Fiamma
2007-10-24
イタリアン
Fiamma
☆☆
206 Spring St.
Manhattan, NY.
(212) 653-0100
ほんと、おいしいレストランってのはここNYでも東京でも、とみに増えてきましたね、最近。
このフィアンマもそうです。SOHOにあります。スプリング・ストリートと6番街の角に近く、タウンハウスを使ったレストランです。というか、構えや作りはもうグランメゾンですね。じつはここはマイケル・ホワイトというシェフがやっていてそれなりの評判を取っていたレストランです。それが9月にすべてリノベートして、新しいシェフ、ファビオ・トラボッキFabio Trabocchi がそれまでいたワシントンDCのタイソン・コーナーにあるリッツ・カールトンのレストラン「マエストロMaestro」からスタッフ共々ここに移ってきた、というものです。
このファビオさん、昨年のジェイムズ・ビアード・アワードで Best Mid-Atlantic Chef に選ばれた人。また、ソムリエはラトリエール・ドゥ・ジョエル・ロビュションNYから引き抜いた人。こうなると自然に期待も高まります。ちなみにジェイムズ・ビアード賞というのはアメリカ料理界のアカデミー賞みたいなもんです。
で、この日は友人のマリアさんの誕生日ということで(じつはそれを知ったのはデザートのころ。お誘いがあったのでひょこひょこ付いてったらそうだったわけで、不覚!)、行ってみましたよ。タウンハウスの一階はダイニングルームと奥がキッチンなんでしょうが、この日はダイニングルームは開けてませんでした。私たちはそれで2階に通されます。けっこう広いです。
われわれに付いたのはなんだかアメリカ娘って感じのあんまり有り難みのないカジュアルなウェイトレスでしたが、ま、いいでしょう。6コース120ドルのシェフズメニュー、そしてワインペアリング70ドル。ワインはみんなうまかった。いずれにしてもちょっと値段設定が高めです。でもカトラリーもお皿類も新調して、カネかかったんだろうなあ。
具体的に一品一品を検証する前に、いま、印象を記すと、おいしかった、でも、天才ではない、というものでした。
最初においしいレストランが増えているというふうに書きましたが、ほんと、そうなのです。おいしい。でも、こういうのを食べれば食べるほど、その中に天才というのはやはりなかなかいるもんじゃないんだなあって、いつも改めて感じるのです。おいしい食事をすればするほど天才の少なさを思い知るって、なんと不幸な食べ方でしょう。
で、天才とは何か? これがわからん。
天才は、会ってみないとわからない。
私のような常人には予測がつきません。
出会ってみて、おお、これが天才だ、としかわからんのです。
それが厄介です。
さて、ファビオ・トラボッキの名前からわかるようにイタリアンです。でも、このレベルになるともうフレンチと融合してます。
でも、最初に出てきたパンとバターがおいしかった。このバター、ヤギのミルクから作ったバターですって。脂肪分が多い。ちょっと黄色くて、酸化したバターみたいに(たとえが悪い)透き通ってます。で、口に含むとたしかに違う。でも、いちばん分かるのはそこにワインを飲んだときです。たちまち口の中がヤギのチーズで知ったあの独特の香気に浸ります。これはうれしいです。
アミューズは(イタリア語じゃないですけど)、タラとロブスターの身の上にタラのミルクの泡、と言ってましたが、つまりタラの白子でしょうね、それをエスプーマで泡あわにして、というおなじみの手法です。酸味とオリーブオイルの利いたタラとロブスターを、パセリとチャイブがアクセントにした軽い泡が包み込んで、なかなか鮮やかな出だしです。おいしいです。
そして最初がこれ。
Il Granchio
Maryland Blue Crab, Spiced Eggplant, Fennel
じつに肉感的なメリーランド産のブルークラブを薄切りにしてソテーした茄子でくるんで、そこにフェンネルのソース・ピュレです。ちょっとピリッとするのはピンクペッパーでしょうか? それともピメントの辛さかな? そんな味にチャービルの青みが加わって、これも悪くありません。いいじゃん、いいじゃん、って感じでコースが始まりました。
そうしてリードヴォーが来ました。
わたし、リードヴォー大好き。で、これまで食ったリードヴォーでいちばんおいしいと思ったのは、じつは25年前に群馬県高崎市の(しかしどうしてそんなところに行って、そんなところに入ったのか忘れたんですが、たしかなのは水戸支局時代だったということですね)、駅に近いビルの2階にあったフレンチレストラン(だれといっしょだったんだろう、それも忘れた。ひょっとすると1人だったかも)。そこで、ありゃ、たんに焦がしバターのソースだったのかもしれないけど、そのころはほら、きっとそういうもん食ったの初めてだったからうまかったのかしら? でも、リードヴォーは知っていて、そんで頼んだんだよね、そしてそれがほんとうまかったんだ。いいねえ、過去の記憶というのは。
