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November 12, 2007

Wakiya

2007-11-11
ヌーヴェル・シノワ(新中華)
Wakiya
☆☆
2 Lexington Ave.(21st St.)
in Gramacy Park Hotel
212-995-1330

ニューヨークの中国料理は、いやアメリカ全土でそうかもしれません、中国系移民の歴史と伝統から、外食産業においても古くから日常料理として発展してきました。したがって、チャイニーズ・フードというと、1970年代初期からこれはデリバリー用とか持ち帰り用のファストフード的な位置づけで急速に広まりました。チャイニーズはけっこう味付けもはっきりしているし、甘酸っぱかったり辛かったり、アメリカ人の嗜好にぴったりだったわけです。そこで彼らは箸の使い方をこのチャイニーズでおぼえた。その後しばらくして日本食が流行したときに、「お箸の使い方がお上手ですねえ」と日本人に会うたびにいわれて辟易するのは、そのチャイニーズ好きの背景から、そんなの当たり前なのに日本人は箸の何を特別だと思っているのだろう、と思っているからです。

そういうわけで、中華=普段料理、という構図で、マンハッタンにも高級中華というのはありますが、なかなか最高級クラスは期待できません。なんといっても繊細さに欠ける。内装や食器類もなんとなく嘘っぽい。高級な酒を置いていない。それに、トドメが、サービスも一般的にかなりぞんざいだということが理由です。

そこに日本のwakiyaが来るというので、私たち日本人の期待はいや増していました。しかもサービススタッフはNOBUの連中で、しかもオープンまで1か月間徹底的に実地訓練したと聞いています。ってか、NOBUって、トライベッカの店のウェイティングスタッフはかなりスノッブで軽佻浮薄、あんまり気持ちのいいサービスじゃないんで、私はよほど招待でもされない限りあの店には行くつもりはないんですけどね。

さてこのWakiya at Gramacy Park Hotelです。
結論を先に言うと、個々の料理の味はかなりおいしいです。繊細で上品。

ただ、なんちゅうのかなあ、食材さえそろえば、なんか、おれにも作れちゃう、みたいな感じがするのはどうしてでしょう。エピセではそんなことはみじんも感じなかったのでしたが……。うーん、きっと上海料理とかって、どっちかっていうとじんわりとおいしいもんだから、四川みたいに、どうだ、みたかあ〜! みたいな迫力で脅すみたいなことをしないからかなあ。そうかもしれませんね。するとそれは私の現在の好みの問題だということでしょう。脇屋さんって、上海料理だっけ?

それと、どこか節々にやはりアメリカのチャイニーズの雰囲気を消し切れていない、というのも感じました。なんでかなあ、と1日経ってから考えたんですが、ふと思い至りました。最初の前菜とか、北京ダックの添えの、キュウリとかネギとかの千切りの仕方が、日本の高級店と違ってじゃっかん太いし不揃いなのです。日本の高級中華って、こういうところ、ものすごくきれいですよね。それがちょっと違うことによって、口に含んだときの食感がざらつく、粗いものになっていた。そのせいかなあ。でもそれだけじゃないような気もします。

ウェイティングもやはりNOBUっぽくてけっこう軽めです。

しかしまあ、マンハッタンの中国料理としては、ここは最高級に属するでしょう。
あ、そうそう、デザートがすごくうまいです。とくにマンゴプリン。お試しあれ。

メニューはスタッフにおまかせで大皿で人気料理を出してもらいました。

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棒棒鶏です。四川の代表料理。ソースが香り高く、うまいです。こういうの、もちろん好きです。芝麻醤は使ってませんね。香辣醤みたいな感じです。いやしかし、中華のこういう辛味発酵調味油ってのは奥深くてわかりません。で、ほら、胡瓜、千切り、ちょっと太いでしょ? 日本の胡瓜を使ってるのかなあ。カービーじゃないよね。

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これは牛肉のサラダ、ユズ風味のドレッシングだって。これも辛味油です。ラー油でしょうか。そんなに辛くはありません。
プチトマトとセロリと、そういう野菜との組み合わせが清々しくおいしいです。蕪の形も、茎を付けたまま縦に薄切りって、かわいいね。
でも、ユズはほんのかすかな風味で、聞かなきゃちょっとわからなかったかも。

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ティン・タン・スープ(Tin Tan Soup)っていうんだが、どういう意味だろうね。Tan は「湯」だろうけれど、では Tin は? ま、いっちゃえばワンタンです。上等な鶏ガラのスープです。そこにごく滑らかなワンタンの皮に包まれたふわふわの具が入っています。鶏肉、葱? レンコンもしくはクワイ? それで卵白なんでしょうか山芋のたぐいなんでしょうかこのふわふわ加減の素は。とてもおいしいです。上品で優しい。でもしっかりと味覚の芯まで食い込んでくるような。もっとも、これも作れといわれたら作れるような。その辺がビミョーです。
で、勘定書を見たら、これ、小椀だったけど、1人13ドル付いてるわ。これ、間違いでしょうね。5人で65ドルだもん。店のレビュー類のメニューでは、普通椀で1人前9ドルだもんね。絶対間違ってるわ。くそ。
うーむ、ここの店も、最後のビルはきちんと確かめたほうが良さそうです。

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北京ダックですね。1人1個。はい、この日はブーレイ・アップステアーズの三上さん、山田さん、そしてマリアさんと宝石デザイナーの石田さんの5人で参りました。
この北京ダック、あまり変哲がありませんでした。もちょっと脂があってもよかったです。期待されるしっとり感とパリパリ感、その強弱がなかった。そんでもって、ほら、このネギとキュウリ、ね、またでしょ?

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小龍包は豚と、ロブスター&ロブスター味噌の2種類。
針ショウガの黒酢が付いてきます。酢は味がきついのでパスして、酢を付けずにショウガだけ載せてそのまま食べてもぜんぜんだいじょうぶ。そっちのほうがおいしいかもね。
チャイナタウンに小龍包が名物のレストランがあるんだが、そこの小龍包はなんだか生臭くてぜんぜんだめでした。wakiyaのこれはそんなことはもちろんありません。上等です。

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これはFiery Chicken 火の点くような鶏、って意味ですね。でもふつうの鶏の唐揚げです。薄く黄色っぽく見えているのがそれ。赤い短円錐形のものは大量の唐辛子です。それをガーリックと日本の実山椒の佃煮みたいなので炒め合わせちゃったものです。量は多く見えますが、唐辛子は辛くて食べられません。唐揚げ部分だけを探りつつ食べます。唐揚げは、しかしぜんぜん辛くありません。どちらかというとプレゼンテーションですね、この料理は。

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タンツウ・シーバスって英語でいわれたので、これは糖醋(sweet and sour)和えのスズキの唐揚げ。そのままの味です。

