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February 26, 2007

Ristorante MASSA

07-02-17
イタリアン
リストランテ・マッサ
☆☆
東京都渋谷区恵比寿1-23-22
03-5793-3175

NYの伸ちゃんが東京に出てきたので2人でお昼をしようと、この日は彼の選んだ店にランチに。で、わかったのがここがあの「イタリアンの鉄人」神戸勝彦の店だったということです。恵比寿の駅からちょっと行ったところに、こじんまりと、席数わずか30足らずじゃないでしょうか。でも清潔な四角いデザインで、テーブルもゆったり。
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ランチは4200円のコース。それにワインペアリング3700円。おいおい、これってかなり安いかも。だって、アペリティフの自家製のリモンチェッロのソーダ割りから始まるんです(まあ、このリモンチェッロの味は普通でしたが)。ところがアミューズを出されてにんまりしました。
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巻いてあるのは生ハムですよね。で、何を巻いているのかというと、これ、自家製の干し芋なんです。そんなに乾燥させていない、しっとり感の残る干し芋をキューブに切って、そこに生ハムを巻く。面白いじゃありませんか。で、きちんと美味しい。生ハムも干し芋も互いに美味しくなる。これは期待できる出だしです。

次に伸ちゃんは前菜の盛り合わせを頼みました。
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手前から時計回りでワカサギの南蛮漬け(イタリア語で言われたけど忘れました)、チーズポレンタに雲丹を載せてトーチしたもの、赤ワインでマリネした鮟肝にスダチのジュレを載せたもの、スプーンに載った海鼠の三杯酢みたいな和え物、カワハギの紫蘇の香りのマリネ、中央の赤いのはカポナータです。

ぼくは平目のカルパッチョです。
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これね、掛けてあるオリーブオイルに梅酒の梅を刻んだものが混ぜてあるのです。で、その梅がオリーブオイルのフルーティーさと相まって、とてもよいの。こういう使い方もあるのね。いいじゃな〜い?

でさ、次はパスタが2つ続く。
第1のパスタは、伸ちゃんが白魚と菜の花、私がタラの白子とマッシュルーム。パスタはいずれもキターラ。うどんみたいなもちもちの食感。これも美味しいじゃないの、ちょっとぉ〜。

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第2のパスタは、私が京芋のニョッキで、タケノコの入ったタレッチオチーズのソースに黒トリュフをかけたもの(たしかトリュフ代で500円ほど上乗せかしら?)。
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伸ちゃんは平貝とインゲン、蕗の薹のピュレや青唐辛子のソースのトロフィエ。手でひねった短めのパスタですね。
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これは私のほうがうまかったけど。いや、上質ですよ、ここは。

メインは私は真鯛と聖護院かぶらのグリルに寒じめ法蓮草という、京都のこれまた香り高い法蓮草を載せたもの。オレガノのピュレのオイルがアクセント。真鯛は焼き具合もたいへんよろし。

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伸ちゃんはエゾシカのグリル。白インゲンのサラダを敷いてバルサミコのソース。葉セロリを渡してありました。で、フォワグラのソテーを追加してましたね。

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デザートはこれ。
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フィンランドのアラビア社の青いお皿に、紅茶のジェリー、アーモンド・アイスクリーム、そしてグレープフルーツなんかが載っていて、ピンクの粉はフリーズドライのイチゴのパウダーですわ。

なんだか出てきたものを羅列しただけになってしまいましたが、わたし、ここ、嫌いじゃありません。
素材の取り合わせ、組み立て、いちいちが納得します。サービスがちょっとぎこちなかったりしますが、夜はきちんとしているのかもしれません。でも、このランチコースでワインも合わせて結構飲んで、それで8000円、つまり70ドルしないって、こりゃ素晴らしいわ。
いつか夜に再訪したいものです。

February 20, 2007

おけいすし

07-02-20

おけいすし
☆☆☆
東京都渋谷区神宮前2-3-26
03−3405−4610

たしか7年ほど前でしょうか、さいしょにここを訪れたのは。で、以来、日本に帰ってきて余裕のあるときはここでじっくりと飲み食いしています。でも、これまで都合6回ほどしか来ていないですけど。はは。

ここはね、「鮨屋さん」という枠ではないのかもしれません。酢飯と鮨種とで構成される総合的なコースメニューを供するレストラン。コンセプトとしてはフレンチなんでしょうね。わたしは基本的にそういうのが好きなんだわ。

