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2008-03ヒラリー、インタビューに答える

◎アメリカの選挙でゲイだと自称する有権者は5%。このゲイ票をめぐって大統領候補たちが秋波を送る。
先号に続き、今回はヒラリー・クリントンのLGBT政策を紹介

 米民主党の大統領候補指名争いはこの号が発売されてすぐの4月22日のペンシルバニア州予備選でまた動きがあるはずです。オバマ、クリントンの数カ月にわたる激戦でもう日本の新聞も書くことがなくなり気味ですが、同州のLGBT紙であるフィラデルフィア・ゲイ・ニューズ(PGN)紙=写真下=がクリントン・インタビューを掲載しました。対してオバマには「インタビューを申し込んだが受け入れられなかった」として紙面をそっくり空白で埋め、「オバマ上院議員は1522日にわたって米国ゲイ新聞のインタビューに応じていない」という但し書きとともに「Clinton talks; Obama balks」(クリントンは話したが、オバマは尻込みしている」という大見出しを掲げました。やるねえ。

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 今回はクリントンのそのインタビューを紹介しましょう。かなり詳細まで突っ込んで質問しているこのインタビューは、米国の大物政治家のLGBT観を知るうえでも上質の資料となるはずです。

      *

Qご夫妻ともどもゲイの友人をお持ちと思いますが、その人たちから自分たちはどうして結婚できないのかと訊かれたら何と答えますか?

ヒラリー 結婚は州政府の管轄なのね。それはラッキーなことでもある。というのも連邦政府が憲法修正で結婚を男女間のものと定義しても、それに影響されずに済むから。なので、州ごとの州憲法や議会議決に基づいていま結婚を含めていろいろなオプションが真剣に考えられているところです。この件は今後2年ほどでもっと前進すると思っています。

Q同性カップルの移民受け入れ政策はどうしますか?

ヒラリー それは最も難しい問題。移民政策は逆に連邦政府の管轄なのね。だからシビル・ユニオンやドメスティック・パートナーシップのある州、あるいは結婚できる州でさえも同性カップルの相手が外国人の場合は連邦政府がダメと言えば米国移住は認められない。私は連邦レベルの法でもすべての格差や不平等をなくしていくつもりです。すべてのアメリカ人が同様の権利を持つようにする。移民法もその1つです。

Q イランやエジプト、イラクなどの多くの中東・アフリカ諸国がゲイたちを処刑しています。そういう政府に対してどう対応していくか、またそれらの国のゲイに米国への政治亡命を認めますか?

ヒラリー これに関しては強く抗議していきます。それがわが国の外交政策の1部になります。とんでもない人権侵害の国がいくつもあり、そうした問題には援助を減らしたり打ち切ったり、考えられるすべての手段を使ってわが国の拒絶を表明し、態度を改めさせていくつもりです。

Q 1948年にトルーマンが人種に基づくいかなる差別も禁止する大統領令を出しました。米軍の「ドント・アスク、ドント・テル」政策(自分からゲイだと公言しなければ従軍できるとする政策)にも大統領令で執行仮停止をするつもりは?

ヒラリー 法的に可能ならそうします。でも軍の問題に関して大統領令がどこまで及ぶのかまだ明確ではないの。ただ、この9年以上、私がこの「ドント・アスク、ドント・テル」をやめようとしてきた努力はみなさん知っているでしょう。

Q あなたは連邦政府の職員がドメスティック・パートナーシップ手当を受ける法律を共同提案しました。これを政府職員だけでなくすべてのLGBTアメリカ人に拡大するような連邦法は支持しますか?

ヒラリー もちろん、そういう法律ができれば署名します。

Qニュージャージー州やマサチューセッツ州などでドメスティック・パートナーシップやシビル・ユニオンが導入されていますが最大の障害の1つが所得税申告における連邦税法の規定で連名処理ができないことでした。これにはどう対処しますか?

ヒラリー これは連邦税法を変えなければなりません。包括的な見直しをします。税制上の差別もすべてなくします。先ほども言ったように同性カップルの法律上の位置づけは州政府の管轄です。いまその州政府で同性カップルの権利拡大のためのさまざまな試みがなされているので、連邦レベルもそれを追いかけている状態です。私はその成功のために力を尽くします。

Q 教育省は各地域の教育委員会や教師たちにLGBT問題の啓発授業を行うという方針を占めすべきでしょうか?

ヒラリー そういう方針を示される分野ではありますが、実のところ連邦政府に法的な権威はなにもないのです。夫の政権のときには指針を示しましたが、私も何か追加的に示しうる指針があるか考えてみます。

Q いまペンシルバニア州議会には同性結婚禁止法案が提出されています。2010年には州民投票にかけられる予定です。あなたの助言は?

ヒラリー ただ、それを成立させるな、ということだけです。廃案になることを願っています。ペンシルバニアがそんな狭量な住民投票を行ったらほんとガッカリしてしまう。そんなことが起きないように祈っています。

Q LGBTの若者や高齢者たちへの公的サービスをどう改善しますか?

ヒラリー それについては具体的にどんなサービスが追加的に必要なのか、LGBTコミュニティに助言を求めて教えてもらうつもりです。たとえばニューヨークでは青少年のLGBTが直面する特異な問題に対処するため、LGBTコミュニティの活動をいろいろとサポートしてきました。自殺率の高さや仲間はずれやいじめの経験などです。LGBTの若い子たちにはほんとうに多くの、特異で困難な問題が待ち受けています。私は若い人たちを守りたい。そして彼らが必要とする公的サービスへのアクセスを提供したいと思っています。学校でLGBT問題に関するガイダンスを行うのは重要なことだと考えています。LGBTの子供たちがいかにひどい扱いを受けているか、学校はもっと真摯にきちんと認識しなければなりません。その子たちを守るためにできることはすべてやる必要がある。そうしなければ生産的で安全な子供時代と思春期を送る機会が失われてしまうのです。私は必ずこの問題に尽力します。

Q あなたはファーストレディーとしてもさまざまなゲイ団体の会合に出席したりゲイプライドに出たりと、LGBT問題へのコミットを行ってきましたね。大統領に選ばれても同じですか?

ヒラリー セキュリティーの許す限りそうしたいです。大統領ってそれが難しいの。ビルが大統領のとき、シークレットサービスはパレードをいっしょに歩くことを許さなかったのね。私はファーストレディーだったからもう少し警護もゆるかったけれど。上院議員はさらに自由。さて大統領になったらどのくらい自由に出られるかしらね。

Q この指名争いに勝利したら再び本紙と今度は民主党候補としてインタビューに応じてくれますか?

ヒラリー もちろん。大統領としても応じるつもりよ。
(了)

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