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これね、Washu Beefの黒胡椒ソースってやつなんですが、ワシューってのは和州で、もともとは米国最北西部のワシントン州のことです。そこで和牛とアンガス牛を掛け合わせてアメリカ産の和牛ができあがった。それでワシントン州と日本の「和」を掛けて、こうした米国産の和牛を「和州牛」と呼ぶんですね。NOBUとかでもこの和州ビーフを使ったメニューがあるから、同じ仕入れなんでしょう。
とても良質のビーフです。お豆があるから豆鼓でも使ったソースかしらと思ったら、そうじゃなくてけっこうあっさり目のソースでした。こういう場合、でもちょっと牛の乳臭さというか、いくら上質のビーフでも特有の臭みが出てしまいます。塩胡椒だけでは立たない臭みが、こういう液体のソースだと出ちゃうのはなぜなんだろう。

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これはオムライスからの連想でしょうね。チャーハンを卵焼きでくるんで、その上からXO醤の餡を掛けた。ま、チャーハンの中に入れる卵を外側にした、というのでもいいけど。
私は餡かけチャーハン大好き。これは干しえびや干しホタテなどXO醤の味と香りが立っておいしうござんす。

で、じつはこれでも足りないというので最後に焼きそばなんぞを頼みました。

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上海焼きそば。
これがいちばんおいしかったかなあ。
麺はもちもち。しっかりと海鮮の具の味がしみ込んで、これ以上はないといううまみの凝縮系。
野菜もシャキシャキ。海老はぷりぷり。日本人、こういうのに弱いです。

それでデザートに行きました。
マンゴープリンの下から吹き出るドライアイスの雲!
マンゴープリンって、こういうふうに作るといいんだという見本形です。果肉の繊維が残って、さらに生臭さもマンゴーならでは。それが嫌味ではなくまとまっています。わたし、マンゴー好きじゃないんだけど、これなら食えます。
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これは杏仁豆腐の脱構築形。私としては中央のスポンジもソルベもいらないから、目の前で掛けてくれるアーモンドミルクと周りのアーモンドゼリーを山盛りで食いたい!
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というわけで、なんだかんだと腹いっぱい。
ここはファミリースタイルで取り分け式じゃなくて、個別サーブもあります。
値段はちょい高めですが、4人くらいで来て取り分け式でいろいろ頼めば比較的安く楽しめると思います。
ワインはボトルで50ドルからあります。取り揃えは多くありません。赤白各30種くらいでしょうか。でも、今宵はサンセール(60ドル)、ピューイ・フュメ(55ドル)、ヴーヴレー(55ドル)、と白のロワールで攻めて、それからアルゼンチンのTerrazasのリゼルバのマルベック(50ドル)で締めました。ワイン、これも市価と比べて2.5倍強とやや高めの設定ですが、おいしいものをそろえているようです。

あと、紹興酒、老酒などがメニューに見当たらなかったけど、どうなのかしら。

ちなみに、脇屋さんは1か月に1度の頻度でやってくるそうです。

October 25, 2007

Fiamma

2007-10-24
イタリアン
Fiamma
☆☆
206 Spring St.
Manhattan, NY.
(212) 653-0100

ほんと、おいしいレストランってのはここNYでも東京でも、とみに増えてきましたね、最近。
このフィアンマもそうです。SOHOにあります。スプリング・ストリートと6番街の角に近く、タウンハウスを使ったレストランです。というか、構えや作りはもうグランメゾンですね。じつはここはマイケル・ホワイトというシェフがやっていてそれなりの評判を取っていたレストランです。それが9月にすべてリノベートして、新しいシェフ、ファビオ・トラボッキFabio Trabocchi がそれまでいたワシントンDCのタイソン・コーナーにあるリッツ・カールトンのレストラン「マエストロMaestro」からスタッフ共々ここに移ってきた、というものです。

このファビオさん、昨年のジェイムズ・ビアード・アワードで Best Mid-Atlantic Chef に選ばれた人。また、ソムリエはラトリエール・ドゥ・ジョエル・ロビュションNYから引き抜いた人。こうなると自然に期待も高まります。ちなみにジェイムズ・ビアード賞というのはアメリカ料理界のアカデミー賞みたいなもんです。

で、この日は友人のマリアさんの誕生日ということで(じつはそれを知ったのはデザートのころ。お誘いがあったのでひょこひょこ付いてったらそうだったわけで、不覚!)、行ってみましたよ。タウンハウスの一階はダイニングルームと奥がキッチンなんでしょうが、この日はダイニングルームは開けてませんでした。私たちはそれで2階に通されます。けっこう広いです。
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われわれに付いたのはなんだかアメリカ娘って感じのあんまり有り難みのないカジュアルなウェイトレスでしたが、ま、いいでしょう。6コース120ドルのシェフズメニュー、そしてワインペアリング70ドル。ワインはみんなうまかった。いずれにしてもちょっと値段設定が高めです。でもカトラリーもお皿類も新調して、カネかかったんだろうなあ。

具体的に一品一品を検証する前に、いま、印象を記すと、おいしかった、でも、天才ではない、というものでした。

最初においしいレストランが増えているというふうに書きましたが、ほんと、そうなのです。おいしい。でも、こういうのを食べれば食べるほど、その中に天才というのはやはりなかなかいるもんじゃないんだなあって、いつも改めて感じるのです。おいしい食事をすればするほど天才の少なさを思い知るって、なんと不幸な食べ方でしょう。

で、天才とは何か? これがわからん。
天才は、会ってみないとわからない。
私のような常人には予測がつきません。
出会ってみて、おお、これが天才だ、としかわからんのです。
それが厄介です。

さて、ファビオ・トラボッキの名前からわかるようにイタリアンです。でも、このレベルになるともうフレンチと融合してます。
でも、最初に出てきたパンとバターがおいしかった。このバター、ヤギのミルクから作ったバターですって。脂肪分が多い。ちょっと黄色くて、酸化したバターみたいに(たとえが悪い)透き通ってます。で、口に含むとたしかに違う。でも、いちばん分かるのはそこにワインを飲んだときです。たちまち口の中がヤギのチーズで知ったあの独特の香気に浸ります。これはうれしいです。

アミューズは(イタリア語じゃないですけど)、タラとロブスターの身の上にタラのミルクの泡、と言ってましたが、つまりタラの白子でしょうね、それをエスプーマで泡あわにして、というおなじみの手法です。酸味とオリーブオイルの利いたタラとロブスターを、パセリとチャイブがアクセントにした軽い泡が包み込んで、なかなか鮮やかな出だしです。おいしいです。
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そして最初がこれ。
Il Granchio
Maryland Blue Crab, Spiced Eggplant, Fennel
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じつに肉感的なメリーランド産のブルークラブを薄切りにしてソテーした茄子でくるんで、そこにフェンネルのソース・ピュレです。ちょっとピリッとするのはピンクペッパーでしょうか? それともピメントの辛さかな? そんな味にチャービルの青みが加わって、これも悪くありません。いいじゃん、いいじゃん、って感じでコースが始まりました。