こんにちは、といって予約の名前を告げて席に着くでしょ、すると2掬いほどの「酢飯のおじや」が大きな器にちょこっと出されます。そして「蛤の冷たいスープ」もおちょこで出てくる。これはね、お酒を飲むひとにまずは少し胃になにか入れてから、というサジェスチョンなのね。やさしいでしょ? で、ビールを頼むとあっさりした「湯通しキャベツと玉葱のサラダ仕立て」みたいな酢の物が小皿で出てきます。あ、「蛤汁」「キャベツのおひたし」って言葉を使えばよくある和食だなあ。でも、そういう「よくある感」じゃないのだわ。

ビールを注ぐと「ほうじ茶で煮たものすごくやわらかい蛸の足」が3cmほどのブツ切りで2切れ供されます。美味しいです。同じく「水蛸の頭と吸盤の刺身」が、長方形の皿に盛られます。身の下に練り梅が忍ばせてあります。美味しいです。

つぎにさりげなく緑の葉包みの握りが1つそっと置かれます。口に含んで、あ、これ、「桜の葉」の握りだ、と頭の中に春風が通り過ぎます。あれですね、桜餅の塩漬けの桜の葉。餅を包めるんだもの、酢飯を包めないはずがない。でもその発想はなかなか気づかないうれしいものじゃないですか。四六時中鮨のことを考えているプロに、代わっていろいろなものを発見してもらって、わたしたちはその上澄みだけを頂く。そしてそれにお金を払うわけです。代金というのはそういうことですわ。身代わり料。

お酒は冷酒で頼むと、たしかここは菊正が出てきます。ふつうの菊正です。純米ではあるかもしれないけど、酒が主役じゃないから、あまり個性が強い吟醸とか大吟醸ではない。で、刺身から出てきます。ってか、メニューがないのだと思う。いつも座ると自動的にいろんなものが出てくるから。お腹が減ってると言えば早めに鮨にスイッチする感じ。今日は鮨で行って、ともいえそうです。でも昨晩はなあんとなく飲みモードだったので、瀬谷正二さんもそれを察知したのでしょう。そんな感じで料理が出てきます。

まずは「大トロの1辺焦し」です。カウンターから正面に常に火を入れてあるコンロがあってそこに鬼おろしみたいな魚焼き器が渡してあります。なんか、金属は宇宙ロケットの素材らしいですよ。熱を受けても変形しないんだって。で、そこに大トロのブロックの一辺をのみ、じゅっと押し付けます。すると脂が焼けて煙がブワッと立つ。その煙を浴びてトロの表面が燻される。で、それを切って刺身とする。うんめえ。そこに、またぜんぜんテクスチャーの違う「鮪の血合いの佃煮ふう」もそっと小皿で差し出されます。とてもあっさりした、甘くない味付け。長時間煮込んだ牛スジにも似た食感です。酒が進みます。さらに「鮪中落ちと山葵の握り」が続きます。1つを真ん中ですとんと包丁で分けて、わたしと連れに半分ずつ。マグロの脂に負けない山葵の味だということは、かなりの量のわさびを入れて調和させている。その塩梅、これは必然だったのだと頷かされます。

続いて昆布〆平目の刺身、そして昆布〆平目の縁側の握り。この昆布〆はぐいっとしっかり。平目は拠って飴色に近く、その食感はモッチリねっとり。醤油につける必要もなく滋味に満ちています。

イカはもちろん先日のどこかのように甲イカではありません。墨烏賊の身と耳の刺身が細切りにしてその透明な身をさらしてきます。そこに烏賊墨と海老の頭のお吸い物が、そうね50ccほど、ちょこっと。うめえ。塩加減も絶妙。さらに「薄く切った塩鯨の脂身と皮」は、これは脂の質がやはり魚と違って、癖はあるけど好きなひとは好きだろうなあ。「氷頭なます」と「焼き北寄貝」は、今回、北海道で食べなかったんでうれしかったです。

「〆鯖の刺身」「〆鯖の塩焼き腹身」と続きます。さらに酒が進んで、「うちでいちばんうまいもの」と「生ウコンの輪切り」が5、6枚、出されました。石垣島だそうです。ふうん、日本ではウコンが流行ってるんだ。そういえば泊まっているとーちゃんちでも冷蔵庫に「ウコンの力」なんてドリンクが入ってますしね。

