」という本になっている店です。NYで最初の鮨屋さん。いろいろな苦労とお鮨大好きなアメリカ人の反応が記されています。

さてその市村さんがここに店を出したのが2003年。前は「瀧乃」という天ぷら屋さんがあったところ。
店はカウンター、テーブル席とも15席ずつほどのこぢんまりした構えです。

つまみは頼まず、即、鮨を握ってもらうことに。お任せでいただきました。
ヒラメ、金目鯛、真鯛、甘エビ、コハダ、〆鯖、中トロの漬け、炙りトロ、イクラ醤油漬けと雲丹の軍艦、ネギトロ巻き、かんぴょう巻き、穴子白焼き、煮蛤、卵、鯵、さっきより深い中トロの漬け、真鯛の昆布〆

あら、思い出すまま書き出してみると、けっこう食ったなあ。書き忘れもあるかも。ははは。

金目が甘くておいしかったです。
コハダの塩加減がよかった。
で、鯖の〆方が最高。

〆鯖は、いつごろからでしょうか生っぽく浅く〆るのが流行ってきて、それはそれでよいのですが、この「いちむら」の鯖はきちんとしっとりと〆てあって、やわらかくて口の中でとろけます。やっぱり〆鯖ってこういうもんだよなあ、って思い出しました。薄めの二枚が酢飯を包むように握られています。その薄目の二枚というのもこのしっとり感のカギなんでしょう。美味いです。

あとはイクラの醤油漬けの軍艦のその海苔がおいしかった。雲丹と海苔は互いの甘みが入り込んじゃってよくわからないんだけど、醤油漬けのイクラって、海苔と合うんだよね。その海苔がこうも香り高かったら何をかいはんや。

かんぴょう巻きのかんぴょうもしっかりとキャラメル色で、山葵はNYの鮨屋のあの青々した山葵だけど、その山葵の味と絡まって美味しかったわ。

酢飯の酢の具合がちょっとゆるめです。でもそれは好みだからなあ。私はもうちょっと酢が感じられるのが好き。ネタにも拠るけど。でもご飯の炊き具合が硬くなくやわらか過ぎもせずちょうどいい。これも好み。

いっしょに行ったコータさんがワインがいいと言うのでシャブリ(45ドル)を飲みました。このシャブリも悪くなかったです。鮨とも合わなくもないワインがあることはある。まあ、「合う!」ってほどではないんだけどね。NYじゃやっぱ、ワインのほうが安いし。

というわけで、最後に「金目鯛や鯖がおいしかった」と口にしたら、市村さん、「あ、今日の味は今日で忘れてください。今度いらしたときにまたおいしいと思えるものをお出ししますから」と。なるほどね、一期一会ですか。とてもいい気持ちで店をあとにしました。

お勘定は2人で税金やチップを入れて計320ドルでした。じつに納得できる値付けです。ごっそさんでした。

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