そうしてリードヴォーが来ました。
わたし、リードヴォー大好き。で、これまで食ったリードヴォーでいちばんおいしいと思ったのは、じつは25年前に群馬県高崎市の(しかしどうしてそんなところに行って、そんなところに入ったのか忘れたんですが、たしかなのは水戸支局時代だったということですね)、駅に近いビルの2階にあったフレンチレストラン(だれといっしょだったんだろう、それも忘れた。ひょっとすると1人だったかも)。そこで、ありゃ、たんに焦がしバターのソースだったのかもしれないけど、そのころはほら、きっとそういうもん食ったの初めてだったからうまかったのかしら? でも、リードヴォーは知っていて、そんで頼んだんだよね、そしてそれがほんとうまかったんだ。いいねえ、過去の記憶というのは。
前置きが長い。

Le Animelle

Roasted Veal Sweetbreads, Ovoli Mushrooms, Alba
Hazlenuts
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これはね、下にローストしたヘーゼルナッツがあるんです。その他はワイルドマッシュルーム。
でね、驚いたことに、上に載ってる白いスライス、これ、何だと思います? 松茸なんですよ、というか、松茸の味がするの。それで、え、イタリアでも松茸があるの?って訊いたら、シェフに訊いてきてくれて、これは「Ovoli」というんだって言うのよ。で、帰ってきてから調べましたよ。でも、オヴォリって、ネットに出てるのはちょっと違うような。OVOというのはイタリア語で卵っていう意味らしく、そのキノコ、卵みたいな形なんだって。「卵茸」? そんで、傘がつるんと茶色い。そしたら、オヴォリってじゃあこの下に敷いてある茶色くてちっちゃなキノコのほうじゃないのかしら? これ、ほら、ナメコみたいな、でもヌルヌルしてない、うーんと、茶色いエノキダケみたいなのあるでしょ、そっちのほうかなあ? 帰るときにシェフに会って、あれ、松茸だよねってもいっかい訊いたら「そうそう、松茸と似てるんだ」って言ったけど、どうなんでしょう? けっきょくこの日は判断つかずです。
(だって、ほら、これがオヴォリ(卵茸)の拾い画像ですもん。ちがうよねえ)
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で、そうそう、味は、大変よろしうございました。生の松茸(ということにします)、こうやってスライスして、小麦粉はたいてソテーしたチキンとか淡白な肉に載せてもおいしいかも。これはシンプルにオリーブオイルと塩とマッシュルームのジュで攻めています。イタリアンですねー。ヘーゼルナッツも合うの。グッジョブです。

次にリゾットでした。
Il Risotto
Organic Risotto, Pears, Grappa, Castelrosso Cheese
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なんと、梨とグラッパとチーズのリゾット。
うーん、甘くてしょっぱい。不味くはない。うまい。でもけっこうきつい。この量だから食べられるけど、これ以上だと無理。梨はソテーしてるのと、ちっちゃな生のダイス状のを最後に振りかけてるので食感にアクセントあり。茶色いのはグラッパじゃないだろうから、なんなんだろ。これにムスカデみたいな白ワインを合わせていたんですが、ペアリングとしてはそれじゃなお濃くなりすぎて、わたしとしてはその前のやや苦みのあるドライなワインが合いました。

そうしてお肉はキジでした。それにフォワグラ。ハックルベリーソース。下の棒状の野菜はパースニップ。パンチェッタは、どこにあったんだろう?
Il Faigiano
Roasted Wild Scottish Pheasant, Parsnips, Pancetta,
Huckleberry Sauce
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思い描くとおりの味です。それ以上でもそれ以下でもない。キジはしっとりと、これは真空低温調理ですね。


最後はチーズとイチジクとトーストしたアーモンド。
La Robiola
Robiola La Rossa, Figs, Toasted Almonds
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デザートは、もうこの辺になると酔っぱらっちゃったんですね、あんまりおぼえてない。ほら、写真撮る前に一口食べちゃってるし。はは。まあ、ふつうでした。
Il Cioccolato
Amedei Chocolate Torta Caprese, Fiore di Latt
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でも、この後に出てきたプチフール代わりのこれ、これがうまかった。手前のスプーンに載ってるやつ。
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これね、さっきと同じ梨なんですが、梨のゼリーね、その丸い中に、上等のオリーブオイルが入ってるのよ。これ、うまいわ。オリーブオイルって、甘いのにも合うんだねえ。すごいなあ。

ということで、けっこう腹一杯になりました。ワインも堪能。

これがシェフです。どっかのレヴューにmovie-star handsomeって書いてあったけど、ふうん、そんなにハンサムかしらって思いましたです。
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結論。
うまかった。でも、驚かなかった。
つまり、「まいったね」というのはありませんでした。
それに、ちょっと値づけが強気すぎるような気がします。いくらマンハッタン、家賃が高くても、SOHOですしね、120ドルのコースはやっぱり90ドルでしょう、これは。ワインも60ドルだなあ。
まあね、リッツ・カールトンだからねえ。

ザガットではきっと26点くらいは取ると思います。

June 15, 2007

Del Posto

2007-06-14
イタリアン
Del Posto(デル・ポスト)
☆☆
85 10th Avenue, NY., NY. (btwn/ 14th & 15th St.)
1-212-497-8090

June 07, 2007

つる屋(再訪)

2007-06-06
松坂牛焼き
つる屋
☆☆
東京・渋谷2-8-1 森ビル1階
TEL 03-5467-2989
http://2989.cc

June 04, 2007

ラルテミス・ペティアント

2007-06-03
フレンチ
ラルテミス・ペティアント(L'ARTEMIS PETILLANTE)
☆☆
東京都渋谷区神宮前2-31-7 ビラ・グロリア1F
03-5786-0220

June 01, 2007

懐石・祇園松むろ

2007-05-31
懐石
祇園松むろ
☆☆
京都・祇園花見小路通り新橋下ル東側 祇園神聖ビル6階
075(531)0300

May 04, 2007

Jean Georges

07-05-03
フレンチ
ジャン・ジョルジュ(Jean Georges)
☆☆
1 Central Park W.
(bet. 60th & 61st Sts.)
Manhattan, NY
212-299-3900

ずいぶん久しぶりのジャン・ジョルジュです。何年ぶりかなあ。5、6年かなあ。
そんなにご無沙汰だったのにはもちろんわけがあります。
おいしいと思ったことがないから。はは。ミシュラン3つ星に向かって何というだいそれたことを!
でも、ここがニューヨークで4つある「三ツ星レストラン」の1つだと知って、ミシュランというのは、あ、そういうものなんだあ、とすこし得心したところもありました。

で、3つ星獲得後初めての再訪です。
この日は、ブーレイで働いていたタマちゃんがもう6年になるんでそろそろ他のところも知りたいと言ってブーレイを辞めて、次はマリオ・バターリのデル・ポストに移るというのが決まったので、そのお祝いも兼ねてランチに行ったわけです。ものすごく清々しい春の日で、2時の予約の30分前にコロンバスサークルで待ち合わせしてセントラルパークをちょっと散歩しました。ニューヨークはこの季節がいちばんいいね。

