魯山人
2007-06-28
京懐石
魯山人(Rosanjin)
☆なし
141 Duane Street, NY, NY 10013
212-346-7999
論評に値しません。
でも、書いちゃうのは、鳴り物入りで登場した「本格京懐石料理の店」と騒がれているからです。
この店がトライベッカにできてNYタイムズでも紹介され(評価ではなく、紹介記事です)、あちこちでここの経営者が(韓国人で高校から日本で教育を受けた元商社マンのジュンジン・パークという人)「まだニューヨークに紹介されていない日本料理がたくさんあるのに、創作和食に走るのもどうかと思う。江戸前はこういう味、バッテラはこういう味という、かくあるべき味をめざしたい」と語っているのを聞いたら、これは食べてみなくちゃと思うのは当然でしょう。
でも、食べてみて、あきまへん。一部で、京都の「たん熊」で修行した料理人が作っているとされていたのですが、本当でしょうか。とても信じられません。このどうでもよさは、ミッドタウンで高級懐石を自称する「杉山」と双璧のどうでもよさです。
酒の取り揃えが少ない、ワインがない、ビールはサッポロの瓶だけ、というのは料理とは関係ないのでまあこの際は問わないことにします。
で、150ドルのコース。
さいしょからいけません。
先付けなんですが、お盆の上に3つ並びました。
なにもいわない。
そういや、日本ではなにも説明せずに出してくるなあ、と気づくまでに時間がかかりました。
訊けばよかったのか。でも……(あとでわかります)。
さて肝心の料理は、
右に、鱧の梅肉。鱧が死んでいます。くたっとして、海老を茹でて叩いたのかと思った。
真ん中にトコブシかアワビの殻にその貝の切り身とホタテが入っていて、そうして、なにを思ったかマヨネーズベースのグラタンになっています。おいおい、どこの修学旅行の旅館料理だ? おまけにレンコン乾いちゃって硬いの。
左側に葛豆腐。枝豆がぽろぽろと入ってたけど、なんだか味がおかしい。微妙に安い子供のお菓子の味がする。そんで酢も入ったつゆの味がきつい。
で、支配人らしき年配男性に「これは何ですか?」と(やっと)訊いてみることに。
すると、「水無月でございます」
はい、それはわかっております。三角に切って葛なら、これは6月の和菓子「水無月」に模した料理です。でも、私が訊いているのはどういう味が入っているかであって、名前ではない。
このおじさん、ダメです。よくわかってない。
というのも次がお椀で、しかもまたまた同じく鱧が出てきたんですけど、出汁がとても燻香が強くて、ふつうは上品な本枯れ節を使うんですけれど「これは荒節ですか?」と訊いたら、この支配人、「ええ、うちはちゃんと出汁をひいております」。
そんな、訊いていることは違うでしょう。
しかも「うちは出汁を引いてる」って、そんなこと自慢してどうするのよ。
おまけにこの鱧のデカいこと。それに、向うっかわに写ってるの、あれ、揚げ豆腐です。なんで? どうして揚げ豆腐なんかがお椀に入ってるの? わけわかりません。味のバランスが崩れるでしょうが。
向う付けのお刺身が次に出てきたんですが、この器、織部ですが、いい感じでした。熊本オイスターがおいしかったです。そんなけ。で、出汁醤油とたまりとが2つ用意されてるんだが、これも説明ないんで、アメリカ人はわからんと思いますよ。どれをどっちにつけて食べるのか。
次はおしのぎなんでしょうか、お鮨でした。トロと穴子のどちらかを選んでほしいと言われました。
1貫、つまり2個くるなら、べつに一つ一つでもいいんじゃないのかしら?
でも穴子を頼みましたら、この穴子、詰めがしょっぱいのと、穴子がばさばさしてるの。うそだろ、おい、ってな味。おまけにガリをこんなふうに三角に畳んだら食べづらくてしょうがないじゃないの。一枚一枚剥けっていうわけ? それともガブリと? 私は後者をやりましたが、結構噛み切れないものなのですよ。はは。
でさあ、次のがまた観光旅館料理。カレイ(だっけ?)の南蛮。酢の物ですな。下にはウニとなんか(忘れた)のソース。
うーん。なんじゃい、これ。居酒屋「力」(ミッドタウンの飲み屋です。リキと呼びます。まあまあうまいよ)あたりで出てくれば、お、酒が進むねえ、でいいのかもしれないけど。
焼き物は鱒かな。手前はアスパラの湯葉巻き。周りに垂らしてあるのはバジル入りのオリーブオイル。
そんで次がウナギですからね。
最後のご飯は餅米。うえに鯛かなんかが載ってて、空豆? そんで一汁一菜。
なんか、ご飯、丸まっててお握りみたい。懐石で餅米って出るのかなあ。寡聞にして知りませんでした。
デザートは写真撮るのもやめました。クリームブリュレかバニラアイスか。
この店は早晩、潰れると思います。
やれやれ。
わたしたち、この日、この店で出てきた料理のこと、ひと言もテーブルで話題にしませんでした。こんなに料理好きの面子がそろってたのに。可笑しいねえ。