「口直しの味の濃いトマト」は、すごい味です。やっぱり日本はトマトがすごい。ここからそろそろ腹いっぱいで、握ってもらうことにしました。

最初は「昆布〆鱚の握り」。鱚は身が弱いので、昆布で〆たわけか。あまくてたいへんよろしい。
続いて「鮪赤身の漬け」。これは近年食った赤身で最高です。この部位なんだよね、いつも、求めてるのは。どこなんでしょう。身がほろほろと崩れるようなの、口ん中で。これ、部位に関係するんだよね、たしか。でも、うますぎてそのことを訊き忘れた。とほほ。

次も絶品。表面だけさっと蒸し器で煽った「雲丹の握り」。蒸し雲丹というのはうまいのに出逢ったことがない。ですからこれは蒸し雲丹ではないのです。雲丹を箱ごと蒸し器に入れてさっと熱にくぐらしてやる、って感じの手当てを施す。すると身が締まるのねえ。それで味もうまい具合に凝縮される。ひえーって感じなのだ、うまくて。

そうそう、次の「干瓢の巻物」を食べて、わたし、干瓢はかくあるべしというのを、ここで知ったのだなあと思い出しました。ぐいっと濃いめに甘辛く煮込んで、ぐいっと山葵を利かせる。江戸っ子だねえ、って感じの気っ風の良さ(干瓢巻きが江戸っ子文化なのかは知らねども)。

そういえばここの酢飯もわたし好みなの。ってか、ひょっとしたらインプリントなのかもね、ここで最初に鮨のすごさを知ったわけだから。
酢飯は、ほら、いつもいってるように、酢がきちんと利いているわけです。塩は入らない。砂糖も酢を立たせるためだけに最小限。で、しっかり「お酢し」。基本的に酢が好きだという母親譲りの好みの問題とはいえ、鮨は酢の飯であるというそのコンセプトどおりの味なのです。好きだなあ。

最後は「焼き穴子の握り」をどろりと詰めたたれのひと垂らしで。もう、100年もののバルサミコみたいなドロりさです。いいっすねえ。
デザートは「黒砂糖の卵焼き」。もうカステラ状態。それに包丁は入れず、握り職人のしっとりした手でむぎゅっともぐ。5cmX4cmくらいの角になりますかね。そうして「大蜆のみそ汁」で終ります。

写真、撮れませんでした。こういう店ではなんとなく、写真を撮るなんて作業がはなから浅ましいものに思えてしまい……。

おけいすしは鈴木正志さんという大将が始めた店で、じつは大将は、なんかわたしなんぞにはおっかなくて、この瀬谷さんとかその下の埼玉繭夢さん(本名だよん)に握ってもらったりするくらいがいちばん楽でくつろげます(大将は隣というか続きの間である「鈴政の部屋」で握っています)。お二人ともほとんど無駄口をたたきませんが、瀬谷さんは、シャレを言うときでも真面目な顔でちらっと口の端から漏らすように言う。それが下品に落ちないカギなんでしょうね。目が、これも仕事、という感じで茶目になってから軽口を発する。素晴らしいプロです。

上記のごとく食べて、なんどもお代わりの酒をもらって、2人で今宵は39800円。食べ物が1人15000円。銀座久兵衛と比べてなんとお得感のある店。残りはお酒と税金です。じつに納得の値付けではありませんか。

銀座 久兵衛

07-02-16

銀座 久兵衛
☆(穴子への評価っす)
東京都中央区銀座8-7-6
03-3571-6523

銀座久兵衛は「北大路魯山人や志賀直哉などの著名人も愛した創業70年の寿司の名店。ウニやイクラを初めて寿司ダネにした店としても知られ、新鮮なネタに、砂糖を使わないシャリのうまさが絶妙」と某サイトに紹介されています。

銀座八丁目という立地もあってなんだかずいぶんと敷居の高い店のようですが、実際に行ってみるとそんなことはまったくありません。なにせ1階から5階まであって、4階が待合室?、店の主人はどうも5階で上客相手に握っているという話です。で、けっこうノリは大衆鮨屋です。客層もバラバラ。観光客みたいな人とか遠出の女性層とか、なかに会社の重役タイプの人も。私たちは3人で行ってその階の一番手に握ってもらっていたのですが、後半にそんな感じの重役おじさん2人が入ってきて「すいません」と声をかけられて、「(握り手を)先輩と代わっていいですか?」といわれました。で、「先輩」というのが先輩なんかじゃなく若手なわけです。こういう「松竹梅」を逆に呼ぶみたいなのって、なんだか下品だなあ、と思ってしまいました。ま、どうでもいいけどね。

