Gordon Ramsey at the London
2007-01-16
フレンチ
ゴードン・ラムゼイ(ザ・ロンドン・ホテルNY)
☆☆☆
151 W. 54th St. (btwn/5th & 6th Ave.)
Manhattan, New York
TEL ; 212-468-8888
ロンドンの三ツ星レストランが昨年11月にその名も「ザ・ロンドン」というニューヨークのホテルにやってきました。ここは以前、リーガ・ロイヤルというホテルだったのを改装改名したものです。ホテルを入ると右側にバーがあって、そこからさらに左奥にダイニングルームが扉を隔てて設けられています。ダイニングスペース自体はかなりこじんまりとしています。40席ちょっとでしょうか。四角く窓もなく、でもテーブルもゆったりと置いてあるし天井も高いのでなんとなくコージーな感じで悪くありません。壁の仕掛けもちょっと面白いです。パネルがね、羽根板のようにくるっと回転して、昼と夜とで雰囲気をがらっと変えられるんですって。有名なデザイナー、David Collins のデザインですって。
ひょんなことから友達のダニエルちゃんの予約に充当される形で2人でお食事です。この日はマンハッタン、この冬初めて零下で、ちゃんと冬でした。
それはさておき、席に着いて最初に「カナッペ」と称してトーストしたフレンチブレッドにクリームチーズに黒トリュフのピュレを混ぜたムース、それとおなじく手前のがなんか緑色してるけど何のムースだったっけ、これはたいして印象に残りませんでした。クリームチーズにトリュフはうちのパーティーでも今度作ろうっと。
メニューは「プレステージ」という7皿のコース料理の他は、ヴェジタリアン用の「プレステージ」、そしてあとはアラカルトしかありません。プレステージは110ドルです。アラカルトも前菜とメインが1ページずつです。そんなに品数は多くありません。どうしようか迷って、でも最初だからふたりともコース料理にしました。
アミューズは「BLT」ですって置かれたのが、トマトウォーターのジェリーの上にレタスのフォームを載せ、その上にベーコンチップやキャラメライズド・オニオンを載っけたものです。いわゆるデコンストラクシオン(脱構築)ですね。
まあ、こんなものかなと思ったのですが、次に出てきたもので、あ、おいしいな、って思い始めました。
それがこれです。
フォワグラと鴨肉のテリーヌです。周りの野菜がピクルしてあります。これが野菜の味がしっかりとしてておいしいの。もちろんフォワグラもそれを固めているジェリーがいい感じなのです。野菜は人参でしょ、フレンチストリングビーンでしょ、カリフラワー、そしてオニオンクリーム。そこに茶色いのはポルトのソース。このピクルドの野菜はパリのル・サンクで食べたのに似ています。しっかりしてて、でも野菜、って感じ。それがフォワグラと鴨肉の重さに果敢に切り込んで(とはいっても量がちょっとだからそんな大げさなもんじゃなくて、舌の上での小さな戦い、って感じで微笑ましい)いくのですね。それに、この盛りつけ、かわいくない?
