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2008-02オバマ候補のLGBT政策

◎これがアメリカ次期大統領(?)のLGBT政策

今回は、米大統領選民主党予備選の決戦場オハイオ、テキサス両州のLGBTメディアに掲載された、バラク・オバマからの公開書簡を全訳して紹介しましょう。オバマが何を考えているのか、LGBTの有権者に向けて発した初めての公式の声明でもあります。(ちなみに、次回はヒラリーの政策を紹介します。合わせて参考にしてください)


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 私が大統領に立候補しているのは「万人は平等である」という私たちの建国の約束をかなえるアメリカを造るためです。それは私たちのゲイの兄弟姉妹にも及ぶ約束です。この国で何百万ものアメリカ人が二級市民のように生きています。それは間違っています。LGBTのアメリカ人すべてに真の変革をともにもたらすことができるよう、私はこの選挙であなたたちに支援をお願いしたいのです。

 平等というのは道徳的な責務です。それが私が職を通して常にLGBTのアメリカ人への差別をなくそうと戦ってきた理由です。(出身の)イリノイ州で、私は性的指向およびジェンダー・アイデンティティを基にした差別を禁止する真に包括的な法案を共同提案しました。その法的保護の対象は雇用や住宅供給に際して、さらに公共施設の利用時にも及びます。米国上院議員としても、同性カップルへの税の平等を実現し連邦職員のドメスティックパートナーたちにも各種手当を提供する法案を共同提案しました。そして大統領として、私は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)を禁止するマシュー・シェパード法と、性的指向及びジェンダー・アイデンティティを基にした職場差別を禁止する真に包括的な雇用非差別法(ENDA)の制定に政権として尽力してゆきたい。

 あなたたちの大統領として、私は大統領の公権力を大いに駆使して各州に家族や養子に関する法律において同性カップルを完全に平等に扱うよう強く説得していくつもりです。個人的にはその平等な扱いを保障するためにはシビルユニオン制度が最良の方法だと信じていますが、ただし同時に、各州がどうやったらゲイとレズビアンのカップルの平等を実現できるかその最善の道を決定するときに||ドメスティックパートナーシップかシビルユニオンかあるいは民事上の結婚か、連邦政府がいちいち指図すべきではないとも考えています。クリントン上院議員と違って、私は結婚防衛法(DOMA)【訳注:96年に成立。結婚は「男性一人と女性一人」と限定し、同性愛者の結婚を認めない連邦法】の完全撤廃を支持しています。それは上院議員になる前からの私の政治姿勢です。ある人たちは同法の部分的な撤回で十分と言いますが、私は同法そのものの全体削除が必要だと信じています。いかなる意味でも連邦法はゲイとレズビアンのカップルへの差別を行うべきではない。その差別こそまさにDOMAが行っていることなのです。私はまた軍での「ドント・アスク、ドント・テル」政策【訳注:相手がゲイであることを聞かない、自分がゲイであることを言わない、という限りにおいて同性愛者も従軍できるとする政策】の撤廃を要求しています。また、同性カップルにも移民システムにおいて既婚カップルと同じ権利と責任を与えることができるようにと、アメリカ人家族結合法の改正を働きかけています。

 次期大統領はまたHIVとエイズ禍についても真剣に取り組まねばなりません。予防に関しては、価値観か科学かという二者選択の問題ではないのです。どんな戦略においても自制を教えることは大切ですが、それだけで済むものではありません。年齢に応じた性教育が必要ですし、それには避妊に関する情報も含まれます。また、刑務所内の服役者間で感染が拡大するのを防ぐための法律も成立させねばならないし、現在連邦法で禁止されている注射針の交換プログラムも解禁しなくてなりません。このプログラムはドラッグユーザー間の感染率を劇的に減少させるのです。加えて公衆衛生上、各自治体がコンドームを配布できるようにしなくてはなりません。

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LGBT向けのオバマのポスターはストーンウォールの暴動について触れ、まだやるべきことがたくさんある、と訴えかける

 私たちにはまた、スティグマ(社会的不名誉の烙印)に進んで対峙する大統領が必要です。このスティグマはしばしばホモフォビアと結びついています。そうしていまもHIVとエイズを取り囲んでいる。私はキリスト教保守派の教会で演説するなどしてこのスティグマとじかに戦ってきました。大統領としてもそれは声を大にして訴え続けてゆきます。これが現在の主要な問題に関する私の見解です。しかし、これらの問題に正しい立場を取ったところで、戦いはまだ半ばです。残る半分はこれらの考え方に対して幅広い支持を勝ち取ること。幅広い支持を得るためには私たちも自分たちのぬるま湯から抜け出なくてはなりません。もし私たちが結婚防衛法を廃止したいなら、ドント・アスク・ドント・テル政策をやめたいなら、そしてヘイトクライムを取り締まり職場での差別を違法とする真に包括的な法律を施行したいのならば、私たちはLGBTの平等を求めるそのメッセージを、それを理解する人たちだけではなく理解しない人たちにも届けなければならない。そしてそれが、私がこれまで職を通じて行ってきたことです。04年の民主党大会で基調演説を行ったとき、私はアメリカすべてにこのメッセージを届けました。排除するのではなく包含すること。大統領選への立候補を表明したその演説で、私はホモフォビアと戦う必要を話しました。これまでの選挙戦でもいくつものグループに対してLGBTコミュニティの平等について話してきました。地方のLGBT活動家たちのグループから田舎の農民たちのグループ、アトランタのエベニーザー・バプティスト教会の信者たちのグループにも。その教会はかつてマーティン・ルーサー・キング博士が説教を行っていた教会です。

 同様に大切なこととして、私はすべてのアメリカ人の声に耳を傾けてきました。LGBTのアメリカ人のための平等な権利実現のために尽力することに妥協は絶対にありませんが、同時にそう納得するためにはまだ説明や説得が必要な人々の声から耳を背けることもまたしないつもりです。それこそが、ともに未来へと進むためにしなくてはならないことなのですから。その作業は困難なものです。でも、やりがいのあることです。そしてそれは、必要なことなのです。

 アメリカはリーダーシップを求めています。私たちが可能だと知っているそのことを実現するために、私たちに力を与えてくれるリーダシップを。私は、この国の何百万というLGBTの人々のための完全な平等というゴールを、私たちが達成できると信じています。そのために、私たちには人間の心の最良の部分に訴えかけられるリーダーシップが必要なのです。私の味方になってください。そうすれば私がそのリーダーシップを提供することができる。いっしょになって、私たちはすべてのアメリカ人のための真の平等を実現していくのです。それにはゲイもストレートも同じなのです。
(了)

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