で、予約は8時半だったんですが7時以降はどうも「予約」といっても予約ではないらしく、だいたいその時間に行けば順番に入れてくれるという感じ。で4階で待ちました。4階に、その魯山人の作となる書と陶器が飾ってあります。

わたし、魯山人って、言ってること書いてることは素晴らしいと思うんですが、つくってる焼き物とかはすごくいやなの。下手クソ。書だって、ひどい字です。勢いがあるとかいうそういうレベルですらない。下手クソ。バランスだって悪いし、捨ててあったらだれも拾わないだろうって、そんな字や陶器。それをみなさん、どうしてああも国宝級のように扱うのか、よくわからんです。で、それらがガラスケースで囲って飾っている。ま、どうでもいいですけどね。

お時間30分遅れで席が空きました。で、2階に通されました。メニューは、おまかせ12貫プラス巻物で10500円です。ふーむ、この根付け、微妙です。だって、アップステアーズに行けば料理食って鮨食べて75ドルですからね。しかしここは老舗の鮨屋。銀座に久兵衛ありといわれた店です。いっちょう、食してみようじゃありませんか。

で、中トロから出されました。ふうん。そうなのか。
中トロ.JPG

で、平目、縞鯵と続きます。
平目.JPG縞鯵.JPG

で、イカ。え、紋甲烏賊ですかあ? ふうん、いくら塩でっていってもねえ。
甲イカ.JPG

で、赤貝。これはふつうにうまかったね。
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次の車海老は生きてます。生で握るか軽く茹でるか、と訊かれます。これはぜったいに茹でたほうが美味しいのです。生きた車エビは硬すぎてね、甘みがなかなか出てこない。ところが軽く茹でる。これだと身もとろけるように美味しくなります。で、そのとおり、たいへんうまくできました。でも、かあさん、わたしのあの海老の頭はどこへ行ったんでしょう? 焼いて出してくれればいいのに、そんな素振りはありません。がっかり。
車エビ.JPG

続いて、ここが最初に鮨種として使ったという雲丹です。はい。ま、こんなもんでしょう。
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次は大トロ。うーん、わたしのはちょっと筋が入ってたわ。
大トロ.JPG

次が小肌。ふーん。こんなもんかな。
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で、次が穴子。あらら、これはたいへん素晴らしかった。きょうはこの穴子を食べるために来た、と思うくらい美味しかった。で、どううまいのかというと、この穴子って煮穴子なんですよね。で、煮穴子っていうとふつうはぺったりふんわりと煮て、それでそれを焼いてほわっとさせたのを出す。ところがここの穴子はやや乾いてる。ぺったりとろりの穴子もうまいが、ここは煮てから一晩冷蔵庫で置いて適度に乾燥させるらしい。それでそれから焼く。なもんで、煮穴子というよりも焼き穴子の風情があるんですね。適度に歯ごたえがあって、それが口の中でうまみを引き出す時間をくれる。大きめの1つを半分に切り分けて、最初は塩で、後半はたれで食べました。どちらともよかった。なるほど。
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そこから大根とごまの口直しに行き、巻物へと入る。鉄火、納豆、干瓢です。
で、べったら漬けが出て、〆はお決まりの卵。これもよかったですね。芝海老がゴッサリ入ってる感じの味の深さとい、食感もよろしい。甘さも素敵。
巻物.JPG卵.JPG


というわけで12貫(ほんとうは、貫というのは50gくらいのすし飯の量をいうので、そんなにデカイ鮨はいまはないんで1貫って正確には2個のことを指す習わしなのですが、それじゃあこれは24個の鮨になってしまいます。ま、ここは12個のことですけどね)、かなり腹いっぱいになりました。ただし、お吸い物はまったくいただけません。永谷園のお吸い物みたいです。しょっぱいし、だしも薄っぺらだし。これは一気に興ざめ。
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さて、どう評価すべきか。
鮨メシは砂糖を使っていないせいでしょうか、かなりきれいな味がします。ご飯自体もおいしい。

ただ、この店は、ふつうにおいしい、というだけのような気もします。もう1つ気づいたのが、鮨種があらかじめ切ってあったということ。いわゆる鮨ケースというのはないんだけど、奥から人数分の鮨種が切って盛られてやってくる。それを目の前で握ってくれる。これって、どーなの? って、高級店なら思っちゃうんじゃないかなあ。でも10500円というのは高級店ですよね。