さて2時に入ったらまだ満席です。バーカウンターのあるカジュアルダイニングの席もいっぱい。で、キッチンを見たらジャン・ジョルジュがいたんで軽く会釈したら出てきて挨拶してくれました。こないだ、アップステアーズで彼がデイヴィッド・ブーレイといっしょにいるときに私が現れたら紹介されたんで向うもなんとなく憶えててくれたんでしょう。で、テーブルが空いたらウェイターが来て「シェフがお造りしますがお任せメニューでよろしいですか」となりました。こういうの、楽でいいわあ。日本人だなあ。


(クリックすると大きくなります)

ジャン・ジョルジュがおいしいと思ったことがない、のは、どうもそのスパイスの使い方にもあります。ここが最初にオープンしたのは10年ほど前。そのまえに彼はマンハッタンでビストロ形式とタイ風フレンチのレストランを持っていました。かなりアジアのスパイスを多用する、エキゾティックな味わいを自分のオリジナリティにするべく意識していたんですね、きっと。

でも、それが私のような日本人には付け刃というか、とがり過ぎというか、はっきりいって素材と味付けをどうしてこんな組み合わせをするのかわけわかんない状態だったわけです。味がバラバラ、あっちに飛び、こっちに外れ、そっちにズドン、ってな感じ。んー、もっとわかりやすくいうと、うどんの汁にバニラとシナモンを混ぜてブルーチーズ塗った刺身を食べさせる、みたいな(うへー、わかりやすい)。

さて、突き出しに出てきたのはこの店の有名なエッグカスタードにクレームフレーシュのホイップを載せてキャビアを食べさせるもの。
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これはまあ、そのままの味です。塩加減がちょうどよろしい。でも、カスタードがちょっと熱を通し過ぎでややダマになってます。もうすこし口溶けのよい、滑らかなものに仕上げなければいけません。

続いて出てきた前菜がこれ。
何だと思います?
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ハマチの刺身と日本のキュウリの漬け物ですわ。それで目の前でこのポン酢を注ぎ入れてくれるところがフレンチなんでしょうね。はは。で、上には七味みたいなスパイスが軽く振ってあって、ポン酢もこれ、カボスかな? これはわれわれが日本人だからという配慮かしら? ハマチもこうやってキュウリと同じく筒状に切るおフレンチな発想。面白いね。で、味は、まあ、おいしいけど、なんか、微笑ましい、という言葉が思いついてしまうという印象。お家で作れますよ。キュウリの漬け物、ほんとにキュウリの漬け物だから。浅漬けの素つかったみたいな。

次のアスパラガスはおいしかったです。アスパラがおいしい。
それにモレル(網傘茸)のシャロンソースなるものがやはりこれも目の前で載せられます。
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シャロン・ソースって何?って訊いたら、シャトー・シャロンとかいうフランスのワイナリーのことを説明してたから白ワインのブール・ブランみたいなもんでしょね。モレルもちょうどいい火の通り。白ワインと言いましたが、ソースはなぜかアルコールがまだかなり残っているふうで、ブランデーの味がしました。それが狙い目なのかどうかは訊きませんでしたが、春のアスパラはとくに茎の太い部分がやさしく甘くすべてを赦すような幸せな味がしました。

次がジャン・ジョルジュらしいエビと冬茹(どんこ)シイタケの柚子フォーム仕立て
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ドンコとはいっても、なんとなく普通のシイタケでしたが、エビと一緒にグリルしてあって、この柚子の泡のソースの下に眠っています。けっこう柚子、ぐいっと迫ってきます。逆にエビは叩いてあるのか、とてもほんのりほわほわ風味でした。で、その下にさらにマヨネーズが敷いてあって、そのマヨネーズがぴりりと辛いのは青唐辛子でしょう。ってことは柚子胡椒を混ぜ入れたのかもしれないね。ジャン・ジョルジュらしいというのは、この感じ。この組み合わせ、けっこう力技。面白かったです。

そして魚になります。
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シーバス(すずき)がきれいなプチトマトのマッシュルームブロスの上に載っています。きれいな一皿です。
で、このマッシュルームブロス、甘酸っぱくておいしい。それだけでなく焦がしバターを混ぜ込んでいます。つまりブール・ノワール(黒)、もしくはノワゼット(焦げ茶)ていどにしたバターの風味がトップノートなのね。で、酸味はトマトウォーターか、あるいはそれにもちろんレモンか。甘みは砂糖でしょうかね。そんでもってふとカレーっぽい香りがかすめるのはきっとコリアンダーシードあるいはカルダモンが入ってるんだと思う。すずきが皮目に纏っているのはおそらくマッシュルームパウダーだと思われます。
おいしかったです。
でも、これ、自分でも作れそうです。今度のパーティーで作ってみましょ。

最後のお肉は、これは自分では作れません。素晴らしいスクワブ(雛鳩)でした。
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スクワブはスモークされていました。これでスクワブのあの血臭さというかレバー風味というか、そういう野趣が野趣のままぐいっと私たちの手元に入ってきてくれます。スモークというのは偉大な調理法です。焼き加減はいうまでもなく、おそらくいままで食ったスクワブの中でトップクラスに入る料理でした。ソースはスクワブのジュにマーマレードっぽく詰めたオレンジ。そこにミントがかぶさっています。ショウガもほんの少し? 白いのはアジアン・ペアつまり丸い形をした日本の梨です。これはただ甘いだけで不要でした。シャリシャリ感はいいのですが、甘くてスクワブの味をぼやけさせるだけです。レモンかオレンジのジュースに漬けてから添えるとかしたらワザありだったと思います。スクワブの上には細かく3切れほどキャンディー(砂糖漬けコート)したドライフルーツが載ってました。梨だったのかなあ?

そこでデザートとプチフールになりました。
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ランチというせいか、あるいは三ツ星を取ったせいか、あるいは春のせいか、今回のジャン・ジョルジュは味の整え方がすこし落ち着いた感じがしました。で、おいしくなったか、というと、うーん、スクワブは見事だったけど、ほかのは私の中ではやはり☆☆かなあ。なんでだろう? 何が違うんだろう? いや、けっしてまずくはないんですよ。

同じ☆2つでも、ここのレヴューに書いてあるレストランで、書き方が違って絶賛しているところもありますが、それは期待値に対してのその期待のプラス方向での裏切られ方、あるいは頑張り方、が私を感動させるのです。ただ、こうやって振り返って見ると、☆の付け方はけっこう絶対値です。☆☆のレストランはいまいくつあるんだろう、でも、振り返って思い出してみても、この☆☆のレストランたちは私にとってはジャンルは違えど、みな同じレヴェルの味がするのです。それは「とてもおいしい」ということなんだけどね。でも、じゃあどうしてジャン・ジョルジュには「とてもおいしい」と、そういうふうな書き方にならないのか?