前置きが長い。
Le Animelle
Roasted Veal Sweetbreads, Ovoli Mushrooms, Alba
Hazlenuts
これはね、下にローストしたヘーゼルナッツがあるんです。その他はワイルドマッシュルーム。
でね、驚いたことに、上に載ってる白いスライス、これ、何だと思います? 松茸なんですよ、というか、松茸の味がするの。それで、え、イタリアでも松茸があるの?って訊いたら、シェフに訊いてきてくれて、これは「Ovoli」というんだって言うのよ。で、帰ってきてから調べましたよ。でも、オヴォリって、ネットに出てるのはちょっと違うような。OVOというのはイタリア語で卵っていう意味らしく、そのキノコ、卵みたいな形なんだって。「卵茸」? そんで、傘がつるんと茶色い。そしたら、オヴォリってじゃあこの下に敷いてある茶色くてちっちゃなキノコのほうじゃないのかしら? これ、ほら、ナメコみたいな、でもヌルヌルしてない、うーんと、茶色いエノキダケみたいなのあるでしょ、そっちのほうかなあ? 帰るときにシェフに会って、あれ、松茸だよねってもいっかい訊いたら「そうそう、松茸と似てるんだ」って言ったけど、どうなんでしょう? けっきょくこの日は判断つかずです。
(だって、ほら、これがオヴォリ(卵茸)の拾い画像ですもん。ちがうよねえ)
で、そうそう、味は、大変よろしうございました。生の松茸(ということにします)、こうやってスライスして、小麦粉はたいてソテーしたチキンとか淡白な肉に載せてもおいしいかも。これはシンプルにオリーブオイルと塩とマッシュルームのジュで攻めています。イタリアンですねー。ヘーゼルナッツも合うの。グッジョブです。
次にリゾットでした。
Il Risotto
Organic Risotto, Pears, Grappa, Castelrosso Cheese
なんと、梨とグラッパとチーズのリゾット。
うーん、甘くてしょっぱい。不味くはない。うまい。でもけっこうきつい。この量だから食べられるけど、これ以上だと無理。梨はソテーしてるのと、ちっちゃな生のダイス状のを最後に振りかけてるので食感にアクセントあり。茶色いのはグラッパじゃないだろうから、なんなんだろ。これにムスカデみたいな白ワインを合わせていたんですが、ペアリングとしてはそれじゃなお濃くなりすぎて、わたしとしてはその前のやや苦みのあるドライなワインが合いました。
そうしてお肉はキジでした。それにフォワグラ。ハックルベリーソース。下の棒状の野菜はパースニップ。パンチェッタは、どこにあったんだろう?
Il Faigiano
Roasted Wild Scottish Pheasant, Parsnips, Pancetta,
Huckleberry Sauce
思い描くとおりの味です。それ以上でもそれ以下でもない。キジはしっとりと、これは真空低温調理ですね。
最後はチーズとイチジクとトーストしたアーモンド。
La Robiola
Robiola La Rossa, Figs, Toasted Almonds
デザートは、もうこの辺になると酔っぱらっちゃったんですね、あんまりおぼえてない。ほら、写真撮る前に一口食べちゃってるし。はは。まあ、ふつうでした。
Il Cioccolato
Amedei Chocolate Torta Caprese, Fiore di Latt
でも、この後に出てきたプチフール代わりのこれ、これがうまかった。手前のスプーンに載ってるやつ。
これね、さっきと同じ梨なんですが、梨のゼリーね、その丸い中に、上等のオリーブオイルが入ってるのよ。これ、うまいわ。オリーブオイルって、甘いのにも合うんだねえ。すごいなあ。
ということで、けっこう腹一杯になりました。ワインも堪能。
これがシェフです。どっかのレヴューにmovie-star handsomeって書いてあったけど、ふうん、そんなにハンサムかしらって思いましたです。
結論。
うまかった。でも、驚かなかった。
つまり、「まいったね」というのはありませんでした。
それに、ちょっと値づけが強気すぎるような気がします。いくらマンハッタン、家賃が高くても、SOHOですしね、120ドルのコースはやっぱり90ドルでしょう、これは。ワインも60ドルだなあ。
まあね、リッツ・カールトンだからねえ。
ザガットではきっと26点くらいは取ると思います。