次はね、ロブスター・ラヴィオリにセロリルートのクリーム、貝のヴィネグレットソース、それで下にはサヴォイかしら、緑色のキャベツが敷いてありました。
これもこのキャベツがしっかりキャベツの味がしておいしいの。で、ラヴィオリはロブスターだけじゃなくて、聞いたらサーモンと手長エビも入ってると。そしてこれをイタリアンでも中華でもないものにしてるのが、ハーブとしてチャービルを入れてるところでした。なるほどね、いいね、この「はは〜あ」感。
次はブラックシーバスだから黒鱸?。んで、写真はソースのアーティチョークのヴルーテをかけてるところですね。緑色はジュリエンヌしたバジルです。写真ではアーティチョークのダイスも見えますね。赤いのはローストしたレッドベルペッパーだと思う。そんで、ここにもベーコンのビッツがちょっと混じってて、いい感じのコクを与えています。で、うまいの。ほんと。味も、濃いというのとはちょっと違って、なんていうのかなあ、アグレッシブなんだけど、オフェンシブではない? 積極的だけど攻撃してくるようではない。なんか不思議です。これがきっとゴードン・ラムゼイの特徴なんじゃないでしょうか? イギリス人ですよ、フランス人ではないイギリス人としてのフランス料理。なんか、きっと葛藤の末に見つけた道、みたいな感じがします。
ここで肉料理に移ります。ダニエルちゃんはヴェニスン(鹿肉)を頼み、わたしはでは、ということで残ったチョイスのラムを頼みました。
ダニエルの鹿肉は、これは定番でもありますがチョコレートのソースでした。味見させてもらいました。あ、これ、ブーレイでも昔々、食べたことがあるって感じた。すっごく似ている。でもチョコレートの味がこっちの方が濃くて、こっちのほうがひょっとしたらおいしいかも。で、お肉の下にはビーツとセップ茸(ポルチーニ)が敷いてあった。このビーツもおいしい。ソースをかけたら周りのポテトピュレかな、花びらみたいできれいです。
わたしのラムローストは、これがマージョラム風味のジュ(肉汁ソース)でした。
いや、うまいんだ、これが。
ラムって、ふつうはミントとかローズマリーとかあとは中東って感じのクミンとかがお決まりのハーブ及びスパイスですが、マージョラムです。マージョラムって、オレガノの親戚だけど、ドイツのソーセージとかに入れるハーブね。ミント系の香草だけどオレガノよりもなんか、もっと抹香臭いっていうか、もうちょっとお線香みたいな(あまり食欲をそそらないけど)、そういう珍しい味がしました、このソース。で、まさにさっきも触れた、果敢に迫ってくるけど攻撃的ではない、という感じの肉料理なのです。下にはタマネギのピュレだな。真ん中はロマーノレタスみたいなパクチョイみたいな。左の赤いのはトマトコンフィ、その下にはラムのコンフィ。向う側はクミン風味のなすび。
わたし、ふつう、肉料理にはそんなに感心したことがないのですが、ここは肉もとてもうまいというか、感心させてくれます。また来たいなあ、ほんと。でも、メニューが少ないから、来週また、ってなったら同じコースを食べることになるんだろうか? その日その日のシェフズメニューもないし。
きっと、まだ2カ月ほどのこのレストラン、シェフ・ラムゼイの準備したレシピどおりにやっているんだと思います。ちなみにここのエグゼキュテヴ・シェフはニール・ファーガソンという、30くらいかなあ、若いシェフです。(食事終わってから厨房に通してくれました)。東京のウェブサイトを覗いてみたらおなじようなメニューもあったんで、やはりレシピどおりでやってるんだろうね。
で、食後はチーズと口直しデザートのチョイスがあります。
これは見ても分るとおり、チーズのほうがずっとお得(笑)。ともするとおまけして大盛りにしてくれたのかもしれないけど。
口直しはローストしたパイナップルに砂糖コートしたシラントロ(香菜)。これはよくある組み合わせです。
で、本番デザートはアプリコットのスフレ。アマレットアイスクリーム添え。アイスだけじゃなくスフレのほうもアマレットというかアーモンドエクストラクトの香りにあふれておりました。
この日はそんなに込んでいなかったせいかウェイティングスタッフもとてもフレンドリーで、じつに満足できた夜でした。
ゴードン・ラムゼイ(ニューヨークではゴーゾン・ラムズィーと発音するけど)、わたしにイギリス人の料理を見直させました。また来たいです。そのときにニール・ファーガソンがどれだけレパートリーの中で遊んでくれるか。そしてそれがいかほどのものか(シェフとスーシェフって、じつは雲泥の差があるんですよね)。
メニューがもっと充実したら、ここはトップレストランの1つになるでしょう。
こりゃ、ロンドンに行ってみないとだめかしら。
ワインはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン(50ドル)と、スペインのリョハでプロピエダード・レモンド2003年(75ドル)。この赤が美味かった。
税金とチップを含めて、1人210ドルくらいでした。大満足。