わっかりませ〜ん。

つまり、☆の数はかなり客観的な満足度の評価、書き方は、ずいぶんと主観的なあれやこれやの思い、ということですわ、いずれにしても。
だもんでそのつもりで読んで下されまし。わたしも自分が主役な人間なのですわ。はは。

ちなみに、この日のランチは、予約時間どおりにテーブルが空かなかったせいか、バーカウンターで頼んだカクテル計2杯(計30ドル相当)とかデザートに付けた紅茶とか、ぜんぜんビルに付いてませんでした。ジャン・ジョルジュお知り合い値段ってことか。したがってお値段は2人で料理各55ドル、白ワイン(nigl=ニーグルと読むオーストリアのワイン。安くてうまいの)55ドル、それに発泡水代と税金とチップ合わせて213ドル払いました。ランチはお得っていうけど、料理の55ドルだってキャビア出してこれはないわね。ぜったい1皿分くらいおまけしてくれてるね。

というわけで、かなり満腹・満足で出てきてもまだ空は4時45分の春の明るさでした。

April 11, 2007

饗屋 Kyo ya

07-04-08
和食
饗屋(Kyo ya)
☆☆
94 E. 7th St.
New York, NY., 10009
212-982-4140

うーん、うまい。
こんなにちゃんと美味い店ができたのだ、ニューヨークに。しかも、イーストビレッジに!(7丁目のファースト・アベニューとアベニューAの間です、ってかファーストに近いけど)。食べ終わったときの感想は「こんなところに……!」でした。

素晴らしい店です。和食の店です。フュージョンではない。きちんと正しい和食の店。こういう店は潰してはいけません。まだ開店して10日くらいだと聞きます。
私たちが行ったこの日は日曜でしたが、ですんで客が少なかったのだと思いたいが、聞くとまだやはり知られていないようで、客足は鈍いと。看板出してないからかもしれないけどねー。
みなさん、ほどほどに口コミで知らせましょう。美味しいものを知っている人だけに知らせましょう。そうして適度に満杯の店に育てましょう。並ばないと入れない店にしては私たちが困ります!

前口上はそのくらいにして、なにがいいのかというともちろん出汁なんですけど、そのうえで味の塩梅です。ニューヨークの普通の和食の店はみんなお弁当屋さんの味になってしまいます。なんでもない炊き合わせや煮付けが真っ黒だったりしてがっかりします。それがここでは京料理のリズムをもってすっくと存在している。そこにあるのは同時に、押しつけがましくないほんのちょっとの気の利かせ方。

半地下の入り口を開けようとしたときに気がつきます。扉は重たい鉄製です。こんなずっしりした扉はふつうはグランメゾンのものです。そこからややUターン気味の回る動線に沿って客席部に入るとイスとテーブルがまたきちんとしています。この日はアップステアーズの三上さんと、パナソニックの会長夫人の3人の席。日本酒でしょうか、やはり、ということで手取川大吟醸を頼みました。73ドル。日本酒は高く付くのはしょうがありません。でも、この冷やし方、きれいでしょ? 効果的かどうかはべつにしても。ま、すぐ呑んじゃうんだしね。
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で、気持ちよく始まったテーブルで適当に料理を頼みました。その中から、一品目にきちんと「向付け」にあたる刺身が出てきました。鯛、ハマチ、サーモン、赤身と魚自体に珍しさはないもののきちんと揚がった場所を言ってくれます。それぞれに茗荷とかラディッシュとか紅タデ、花穂じそといった芽づま・穂づま、けんが載っていて、飾り包丁も入っています。サーブしてくれたミキさんは、山葵の隣に添えられていた、番茶で戻してきらきらと花開くようになった柏の実(バクダイカイ)を、漢字では「莫大海」当て字で「爆大開」と書くことをわざわざ紙に書いて教えてくれました。

二品目は生湯葉と雲丹の出汁合わせですが、湯葉の質もよいし実に濃厚ながら上品な味に仕上がっています。
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三品目は胡麻豆腐。これがまたアイディアですね、さいころ状に胡麻豆腐を切って、ガラスの器に入れて冷たいだしをたっぷりとひいてあるのです。で、季節の筍とオクラが散らしてあります。水貝の風情です。でも胡麻豆腐です。きれいだし、胡麻豆腐のくどさが口の中で出汁で洗われて、これがいいんだなあ。気が利いている、というのはこういうことです。
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続いて牛タンの味噌漬け。これもまたいい味してるんだ。タンの臭みがまったくないし、味噌の塩み、甘みがちょうどよい。で、真ん中のトマト、これ、日本のみたいに甘い。どこで買えるんだろ。
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次は大和芋の海苔巻き。いま、NYでは大和芋も手に入るんだねえ。
これはまあ普通だったけど、次のノレソレは酢にはカボスを使ってるのかなあ。ふつうの醸造酢の味じゃなかった。これも気が利いてる。
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私がこの日いちばんほほうと思ったのは、じつは次に頼んだ大根の田舎煮です。青梗菜と長ひじきが添えられています。そしてこの大根、めちゃくちゃ鰹節の味がするの。カツオなのかサバ節かもしれない。とにかくぐいっと味がしみこんで、それまでが上品だった分、なんだかうわ〜ってうれしくなっちゃうというかほこっとするというか、やられましたね、こりゃ。こういう序破急というかね、緩急というか、ツボというか、知ってますね、こいつぁ。
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そのほかにもね、あ、この辺で2本目の酒になったのかな、澤ノ井の木樽仕込みみたいなの。100ドルくらい。いや、酒が旨いわ、こういうのといっしょだと。で、白魚の唐揚げとか、イイダコと里芋の煮物とか、エビしんじょとお焦げの油炒めあんかけとか、ジャガイモ饅頭のキノコ餡とか、いや、いろいろ食べた食べた。

これはラムの北海道風のグリルですね。まあ、ジンギスカンだれです。漬け込んであるから肉がやわい。これはジンギスカンにうるさい北海道人の私にはやや中途半端だったかったかな。別にタレも付いてるんだけど、ちょっと甘い。もそっとスパイス、ショウガとシナモンかな、効かせてもおいしいかも。
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ほかにも、サバの味噌煮が、これがちゃんとちゃんとじつにうまかった。味醂の味がいいのかなあ。ニューヨークではどこもかしこも西京焼とかで出てくる銀ダラも、ここでは「赤酒煮」として供しています。

そう、つまりね、料理屋も頭を使わないとだめだということかね。
たとえばお茶を、こうやって客に選ばせるという楽しさもいい。これでカネが取れるんですもん。1ポット4ドルですよ。で、この青年はヤンくん。在日韓国人だそうです。だから日本語は母国語。ワインや酒にもなかなか詳しい。で、なんと、むかし我が家に同居していた信ちゃんと、かつて「酒蔵」で一緒に働いていたそうな。「信さんとマイミクシでつながってますよ」ですって。縁は異なものですなあ。
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ニューヨークでは珍しいことですが、ここは鮨を出しません。鮨を出さずにニューヨークで和食屋をやれるか。これは大命題。だから、つぶしてはいけないのです。

板長は園力(その・ちから)さんといいます。45歳だっけ? そのくらい。
で、厨房には煮方やデザート係など5人も日本人が入っていました。みんな若くて仲良さそうで、これだものしっかりしているはずです。

