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銀座 久兵衛

07-02-16

銀座 久兵衛
☆(穴子への評価っす)
東京都中央区銀座8-7-6
03-3571-6523

銀座久兵衛は「北大路魯山人や志賀直哉などの著名人も愛した創業70年の寿司の名店。ウニやイクラを初めて寿司ダネにした店としても知られ、新鮮なネタに、砂糖を使わないシャリのうまさが絶妙」と某サイトに紹介されています。

銀座八丁目という立地もあってなんだかずいぶんと敷居の高い店のようですが、実際に行ってみるとそんなことはまったくありません。なにせ1階から5階まであって、4階が待合室?、店の主人はどうも5階で上客相手に握っているという話です。で、けっこうノリは大衆鮨屋です。客層もバラバラ。観光客みたいな人とか遠出の女性層とか、なかに会社の重役タイプの人も。私たちは3人で行ってその階の一番手に握ってもらっていたのですが、後半にそんな感じの重役おじさん2人が入ってきて「すいません」と声をかけられて、「(握り手を)先輩と代わっていいですか?」といわれました。で、「先輩」というのが先輩なんかじゃなく若手なわけです。こういう「松竹梅」を逆に呼ぶみたいなのって、なんだか下品だなあ、と思ってしまいました。ま、どうでもいいけどね。

で、予約は8時半だったんですが7時以降はどうも「予約」といっても予約ではないらしく、だいたいその時間に行けば順番に入れてくれるという感じ。で4階で待ちました。4階に、その魯山人の作となる書と陶器が飾ってあります。

わたし、魯山人って、言ってること書いてることは素晴らしいと思うんですが、つくってる焼き物とかはすごくいやなの。下手クソ。書だって、ひどい字です。勢いがあるとかいうそういうレベルですらない。下手クソ。バランスだって悪いし、捨ててあったらだれも拾わないだろうって、そんな字や陶器。それをみなさん、どうしてああも国宝級のように扱うのか、よくわからんです。で、それらがガラスケースで囲って飾っている。ま、どうでもいいですけどね。

お時間30分遅れで席が空きました。で、2階に通されました。メニューは、おまかせ12貫プラス巻物で10500円です。ふーむ、この根付け、微妙です。だって、アップステアーズに行けば料理食って鮨食べて75ドルですからね。しかしここは老舗の鮨屋。銀座に久兵衛ありといわれた店です。いっちょう、食してみようじゃありませんか。

で、中トロから出されました。ふうん。そうなのか。
中トロ.JPG

で、平目、縞鯵と続きます。
平目.JPG縞鯵.JPG

で、イカ。え、紋甲烏賊ですかあ? ふうん、いくら塩でっていってもねえ。
甲イカ.JPG

で、赤貝。これはふつうにうまかったね。
赤貝.JPG

次の車海老は生きてます。生で握るか軽く茹でるか、と訊かれます。これはぜったいに茹でたほうが美味しいのです。生きた車エビは硬すぎてね、甘みがなかなか出てこない。ところが軽く茹でる。これだと身もとろけるように美味しくなります。で、そのとおり、たいへんうまくできました。でも、かあさん、わたしのあの海老の頭はどこへ行ったんでしょう? 焼いて出してくれればいいのに、そんな素振りはありません。がっかり。
車エビ.JPG

続いて、ここが最初に鮨種として使ったという雲丹です。はい。ま、こんなもんでしょう。
雲丹.JPG

次は大トロ。うーん、わたしのはちょっと筋が入ってたわ。
大トロ.JPG

次が小肌。ふーん。こんなもんかな。
小肌.JPG

で、次が穴子。あらら、これはたいへん素晴らしかった。きょうはこの穴子を食べるために来た、と思うくらい美味しかった。で、どううまいのかというと、この穴子って煮穴子なんですよね。で、煮穴子っていうとふつうはぺったりふんわりと煮て、それでそれを焼いてほわっとさせたのを出す。ところがここの穴子はやや乾いてる。ぺったりとろりの穴子もうまいが、ここは煮てから一晩冷蔵庫で置いて適度に乾燥させるらしい。それでそれから焼く。なもんで、煮穴子というよりも焼き穴子の風情があるんですね。適度に歯ごたえがあって、それが口の中でうまみを引き出す時間をくれる。大きめの1つを半分に切り分けて、最初は塩で、後半はたれで食べました。どちらともよかった。なるほど。
穴子塩.JPG穴子たれ.JPG

そこから大根とごまの口直しに行き、巻物へと入る。鉄火、納豆、干瓢です。
で、べったら漬けが出て、〆はお決まりの卵。これもよかったですね。芝海老がゴッサリ入ってる感じの味の深さとい、食感もよろしい。甘さも素敵。
巻物.JPG卵.JPG


というわけで12貫(ほんとうは、貫というのは50gくらいのすし飯の量をいうので、そんなにデカイ鮨はいまはないんで1貫って正確には2個のことを指す習わしなのですが、それじゃあこれは24個の鮨になってしまいます。ま、ここは12個のことですけどね)、かなり腹いっぱいになりました。ただし、お吸い物はまったくいただけません。永谷園のお吸い物みたいです。しょっぱいし、だしも薄っぺらだし。これは一気に興ざめ。
吸い物.JPG

さて、どう評価すべきか。
鮨メシは砂糖を使っていないせいでしょうか、かなりきれいな味がします。ご飯自体もおいしい。

ただ、この店は、ふつうにおいしい、というだけのような気もします。もう1つ気づいたのが、鮨種があらかじめ切ってあったということ。いわゆる鮨ケースというのはないんだけど、奥から人数分の鮨種が切って盛られてやってくる。それを目の前で握ってくれる。これって、どーなの? って、高級店なら思っちゃうんじゃないかなあ。でも10500円というのは高級店ですよね。

ああ、それでいま気づいた。鮨のタネがね、最初に口に含んだとき、なんだか、変な匂いがするんだ。なんだろうなあって、いままでわかんなかった。ヘンというのは、ただしべつに悪くなった味ではない。いま書いててわかった。これ、この奥で切り分けて出してくるときに使っている木のお盆のせいじゃないのか? いや、記憶が曖昧だけど、木のお盆じゃなかったっけかなあ? 違ってたらごめん。でも、舌につながる記憶の果てから思い出されるのはなんだかきっと杉の香りっていうか、生木の味なのでした。

というわけで、あの穴子がなかったら、☆は付かないでしょう。これが高級大衆店なみの5000円(税込み5250円か)だったら文句なく☆1つあげるにやぶさかではないのだけれど。ま、場所代かなあ。

おまけ。
これはお土産の穴子の棒鮨。こちらの酢飯は砂糖を入れて穴子の甘さと調和させているんですって。で、干瓢とか干し椎茸とかが煮て細かく入ってもいる。持ち帰ったわたしの新聞社時代の大先輩は「とてもおしいかった」とおっしゃってました(じつはこの日の代金も多くを払っていただいたので☆がいくつだのと偉そうなこと言うの恥ずかしいんですけどね、あは)。わたしもこういうグッと押した鮨は好きです。今度機会があったら食べてみたいですけどね。
穴子棒鮨.JPG

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