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Danube

2006-12-27
フレンチ-オーストリア料理
ダヌーブ
☆☆
30 Hudson St. (TriBeCa)
Manhattan, NY.
TEL ; 212-791-3771

「ダヌーブ」もしくは「ダニューブ」と発音します。オーストラリアを流れるドナウ川の英語読みです。1999年、デイヴィッド・ブーレイがオーストリア料理の潜在的な可能性(というか、まあ、NYに新しいものを紹介したいという彼の志向の一環でしょうが)を引き出そうと、当時弱冠26歳だったマリオ・ロニンガーというなかなかのシェフを連れてきて出した店です。開店当時はこのマリオの才気がブーレイを彩ってとてもおいしかった。ところがこのマリオが2003年に辞めてオーストリアに帰ってしまう。それからダヌーブはシェフがいないという困ったことになりました。裏話をすると、厨房ではマリオとブーレイがその前年に出版した"East of Paris"という料理本を参考書にしてその日その日の料理をつくっていたわけです。

で、このときにダヌーブの味はどんどん落ちていきました。味は濃くなるし、バリエーションはなくなる。何年かぶりに訪れても同じものしか出していない。しかし2005年のミシュランNYはそんなダヌーブに2つ星を与えるのです。ミシュランは、どちらかというと味よりも格式みたいなものを重んじる傾向があるんじゃないかと思います。その点では、ダヌーブはサービスはフレンドリーながら内装もオーストリアの画家クリムトをテーマに黄金色を多用した立派なものですし、建物もしっかりしている。きっとそういうことで2つ星だったのでしょう。

ところで、そのときの暫定シェフが昨年春にとつぜん辞めました。で、次のシェフに抜擢されたのがクリス・ラモンというNY出身の20代の若者でした。そのクリスが、ぜひきちんと食べにきてくれと言うので、この日の夜に行ってみたのが今回の食事でした。

もちろん、これはダヌーブでいつも出される料理とは少し違うでしょう。私たちが4人で食べたこの日の皿はなによりオーストリアの感じがあまりしません。しかもシェフが頑張って作った特別料理です。ですのでふつうにここに食べにいくのにあまり参考にならないかもしれません。しかし、いえることは、料理の基調音というのでしょうか、いちばん基本として流れている土台みたいなものの和音が、とてもおいしくやさしい、ということです。もっと簡単にいうと、まあ、塩味なんですけどね、これがとてもいいので料理が、どんなアクセントをつけようと、あるいは肉料理の強いソースでも、そんなに押し付けがましくならないのです。

きっとこれは彼の作るどの料理でも同じように流れているハーモニーだと思います。ですので、ここはお薦めです。ダイニングスペースはそんなに大きくないしゆったりとしたテーブルは位置ですので、クリスが差配するのに無理は生じないはずです。わたしはここで☆2つとしましたが、これはあくまで控えめな評価です。鮨屋と同じでなじみになれば出てくるものは違う。これは本来は料理店としてはいけないのでしょうが、近所の小料理屋だと思えば赦せるし、その方がうれしい。つまり身内評価と思われるかもしれない☆☆☆をぐっと我慢して、敢えての☆☆。これならだれが行っても文句はいわないだろうとの読みです。

最初のアミューズとして出てきたのは、ちょっと聞きそびれたのですが、砂肝みたいなエスカルゴみたいなそんな食感の何かの上にウニのソースが載っていたもの。下にはオランデーズみたいな柔らかなソースが敷いてありました。とてもやさしい幕開けです。

これはほんのちょっぴりですが、ローステッドダックのスープ。5種類の冬のスパイス入り、だそう。泡のスープで、真ん中にそのローストした鴨のレアな肉がひとすじ置いてあります。スパイスは種子系です。スターアニスとかクローブとかコリアンダーとかでしょう。でもぜんぜん重くならないの。おいしいです。うれしくなります。

これはスズキの、きっとポーチでしょうか。ほわほわです。下に、セロリルーツのピュレとソテーしたリーク(ポロ葱)が敷いてあって、ソースはいまの季節に出回っているタンジェリン(みかんですね)。この絶妙な酸味と甘味がクリームのようにとろとろに調和しています。どこがオーストリアなのでしょう、という突っ込みはナシです。うまいんだから。

ロブスターにはリンゴの角切りを合わせてきました。ロブスター・ビスクのソースです。下のピュレは何のピュレだったかなあ。これもフルーツの酸味で重くない。この辺はブーレイの影響でしょう。爪を立てたプレゼンテーションも考えてますわな。(写真撮ってるって聞いたからと、あとで言ってきました)


肉料理に行く前に赤ビーツのラビオリです。中にはカボチャとオーストリアの濃厚なチーズが入っていました。赤キャベツのソースだとか言っていたかなあ。真ん中の緑は何だったっけ? おいしくて忘れた。ほんと、見た目のどぎつさとは裏腹に、すごくよくまとまっている完成品の印象があります。これはきっとダヌーブのこの冬の定番料理だと思います。こういうラビオリを前にも食べたことがありますから。そのときは香ばしいカボチャのタネのオイルのソースでした。それもおいしかったです。

肉の一品目はコロラド産のラムでした。白と黒の胡麻をまぶしてソテーおよびロースト、それで切り分けた。この胡麻の香ばしいこと。それがラムの香味として合うんだなあ。こんなバランスの取り方があるとは知りませんでした。下には茸のソテーが敷いてあります。

で、お次はワイルドグース。野生の雁です。ジビエです。これをスロークックした。で、ブラックカラントみたいなベリーのコンディメントと肉のソースで食わせる。定番ですが、そこに緑の枝豆の煮たのを添えて、シェフは日本人の私たちに表敬をしたわけだと受け取りました。うれしいねえ。しかもこの枝豆が肉の重さのバッファとなって、いわゆる箸休めね、そういう役目を果たしてくれて、単なる飾りではないところがいい。

ほんとは上記の野生の雁で終わりだったそうなんですが、どうせならこれも食ってよと出してきたのが鹿肉とフォワグラです。しかもけっこう量があるの。しかもパスタ添え。何のヌードルだったか……いや参りました。まずいはずがないが、これで腹はち切れそう。ひー。

お口直しのオレンジとヨーグルトのソルベ。ベリーのソース。


デザートの最初はバニラのアイスクリームにメレンゲのなんか。忘れた。
しかも、写真撮るの忘れたけど、このあとに焼き菓子であるチョコレートのケーキとかスフレも出たわけで。

はい、大変満足致しました。
ワインも、しこたま飲みました。
驚くくらいおいしかったのは
カリフォルニアのサンタ・ルチアのピノノワール。
ワイナリーとヴィンテージ、忘れてます。
後ほど確認の上。

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