あーおいしかった。で、お会計は最初のビールから始めいぇこんなけ食って飲んで、最後に飯も頼んでデザートも食って、料理は1人90ドル。酒は1人60ドル。そこにチップと税金で、1人190ドルずつ払いました。
必ず再訪しましょう。
もういちど念を押しておきますが、みなさん、味の分らないヤツらにはここは教えないで、宝物にしましょうね。

February 26, 2007

Ristorante MASSA

07-02-17
イタリアン
リストランテ・マッサ
☆☆
東京都渋谷区恵比寿1-23-22
03-5793-3175

NYの伸ちゃんが東京に出てきたので2人でお昼をしようと、この日は彼の選んだ店にランチに。で、わかったのがここがあの「イタリアンの鉄人」神戸勝彦の店だったということです。恵比寿の駅からちょっと行ったところに、こじんまりと、席数わずか30足らずじゃないでしょうか。でも清潔な四角いデザインで、テーブルもゆったり。
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ランチは4200円のコース。それにワインペアリング3700円。おいおい、これってかなり安いかも。だって、アペリティフの自家製のリモンチェッロのソーダ割りから始まるんです(まあ、このリモンチェッロの味は普通でしたが)。ところがアミューズを出されてにんまりしました。
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巻いてあるのは生ハムですよね。で、何を巻いているのかというと、これ、自家製の干し芋なんです。そんなに乾燥させていない、しっとり感の残る干し芋をキューブに切って、そこに生ハムを巻く。面白いじゃありませんか。で、きちんと美味しい。生ハムも干し芋も互いに美味しくなる。これは期待できる出だしです。

次に伸ちゃんは前菜の盛り合わせを頼みました。
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手前から時計回りでワカサギの南蛮漬け(イタリア語で言われたけど忘れました)、チーズポレンタに雲丹を載せてトーチしたもの、赤ワインでマリネした鮟肝にスダチのジュレを載せたもの、スプーンに載った海鼠の三杯酢みたいな和え物、カワハギの紫蘇の香りのマリネ、中央の赤いのはカポナータです。

ぼくは平目のカルパッチョです。
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これね、掛けてあるオリーブオイルに梅酒の梅を刻んだものが混ぜてあるのです。で、その梅がオリーブオイルのフルーティーさと相まって、とてもよいの。こういう使い方もあるのね。いいじゃな〜い?

でさ、次はパスタが2つ続く。
第1のパスタは、伸ちゃんが白魚と菜の花、私がタラの白子とマッシュルーム。パスタはいずれもキターラ。うどんみたいなもちもちの食感。これも美味しいじゃないの、ちょっとぉ〜。

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第2のパスタは、私が京芋のニョッキで、タケノコの入ったタレッチオチーズのソースに黒トリュフをかけたもの(たしかトリュフ代で500円ほど上乗せかしら?)。
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伸ちゃんは平貝とインゲン、蕗の薹のピュレや青唐辛子のソースのトロフィエ。手でひねった短めのパスタですね。
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これは私のほうがうまかったけど。いや、上質ですよ、ここは。

メインは私は真鯛と聖護院かぶらのグリルに寒じめ法蓮草という、京都のこれまた香り高い法蓮草を載せたもの。オレガノのピュレのオイルがアクセント。真鯛は焼き具合もたいへんよろし。

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伸ちゃんはエゾシカのグリル。白インゲンのサラダを敷いてバルサミコのソース。葉セロリを渡してありました。で、フォワグラのソテーを追加してましたね。

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デザートはこれ。
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フィンランドのアラビア社の青いお皿に、紅茶のジェリー、アーモンド・アイスクリーム、そしてグレープフルーツなんかが載っていて、ピンクの粉はフリーズドライのイチゴのパウダーですわ。

なんだか出てきたものを羅列しただけになってしまいましたが、わたし、ここ、嫌いじゃありません。
素材の取り合わせ、組み立て、いちいちが納得します。サービスがちょっとぎこちなかったりしますが、夜はきちんとしているのかもしれません。でも、このランチコースでワインも合わせて結構飲んで、それで8000円、つまり70ドルしないって、こりゃ素晴らしいわ。
いつか夜に再訪したいものです。

January 03, 2007

Danube

2006-12-27
フレンチ-オーストリア料理
ダヌーブ
☆☆
30 Hudson St. (TriBeCa)
Manhattan, NY.
TEL ; 212-791-3771

「ダヌーブ」もしくは「ダニューブ」と発音します。オーストラリアを流れるドナウ川の英語読みです。1999年、デイヴィッド・ブーレイがオーストリア料理の潜在的な可能性(というか、まあ、NYに新しいものを紹介したいという彼の志向の一環でしょうが)を引き出そうと、当時弱冠26歳だったマリオ・ロニンガーというなかなかのシェフを連れてきて出した店です。開店当時はこのマリオの才気がブーレイを彩ってとてもおいしかった。ところがこのマリオが2003年に辞めてオーストリアに帰ってしまう。それからダヌーブはシェフがいないという困ったことになりました。裏話をすると、厨房ではマリオとブーレイがその前年に出版した"East of Paris"という料理本を参考書にしてその日その日の料理をつくっていたわけです。

で、このときにダヌーブの味はどんどん落ちていきました。味は濃くなるし、バリエーションはなくなる。何年かぶりに訪れても同じものしか出していない。しかし2005年のミシュランNYはそんなダヌーブに2つ星を与えるのです。ミシュランは、どちらかというと味よりも格式みたいなものを重んじる傾向があるんじゃないかと思います。その点では、ダヌーブはサービスはフレンドリーながら内装もオーストリアの画家クリムトをテーマに黄金色を多用した立派なものですし、建物もしっかりしている。きっとそういうことで2つ星だったのでしょう。

ところで、そのときの暫定シェフが昨年春にとつぜん辞めました。で、次のシェフに抜擢されたのがクリス・ラモンというNY出身の20代の若者でした。そのクリスが、ぜひきちんと食べにきてくれと言うので、この日の夜に行ってみたのが今回の食事でした。

もちろん、これはダヌーブでいつも出される料理とは少し違うでしょう。私たちが4人で食べたこの日の皿はなによりオーストリアの感じがあまりしません。しかもシェフが頑張って作った特別料理です。ですのでふつうにここに食べにいくのにあまり参考にならないかもしれません。しかし、いえることは、料理の基調音というのでしょうか、いちばん基本として流れている土台みたいなものの和音が、とてもおいしくやさしい、ということです。もっと簡単にいうと、まあ、塩味なんですけどね、これがとてもいいので料理が、どんなアクセントをつけようと、あるいは肉料理の強いソースでも、そんなに押し付けがましくならないのです。

きっとこれは彼の作るどの料理でも同じように流れているハーモニーだと思います。ですので、ここはお薦めです。ダイニングスペースはそんなに大きくないしゆったりとしたテーブルは位置ですので、クリスが差配するのに無理は生じないはずです。わたしはここで☆2つとしましたが、これはあくまで控えめな評価です。鮨屋と同じでなじみになれば出てくるものは違う。これは本来は料理店としてはいけないのでしょうが、近所の小料理屋だと思えば赦せるし、その方がうれしい。つまり身内評価と思われるかもしれない☆☆☆をぐっと我慢して、敢えての☆☆。これならだれが行っても文句はいわないだろうとの読みです。

