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2001/02「リアリティとは何か?」

 このところのアメリカのテレビ業界は「リアリティTV」なるもので大騒ぎである。「現実テレビ」とでも訳すのだろうか、昨年夏に三大ネットの1つCBSが「サバイバー(生存者)」という番組を放送したのがきっかけで生まれた。

 「サバイバー」は究極の生き残りゲーム。老若男女16人が39日間にわたって南シナ海の孤島に閉じ込められ、放送で毎回だれを不適格者として脱落させるかを決める。最後に残った1人への賞金は100万ドル(1億円強)。これが大当たりして、いまは舞台をオーストラリアの未開の荒野に変え2回目のサバイバルが進行中だ。虫や爬虫類を食べるだけではない、いかに他人を蹴落とし生き延びようとできるか、生き残りのためには手段も選ばぬ倫理性のなさ。おいおいそこまでやるか、というのが見せ物なのだ。

 その高視聴率に他局が手をこまねいているだけのはずはない。FOXの始めた「テンプテーション・アイランド(誘惑の島)」なる番組は、4組の未婚カップルをカリブ海の孤島で引き離し、彼らを誘惑しようと手ぐすね引くモデルばりの美男美女の中に12日間にわたって解き放つ。さて彼らは自分の恋人以外の異性になびくことはないのか、という人間の欲望の実験室だ。
 
一方、ABCは「モール(内通者)」。10人の参加者が2組に分けられ3週間さまざまな試練で競うのだが、1人だけ番組からのスパイがいて自分の組を失敗させようと暗躍する。そのスパイは誰か、毎回参加者に目星をつけさせ、そのテストで最も外れた者が脱落してゆく仕組み。ほかにも女性1人を男4人とともに鎖でつないで何が起こるかを見る番組など、視聴者の覗き趣味を刺激するようなものが続々登場している。まさに人間動物園を見るの感だ。

 ところで友人のニューヨーク大学のニホン通の先生が、これらはすべて日本のテレビのマネじゃないかと言うのだ。電波少年とか猿岩石とか、日本ではタレントや有名人を極限状態に置いて茶の間で笑い物にしたり美談に仕立て上げたりするが、「番組内の人物を通して疑似体験を楽しむのが同じ」というわけ。

 そしてその先生、この傾向を「じつに反民主主義的」と断罪するのである。「みんな実世界の刺激を得ながらも傍観者でいられる。代理人の思想、貴族の趣向。それは自分の責任において自らが行為する民主主義に、真っ向から反するものだ」と。

 さて米国にも先んじてそうした「リアリティ」を遊んできた国ではあるが、原潜実習船事故のゴルフ首相の現実感覚はさすがに楽しめない。「サバイバー」だったら不適格者として今度こそこれで脱落だ。さあどうなるか見ものである。

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