ああ、それでいま気づいた。鮨のタネがね、最初に口に含んだとき、なんだか、変な匂いがするんだ。なんだろうなあって、いままでわかんなかった。ヘンというのは、ただしべつに悪くなった味ではない。いま書いててわかった。これ、この奥で切り分けて出してくるときに使っている木のお盆のせいじゃないのか? いや、記憶が曖昧だけど、木のお盆じゃなかったっけかなあ? 違ってたらごめん。でも、舌につながる記憶の果てから思い出されるのはなんだかきっと杉の香りっていうか、生木の味なのでした。

というわけで、あの穴子がなかったら、☆は付かないでしょう。これが高級大衆店なみの5000円(税込み5250円か)だったら文句なく☆1つあげるにやぶさかではないのだけれど。ま、場所代かなあ。

おまけ。
これはお土産の穴子の棒鮨。こちらの酢飯は砂糖を入れて穴子の甘さと調和させているんですって。で、干瓢とか干し椎茸とかが煮て細かく入ってもいる。持ち帰ったわたしの新聞社時代の大先輩は「とてもおしいかった」とおっしゃってました(じつはこの日の代金も多くを払っていただいたので☆がいくつだのと偉そうなこと言うの恥ずかしいんですけどね、あは)。わたしもこういうグッと押した鮨は好きです。今度機会があったら食べてみたいですけどね。
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February 17, 2007

やくみや

2007-02-14
小料理・飲み屋
やくみや

東京・新宿歌舞伎町1-1-7-2F(ってか、ゴールデン街の並びの花園五番街の花園神社寄りです)
090-6702-4879

久しぶりにゴールデン街に入り込みました。するとあなた、いまゴールデン街、再開発っぽいってか新しいお店がたくさんできて、すごい様変わりです。話には聞いていましたが、いやはや、とてもトレンディー。みなさん相変わらずのちっちゃな店構えですが。

で、ここはあの乾きものしか出なかった時代のゴールデン街からは考えられない料理屋さんなのです。とはいえ店は2階にあって5〜6席だけのカウンター。3階にも6〜7人は入れるちょいの間があるそうですが。
そこに火器を持ち込んで、なんとちょっとした天ぷらなんかまで揚げてくれます。

カウンターの向こうで、林佐和さんという清楚な美人が、美少年のようにハンサムな動きで小アジの南蛮漬けを盛りつけたりカワハギを肝と刺身にしてくれたり鶏を柚子胡椒でグリルしてくれたりイワシの梅干し煮を小鉢盛りしたり、コゴミと蕗の薹と山ウドを天ぷらにしてくれたりセロリのおひたしを出してくれたりしてくれます。そしてそのそれぞれがきちんと日本料理の基本に忠実で(きちんとだしをとってるしね)、そこにさらに佐和さんの主張がさりげなく乗っている。

いちいちうなづいて食べたその中のイワシの梅干し煮は、ほんとに梅干しの味がすっと表に出てきていて、ふつう梅干し煮とはいっても隠し味程度にしか梅干しを使っていない遠慮したような臆病で凡庸な梅干し煮に出逢うことが多いのですが、佐和さんのはちゃんと梅干しなのです。それも押し付けがましくない程度にすっと立ち現れる梅干しの味。梅干し自体がおいしいんだね。そういったら、友達のおかあさん?だかがつくってくれた梅干しだそう。その他、その日その日で冷蔵庫から見繕ってきれいに料理を目の前で作ってくれる。聞けばやはり何軒かの料理屋さんできちんと働いてきた人なんですね。たんなる自分流ではない背筋の通り方。

お酒もおいしいのがおいてありますよ。はやりの焼酎も選んで各バラエティがそろえてある。日本酒もいい。ビールはハートランドの生をクリームのような泡で蓋して注ぎ入れてくれます。おまけにワインまで美味しかった。カリフォルニアのシラー「Heart of Claudia」、ボトルで3500円だって。よく見つけてきたねー、こういう値段で出せる美味しいワインを。それだけ取っても誠実な店だということがわかります。

こういう店は誠実な人しか行ってはいけません。大切にしなくてはならない店です。佐和さんとそのパートナーの女性の2人が切り盛りするこの店に、あるいはその2人に、意地悪をするやつはオレがゆるさない、ってそんな気分になる店です。ええ、わたし、完全に惚れてしまいました。はは。