最初のアミューズとして出てきたのは、ちょっと聞きそびれたのですが、砂肝みたいなエスカルゴみたいなそんな食感の何かの上にウニのソースが載っていたもの。下にはオランデーズみたいな柔らかなソースが敷いてありました。とてもやさしい幕開けです。

これはほんのちょっぴりですが、ローステッドダックのスープ。5種類の冬のスパイス入り、だそう。泡のスープで、真ん中にそのローストした鴨のレアな肉がひとすじ置いてあります。スパイスは種子系です。スターアニスとかクローブとかコリアンダーとかでしょう。でもぜんぜん重くならないの。おいしいです。うれしくなります。

これはスズキの、きっとポーチでしょうか。ほわほわです。下に、セロリルーツのピュレとソテーしたリーク(ポロ葱)が敷いてあって、ソースはいまの季節に出回っているタンジェリン(みかんですね)。この絶妙な酸味と甘味がクリームのようにとろとろに調和しています。どこがオーストリアなのでしょう、という突っ込みはナシです。うまいんだから。

ロブスターにはリンゴの角切りを合わせてきました。ロブスター・ビスクのソースです。下のピュレは何のピュレだったかなあ。これもフルーツの酸味で重くない。この辺はブーレイの影響でしょう。爪を立てたプレゼンテーションも考えてますわな。(写真撮ってるって聞いたからと、あとで言ってきました)


肉料理に行く前に赤ビーツのラビオリです。中にはカボチャとオーストリアの濃厚なチーズが入っていました。赤キャベツのソースだとか言っていたかなあ。真ん中の緑は何だったっけ? おいしくて忘れた。ほんと、見た目のどぎつさとは裏腹に、すごくよくまとまっている完成品の印象があります。これはきっとダヌーブのこの冬の定番料理だと思います。こういうラビオリを前にも食べたことがありますから。そのときは香ばしいカボチャのタネのオイルのソースでした。それもおいしかったです。

肉の一品目はコロラド産のラムでした。白と黒の胡麻をまぶしてソテーおよびロースト、それで切り分けた。この胡麻の香ばしいこと。それがラムの香味として合うんだなあ。こんなバランスの取り方があるとは知りませんでした。下には茸のソテーが敷いてあります。

で、お次はワイルドグース。野生の雁です。ジビエです。これをスロークックした。で、ブラックカラントみたいなベリーのコンディメントと肉のソースで食わせる。定番ですが、そこに緑の枝豆の煮たのを添えて、シェフは日本人の私たちに表敬をしたわけだと受け取りました。うれしいねえ。しかもこの枝豆が肉の重さのバッファとなって、いわゆる箸休めね、そういう役目を果たしてくれて、単なる飾りではないところがいい。

ほんとは上記の野生の雁で終わりだったそうなんですが、どうせならこれも食ってよと出してきたのが鹿肉とフォワグラです。しかもけっこう量があるの。しかもパスタ添え。何のヌードルだったか……いや参りました。まずいはずがないが、これで腹はち切れそう。ひー。

お口直しのオレンジとヨーグルトのソルベ。ベリーのソース。


デザートの最初はバニラのアイスクリームにメレンゲのなんか。忘れた。
しかも、写真撮るの忘れたけど、このあとに焼き菓子であるチョコレートのケーキとかスフレも出たわけで。

はい、大変満足致しました。
ワインも、しこたま飲みました。
驚くくらいおいしかったのは
カリフォルニアのサンタ・ルチアのピノノワール。
ワイナリーとヴィンテージ、忘れてます。
後ほど確認の上。

October 10, 2006

Degustation

2006-10-09
タパス(スペインの小皿料理)
Degustation(デギュスタシオン)
☆☆
239 E. 5th St. (bet. 2nd & 3rd Aves.)
NY., NY., 10003
TEL 212-979-1012

ひさしぶりにニューヨークでまた来ようと思うレストランに巡り会いました。
この日はブーレイのテストキッチンに用事があって出かけたのですが、そこでまずはフェラン・アドリアご一行さんと再会してなんだらかんだらとわけのわからんスペイン語で「NYで行くべき日本料理もしくはアジア料理の店」なんかを訊かれて答えに窮していたのですが、ほんと、ないんですよね、Upstairs 以外に薦められるところって。

ま、それはいいや。で、フェランたちが帰ってデイヴィッドとトーマスとぼくとで打ち合わせを始めたところに、こんどは京都「菊乃井」三代目ご主人の村田吉弘総料理長がいらして、なんと3時から6時半までみっちりとデイヴィッドと料理談義。それの通訳を務めるはめになってしまって、まあ、村田さんが講談社インターナショナルからちょうど英語版の「KAISEKI」という本を出したということもあって、それを見ながらなんだかんだの花が咲いたわけで。中でも興味深かったのは、いま日本料理の科学的な研究を行っていて、たとえば昆布のだしはいままでは冷水で一晩置いたものがおいしいとされていたんだけれど、どこぞやの大学との共同研究で、「60度で1時間」がもっともグルタミン酸が多く抽出される目安だとわかったんですって。なんか、30%も多いらしいですよ、みなさん。

で、そうした話も終わって、村田さんと講談社の内山さんがお帰りになるところで村田さんから「ちょっとやりませんか?」といわれてほいほいと付いていったのです。で、4日からNY入りしていてもうフレンチも鮨も飽きたという村田さんらが行ったのがこの店だったというわけ。(ずいぶん前口上が長かった)

ここはあのジュエルバコのジャックとラムのグレイス夫妻がそのジュエルバコの隣にオープンした姉妹店、というか、店そのものも中でつながってまして、デギュスタシオンがカウンター席16席だけだったので座れず、ジュエルバコのボックス席に陣取って(こっちのほうが結果的に楽ちんでした)、デギュスタシオンからタパスを8種類くらいかなあ、で、最後に巻物を4種類ほどジュエルバコから、というふうに、けっこうふんだんにお任せでいただきました。

このタパスがあなた、なかなかいいのはどうしてかというと、塩加減がいいんですね。NYのアメリカ人用の店にありがちなくどさ、濃さがなくて、ちゃんと繊細。訊けばシェフはスペイン生まれで15歳のときからアメリカで住んでいるというウェスリーくん(27)。若くて、最後に村田さんがあいさつに行ったら、いやいや、ちゃんとカウンターから出てきて、まあ、途中で店のひとも御大が京都の老舗料亭のビッグショットだって知ったんでしょうね、きちんと礼を尽くしてあいさつしていました。アメリカといえど、こういう世界は上下関係ってのが、っていうか、敬意の表し方というのは同じです。

さてその料理ですが、いずれも一口料理もしくはそれに類した小皿料理で、中でも感心したのはスウィートブレッド(子牛の胸腺=リードヴォー)を唐揚げみたいにしてそれをキュウリのヨーグルトソースとキュウリの千切り、香草で食わせるというもの。食感よろし、キュウリの清涼感がよろし。いやいや、べつに特に奇を衒ったものはないんですが、1つ1つが丁寧かつなんとなく工夫が施してあって、「感動」というんじゃないけど、そうですね、「感心」するんです。得心する、なるほどと思う、いちいちうなづいてしまう、そういう料理。小さなコロッケには控えめなアリオリのソース、ホタテのグリルにはピンク・グレープフルーツのきれいなソース、フォワグラのソテーもザクロのジュースをあしらったり、結果として出てくるものの味のバランスがとてもよい。村田さんとふたりで「なかなかですね」と顔を見合わせておりました。20代半ばで出てこない料理人はダメなんだってね、やっぱり。

で、その村田さんの若いころのとても興味深い話や料理界の人間像のことなども聞きました。が、まあ、それはプライヴェートなことなのでここに出すには許可がいるでしょう。ただ、料理を作っていていつも考えることは「ミッション」ってことだっておっしゃっていましたね。「メシ屋ですからね、それを通じていかにひとを幸せにするか、うれしくさせるか、それがミッションなんですよ。そのために仕事してるんです」って。

いずれにしても、ここには近々再訪して、写真を掲載しましょう。きれいなのです、料理が。
この日は、最終的に4人になって、料理は285ドル、ワインはスペインの微発泡の白が50ドルでなかなかのものが飲めました。

January 16, 2006

飄香(ピャオシャン)

2006-01-15
老四川
飄香(ピャオシャン)
☆☆

東京都渋谷区上原1−29−5
BIT代々木上原001
TEL 03-3468-3486


五人でわいわい。なのでコースもあったけどアラカルトでだいたい2人前ずつ頼んで、こんなに種類を味わえましたん。
前菜
 よだれ鶏
 牛すね肉の緑山椒ソース
 干し京人参とピーナツの四川風和え
鴨のピリ辛炒め
悪大王のスペアリブ
牛すね肉と春雨の土鍋
ターサイのかに味噌あんかけ
豆苗の塩炒め
大正えびの唐辛子炒め
四川チャーハン
レタスチャーハン
ニラ麺
担々麺
揚げパン
蒸しパン

デザート
 杏仁豆腐
 ココナツミルクのお汁粉
 イチジクと白キクラゲ
 ココナツ団子
 プーアール茶

酒類
 生ビール
 8年もの紹興酒ボトル
 白ワイン マコンのシャルドネ

いやいや、評判の四川料理だというので期待していたら予約がいっぱいで取れないかも、との連絡。しかし直前キャンセルがあったらしく、セーフ! こいつは新年から縁起がええわい。

で、思いっきり頼んでみました。
やっぱ四川はうまいよねえ。
油と発酵調味料と辛味の合体。

ここはね、そう本格的で重層的な四川を味わうというより、ややシンプルで直球気味の思い切りと気持ちのよい料理が出てきます。中でも「悪大王のスペアリブ」というのは今回注文したものの中でも一番手の込んだものだったけど(八角やシナモンや山椒で煮込んでそれをさらに揚げて五香粉とかクミンとかをまぶすんだ)、それでもすっとストレートにこちらに届く。「よだれ鶏」という四川の有名な前菜にしても、いろんな手法の唐辛子の辛味と油やピーナツや葱や酢なんかの組合わせが複層的なんだけど、きちんと1つのものとしてまとまっているの。いいでしょ。
しかもしかも、この店の魅力の1つはウェイティングしてくれる女の子たちがとても気持ちいいってこと。中国からの留学生なんだって。2年半しか日本にいないのに、もう日本語ペラペラだし、最後に何食べたか確認したいと(押し付けがましい)お願いをしたら食べた料理の名前を日本語でメモってくれました。すごい。料理を運んでくれる時もひとつひとつ笑顔だしねえ。こういうのって、料理屋には絶対必要なのに、若くて可愛い子がサーブしてくれるところに限ってそういう笑顔がなかったりして、その落差に愕然とすることもすくなくないの。ここは、そういう意味で、中で調理している5人ものスタッフの寡黙さと機敏さと、ウェイティングの2人の中国の女の子の、その姿勢そのままのとてもいい店でした。

予約が取りづらいのも当然。
だって、これだけ食って飲んで、1人7000円で済んだんだよ。

同じ四川でエピセに行けば料理だけで1万円ですけど、ここの料理は料理だけでは1人5000円見当。つまり、エピセの半分のレヴェルだと金額に見合うわけですが、料理のレヴェルはエピセの65〜70%の力量です。つまり、すっごくコストパフォーマンスがよろしいということになる。

人気というのはこういうことなんです。
四川といいますが、チャーハンもはらはらと、見事でした。
今回はキャンセル待ちということで3日前に予約が必要という四川の各種香辛料をまぶした「鶏の丸揚げ」というのを食べられませんでしたが、次回はぜひ正規予約でトライしましょ。

グッジョーブ!

November 29, 2005

アギデジ

2005-11-29
アギデジ
☆☆
渋谷区渋谷2−5−9 パル青山1F
03−5464−0565


キムチ盛り合わせ
海鮮チジミ
焼き肉(豚トロ塩、豚ロース醤油漬け、牛はらみ、辛味豚骨付きカルビ)
ホルモン鍋
マッコルリ(柚子入り)

温泉から帰ってきてなんだか無性に辛い鍋が食いたくなり、男4人で出かけたんだが、いやいや、おいしいねえ、韓国料理は。

ここのおかあさん、日本は牛が高くて商売にならないよ、と、7年前に豚で店を開いた。これは正解だよね。流通の関係で日本は豚が美味いんだから。

というわけで焼き肉から軽く行ったが、辛味骨付きカルビってのが最高。唐辛子の辛さが豚の脂分とうまく混じって、しかもその唐辛子の味が辛味だけではなく野菜としての味を残してるの。韓国でソウル五輪を取材してた数週間、唐辛子=チリってのは辛味調味料だけではなくてうまみ調味料でもあるのだと気づかされましたが、ここのもそうだね。

それとここのチジミ、生地が絶品です。焼けた焦げ目の部分がシャリシャリして、生地自体とても軽い。重曹でも入れてるんだと思う。お頼みあれ。

で、鍋はもうあなた、言うことなし。ホルモンの甘み、唐辛子味噌のうまみ、やっぱ、発酵食品にはかなわない。具を掬い終えて最後にうどんを入れて煮込んで、わてら、そのうどんをおかわりしました。うーん、あったまったあ。満足満足。

もう一つの味はここのおかあさんだわね。このおかあさんで☆1つ増しです。
「マッコルリに柚子入れたよ。やっと安くなったよ、よかった。秋には柚子なくて高かったよー。250円だったから。」「牛、1キロ6000円よ。とても出せないよー。1皿2500円で出さないと商売できないね。でも、だれ食べる、そんな値段でー? だからうちは牛はらみはサービスね。豚と同じ値段で出してる(980円)んだよ」

4人でしこたま飲んで食って、1人5000円弱でした(うち酒代が1000円)。